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ノア・スミス「ロボットが仕事とりよってん」

[Noah Smith, “Robuts takin’ jerbs,” Noahpinion, March 31, 2017]

K2SO

数学でモデルを書くといいことがある.まだ検証していないままでも,アイディアを具体的に詰められる.たとえば,最近ライアン・アヴェントとポール・クルーグマンがかわしたやりとりを考えてみよう.アヴェントが説明しようとしているのは,「生産性の向上が減速している最中にすらロボットが仕事を奪いうる」ということだ.この論は,これまでにいろんな人たちがめいめいのバージョンを語っている:「もしロボットがみんなの仕事を奪っているのだとしたら,いったいどうして生産性の向上がこうも鈍くなってるの?」 アヴェントの説はこんな具合:
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アレックス・タバロック「人件費が安いとこうなる:インド編」

[Alex Tabarrok “When Labor is Cheap,” Marginal Revolution, April 22, 2017]

インドの人件費は安い.そのため,なにかとアメリカと事情がちがう場合がある.

インドでタクシーをつかまえてレストランに行ったとき,最初の2回くらいはびっくりした.運転手が,「ここで待ってましょうか」と尋ねてきたんだ.アメリカでレストランの外にタクシーを待たせたら,しゃれにならない費用になるだろう.だが,インドでは運転手が1時間 1.50ドルでよろこんで待っていてくれる.いまだにこれには当惑する.

物理的な資本である自動車はインドでもアメリカでもだいたい似たようなコストだ.運賃が安上がりだということは,タクシー代にしめる運転手のコストがどれくらいかの例証でもあるし,運転手のいらない自動運転車ができたら移動コストがどれくらい下がるかを示してもいる.

あと,なんでも宅配してくれる.

モールでもホテルでもアパートでもお金持ち向けの店舗でも,かならず警備がいる.といっても,ぜんぶハッタリだ〔いかにも警備を厳重にやっているような印象を与えているにすぎない〕 ――インドはアメリカほど危険じゃない――けれど,なにしろ1時間1ドル~2ドルでできるのだったら,「じゃあやろうか」となるだろう.

オフィスは1日24時間,週7日ずっとあいていることがある.べつに,誰かがオフィスにいるわけではなくて,24時間ずっと警備されているなら,いちいち戸締まりする理由もないからオフィスが物理的に開けっ放しになっているだけだ.

どこの店でも,店員は有り余っている.これが不可解で,というのも店員が大勢いる結果としてサービスが悪化しているのだ.たとえば,ごく小さなお店ですら,店員が支払い票を書くと,それをべつの店員に渡して会計をやったりする.おそらく,店員に窃盗をさせないために店のオーナーがとった対策なのだろう.つまり,こうしておけば店からちょろまかすには店員2人が結託しなくてはならなくなる.

オフィスでは,清掃員が常勤で雇われている.おかげで,週に1回か2回どころではなく,1時間に1回か2回姿を現して清掃していく.過剰に(?)民間の空間が清掃されていることで,民間の清潔ぶりと公共の汚らしさの対比が際立っている.

アレックス・タバロック「疲労困憊した医師は間違いをおかしやすく患者の害になる」

[Alex Tabarrok, “Fatigued Physicians Make Mistakes and Harm Patients,” Marginal Revolution, March 12, 2017]

疲れ果てた状態で車を運転すると事故をおこす.この当たり前の事実への対応策として,バスやタクシーの運転手は8時間連続して休憩をとったあとで最大10時間までしか運転できないように制限されている.ところが,内科医の場合,現行の基準はこれより大幅にゆるい.1年目の研修医の交代勤務時間はなんと16時間だ.これだけでもすでにどうかしてる.ぼくは午後 7:20から10時の夜学クラスをよく教えている.いつも,むずかしい題材は早めの時間に教えるように心がけている.なにしろ,9時ごろになると,もう調子がすっかり落ちてしまっているからだ.言うまでもなく,教師よりも研修医たちにかかるストレスの方がはるかに大きいし,疲労も大きい.さらに,1年目の研修医たちが働けるのは16時間までだけれど,2年目になると連続24時間ずっと働けるどころか,最大30時間まで働けるようになっている.睡眠をとらずにまともに稼働できる秘訣を1年の研修で内科医たちに教えられるんだとしたら,すごくない?
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アレックス・タバロック「インドはアメリカより起業の盛んな社会だ(そして,それが問題だ)」

[Alex Tabarrok, “India is a much more Entrepreneurial Society than the United States (and that’s a problem),” Margianl Revolution, March 9, 2017]

インドはアメリカよりもずっと起業が盛んだ.そう聞かされると意外かもしれない.なにしろ,インドは貧しい国だし,起業が盛んだというと豊かさがたいてい連想されるものだからだ.だけど,このつながりは明白な事実ではない.インドにいる誰もがお金儲けに邁進しているし,機会にも開かれている.誰か雇って WiFi をつなぎ直したり自転車を修理したり映画をつくったりしたい? だったらものの数時間でやってくれる人は見つかる.どんなことを聞いても,「できるよ,俺らにはできる!」というのがおきまりの返事だ.もちろん,なかには法律違反になってしまう場合もあるけれど,それでもよければ,やってやれないことはない.「なせばなる」精神はとりわけムンバイではいたるところに浸透しているとはいえ,インドの他の地域でも事情は変わらない.
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アレックス・タバロック「移民医師」

[Alex Tabarrok, “Immigrant Doctors,” Marginal Revolution, March 7, 2017]

アメリカの内科医の1パーセントは,ドナルド・トランプの新たな大統領令で対象とされた6ヶ国の出身者だ.驚くほど高い数字だとぼくは思った.「移民医師プロジェクト」(Immigrant Doctors Project) によれば,この1パーセントにあたる7000名の内科医たちは,毎年1400万件の予約診察を提供し,しかも,その多くはより貧しく白人が多くて田舎にある地域でなされているという.

