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タイラー・コーエン 「セレブの意外な効能 ~セレブは若者の健全な発達を支えている?~」

●Tyler Cowen, “Why celebrities are good for your kids”(Marginal Revolution, March 1, 2004)


New Scientist誌がセレブ1 の意外な効能を明らかにした研究結果を報告している。

イギリスの研究者が行った調査によると、セレブ崇拝は子供が大人へと成長を遂げる過程で重要な役割を担っている可能性があるということだ。

レスター大学とコヴェントリー大学でそれぞれ心理学を研究しているジョン・モルトビー(John Maltby)とデイヴィッド・ジャイルズ(David Giles)が共同で実施した研究で明らかになったところでは、セレブに夢中な10代の若者は健全なかたちで感情面の発達を遂げ、また周囲から人気を集める傾向にあるという。セレブへの関心は若者の健全な精神の発達や他者とのつながりを促す上で手助けとなっているというのだ。

しかしながら、彼らの研究ではセレブへの関心があまりにも行き過ぎてしまうとそれはそれで問題であることが示唆されている。セレブに熱中し過ぎな若者は孤独になりがちで、友人や家族との関係が希薄になりがちだというのだ。

彼らの研究では11歳から16歳までのイギリスの学童191人が対象となっているが、周囲から最も高い人気を集めているのはセレブの日々の生活ぶりを熱心に追っている子供だという結果が見出されている。

研究の対象となった子供のうちおよそ30%は友人と一緒の時間の大半を有名なセレブについてあれこれ噂話をすることで過ごしているという。そのような子供は友人との強固で密なネットワークを築いており、親から感情面で適度な距離をとる(感情面で親から自律する)ことに成功しているという。

モルトビーは本誌に対して次のように語っている。「子供は成長するにつれて精神面でそれまで親に依存していた状況から次第に友人へとその依存をシフトさせていくことになります。子供がまだ小さい時は親が彼らにとってのヒーローなわけですが、その子供がセレブに夢中になるにつれてセレブが親に代わってその(ヒーローの)地位を引き継ぐことになるわけです。それは子供が成長を遂げる上で健全な過程だと思われます。」

さらに彼は次のように語る。「若者のセレブ崇拝が果たす主要な機能は社会的なネットワークの拡大にあるのかもしれません。セレブは(会話の共通の話題となることで)噂話などで盛り上がるトモダチ(pseudo-friends)の輪の拡大に貢献していると言えるのかもしれません。」「セレブの生活ぶりについて語ることは友人とのつながりを形成する上で貴重な手段となっており、子供が親から感情面で自律する手助けとなっているのかもしれません。」

そうそう。ついでながら、名声(fame)をテーマとした私の著書『What Price Fame?』のことも忘れないでいてほしい。この本ではセレブという存在の誕生を現代のポップカルチャーに備わる最も有益な側面の一つに掲げている。セレブは我々が社会性を身につける上でのフォーカル・ポイントとなっている2 わけだが、我々はセレブがもたらすそのような恩恵を金銭ではなく名声という対価を支払う3  ことで手に入れているのだ。

  1. 訳注;ここでは「セレブ」はお金持ちではなく、芸能人やスポーツ選手をはじめとしたメディアで露出の多い有名人のことを指している。 []
  2. 訳注;「フォーカル・ポイント」というのはトマス・シェリングが提示した概念。詳しくは例えばwikipediaを参照してもらいたいが、「フォーカル・ポイントとしてのセレブ」=セレブが他者との(会話をはじめとした)コミュニケーションにおける共通の話題であったりロールモデル(ファッションをはじめとしたライフスタイルのお手本、行動規範)として機能している、といった意味が込められているものと思われる。 []
  3. 訳注;金銭ではなく名声という対価を支払う=称賛の声を送ったり、高い社会的地位を授けることでセレブから一層の努力を引き出している(名声がセレブの行動の動機づけとなっている)ということ。名声がセレブの動機づけとなっているおかげで、セレブから努力を引き出す上で金銭的な手段(お金)に頼らねばならない必要性がその分減っているということ。 []

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