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タイラー・コーエン 「休暇の行動経済学」

●Tyler Cowen, “What is vacation good for?”(Marginal Revolution, June 29, 2010)


ドレイク・ベネット(Drake Bennett)が興味深い記事を書いている(“The best vacation ever”)。

彼らの研究結果によると1、3つのケースのいずれにおいても回答者の満足度が一番低かったのは「休暇の最中」であることが判明した。休暇に入る前はこの先に待つ休みが楽しみでならずワクワク感に満たされる一方で、休暇が終わってから数日の間は「いい休みだった」と休暇の記憶が好意的に思い出されるというわけだ。一方で、休暇を過ごしている最中においては、期待が外れて失望したり、「どこに行こうか? 何をしようか?」と頭を悩ましたり、この休みを楽しまなければいけないとプレッシャーを感じたりして、泥沼にはまる羽目になるようだ。

つい最近オランダで行われたばかりの研究2ではもっと目を見張るような結果が見出されている。その研究ではシンプルな3つの質問を通じて休暇中の旅行が人々の幸福度にどのような影響を及ぼすかが測られているが、旅行に出かける前には気分がかなり高揚する一方で、旅行から戻ってきた後はこれと言って気分が高揚するということもないとの結果が得られている。つまり、予想(anticipation)3の方が記憶(memory)4よりも人々の幸福に対して強い影響を持つ可能性があるようなのだ。

次の指摘は個人的にお気に入りだ。

人は環境にいとも容易く適応する能力を備えている5わけだが、そのような傾向に対抗する上で最も効果的な方法は最も直観に反するものと言えるかもしれない。その方法というのは休みを細かく切り刻む、言い換えると、休暇先まで日常を持ち込んで休みを中断するというものだ。

言い換えると、休暇に仕事を持ち込めということだ。私もかねてより実践しており、個人的に「仕事付きの休暇をとる」(”taking a work vacation”)と呼んでいる。

この記事の存在を教えてくれたDavid Archerに感謝する。

  1. 訳注;この前段の文章を以下に訳しておく。「しかしながら、人々が実際に休暇に対してどのような感情を抱いているかを調査した研究によると、休暇中の体験は好意的に(満足いくものとして)-それも休暇の真っ只中にある時よりも好意的に-思い出される傾向にあるようだ。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院で心理学を研究するレイ・トンプソン(Leigh Thompson)とワシントン大学フォスター経営大学院で同じく心理学を研究するテレンス・ミッチェル(Terence Mitchell)の2人が1997年に実施した研究では、3つの異なる休暇-ヨーロッパへの旅行、感謝祭休み、カリフォルニアで行われた自転車レースへの参加-を過ごした人々に休暇に入る前と休暇の最中、そして休暇が終わった後にそれぞれどのように感じたかが尋ねられている。」 []
  2. 訳注;おそらく次の論文。 Jeroen Nawijn, Miquelle A. Marchand, Ruut Veenhoven and Ad J. Vingerhoets, “Vacationers Happier, but Most not Happier After a Holiday”(Applied Research in Quality of Life, March 2010, Volume 5, Issue 1, pp.35-47) []
  3. 訳注;これから起こる出来事(例.旅行)に思いを馳せること []
  4. 訳注;体験した出来事を想起すること []
  5. 訳注;ここの文脈では、いかにつまらなくて不満だらけの休暇を過ごしていてもそのうちそのような状況に慣れてしまい、それも当然のこととして受け入れてしまう傾向を指している []

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