これで今回の政策が「はい論破」となるとは思わないけれど,その驚くほどのコストと,高技能で教育のある人たちの移民からアメリカがどれほど便益を得ているかを例証するものにはなっている.

タイラー・コーエン「ロボットに課税すべきか?」

[Tyler Cowen, “Should we tax robots?” Marginal Revolution, March 6, 2017]

先日ビル・ゲイツがロボットに課税することを提案した.私見では「課税」という言葉をどれくらい文字通りにとるべきなのか議論の余地があるけれど,それはさておき,この提案は一考する価値がある.この案をノア・スミスがとりあげたコラムはこちらサマーズによる『フィナンシャルタイムズ』論説はこちら『ワシントンポスト』論説はこちらイザベラ・カミンスカもここで論じている
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ノア・スミス「人的資本の資本たるゆえんは」

[Noah Smith, “Why human capital is capital,” Noahpinion, February 25, 2017]

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経済学者は,「資本」という単語をゆるく使いがちだ.「資源を費やして構築でき,長期にわたって持続し,価値を生み出すのに使えるもの」ならなんでも資本とされる.なんとも広義だ.たとえば,社会そのものだって資本に該当しうる.また,典型的に,資本と言えば「人的資本」も含まれる.人的資本とは,人がもつ技能・才能・知識を指す.
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アレックス・タバロック「価格差別の倫理(小ネタ)」

[Alex Tabarrok, “The Ethics of Price Discrimination,” Marginal Revolution, February 20, 2017]

デリーにあるインド国立博物館から,価格差別の一例を.議論の呼び水に疑問を1つ書いておこう――「これって,公正だろうか.倫理的だろうか」「アメリカでは,これは合法だろうか?」

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インド国民:20ルピー
外国人:650ルピー(補足的な音声ガイドつき)
7年生までの学生:無料(I-カード提示)

タイラー・コーエン「実際のところスウェーデンの秩序はどれくらい乱れているの?」

[Tyler Cowen “How disorderly is Sweden really? ” Marginal Revolution, February 21, 2017]

Here is the latest, which is in the media but not being plastered all over my Twitter feed:
最新ニュースはこちら.メディアには出ているけれど,いまのところぼくのツイッターフィードをびっしり埋め尽くすほどの話題にはなっていない:
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タイラー・コーエン「移民同化の真のジレンマ」

[Tyler Cowen, “The real assimilation dilemma,” Marginal Revolution, February 23, 2017.]

移民をめぐる議論は,ラテン系移民の第2世代・第3世代の同化率に関心を集中させていることが多い.だが,いったんこれを脇に置いて,ラテン系以外でアメリカにやってくる人たちを考えてみよう.彼らがいかに急速に同化するかを見ると,ぼくは目を見張る.ここで言ってるのは,カナダ系だけの話じゃない(「このブログの著者2人のどちらが国境の北側出身でしょう」と出し抜けに聞かれて当てられます?) ラテン系以外の移民には,ロシア系もいればイラン系,中国系,インド系などなどいくとおりもある.ムスリム系移民の大半もそうだ.こうした人たちは,アメリカ生まれアメリカ育ちの人と文化的にそっくり同じになりはしない.でも,経済的・社会的な指標で見ると,これ以上望めないほどの実績を示している.

それどころか,同化問題をもたらしているのは,ずっと昔からのアメリカ人たちの方だ.しかも,おうおうにして伝統的なアメリカ人だったりする.彼らの暮らす国は,急激に変わってしまった.そのおかげで,彼らは新しい現実の事情にあまりうまく同化していない.さらに,べつに自ら選んで移民になって「きっと困難が待ち受けているだろう」と思っている人間でもないので,「そういうもんだからしかたない」と受け入れる態度を内面化する方にいつでもかたむくわけでもない.彼らの多くは不平をこぼし,また,職業生活で落伍したり冴えないニッチに落ち着いたりする.

この点で見て,みずから進んでやってくる移民たちにもっとうまく・早く同化するよう促しても,かえって現実の同化問題を悪化させてしまいかねない.自国〔アメリカ〕の文化をいっそう急速に変えることになるからだ.

移民の真の影響は,賃金や選挙結果に表れないこともよくある.むしろ,昔ながらのアメリカ生まれアメリカ育ちの人々の一部に同化の負担がかかることになる.そして,移民たちがいっそう生産的に首尾よくやればやるほど,こうした問題はいっそう深刻になるかもしれない.

この点の議論につきあってくれたケイトー研究所のリバタリアングループに感謝.議論でのやりとりから,Will のものも含めて発言を使わせてもらった.