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サイモン・レン=ルイス「金融政策が学ぶべき教訓」

[Simon Wren-Lewis, “The lesson monetary policy needs to learn,” Mainly Macro, October 17, 2017]

先日,ピーターソン研究所で開かれたカンファレンス「マクロ経済政策再考」について,当然ポストを書かなくてはと思っていたけれど,最近になって,その仕事は Martin Sandbu にまかせる方が効率がいいのに気づいた.たいていの場合には意見が一致しているし,私より Sandbu の方がうまくやってくれてる.おかげで,意見が合わないめずらしい論点や,さらに議論を展開させたい論点にしぼって文章を書ける.
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サイモン・レン=ルイス「理想的市場の概念をネオリベラルはどうやって兵器化したか」

[Simon Wren-Lewis, “How Neoliberals weaponise the concept of an ideal market,” Mainly Macro, October 14, 2017]

「ネオリベラリズムなんてとにかく打倒しなきゃダメだ」と単純に信じている左翼は,コリン・クラウチによる新著に当惑しそうだ.著者はまず,グレンフェル・タワー火災の話から説き起こす.多くの人たちと同じく,クラウチも,ネオリベラリズムがいくつも繰り返してきた失敗の典型があの悲劇だと見ている.だけど,その一方で彼によれば本書は「ネオリベラリズムを一方的に悪玉に仕立てておしまいにしようとするものではなく,もっと肯定否定が入り交じった解明を試みる一冊だ.そういうやり方でなくては,ネオリベラリズムがもつ改革の能力を評価できない.」
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アレックス・タバロック「オンライン・デートで人種間の結婚は増えたか?」

[Alex Tabarrok, “Does Online Dating Increase Racial Intermarriages?” Marginal Revolution, October 11, 2017]

今日,新たに結婚する人たちのだいたい3分の1は,オンラインで出会ったカップルだ.オンライン・デートには,おもしろい特徴がある――まるっきり見ず知らずの人とマッチングされやすいんだ.これに比べて,たとえば友人からの紹介で引き合わされたり教会で知り合ったり地元のバーで出会ったりといった他のマッチング手法だと,すでになんらかのネットワーク内でつながりのある相手とマッチングされやすい.このため,オンライン・デートが盛んになってきたことで,いろんなネットワークで人々がお互いに結びつけられる方法が大幅に変わっている見込みが大きい.Ortega と Hergovich は,単純なモデルを考案している:

本稿では,ゲール=シャプリー結婚問題を考察する.この状況設定では,エージェントたちが属す人種や地域社会がさまざまに異なっている場合がある.あらゆる人種のあらゆるエージェントたちが無作為に同じユニット・スクエアに配される.エージェントたちは,じぶんにいちばん近い人物と結婚したがるのだが,結婚できる相手はじぶんが知っている相手にかぎられる.つまり,つながりのある相手としか結婚できない.実生活と同じく,エージェントたちは同じ人種のエージェントたちと非常につながりが強い一方で,他人種とはつながりがとぼしい.

理論と無作為シミュレーションを駆使して著者2人が見出したのは,オンライン・デートによって人種間の結婚が急速に増加するということだ.こういう結果になるのは,たんに,オンラインだと人種のちがう相手とマッチングされる場合があるからだけではない.ひとたび〔人種がちがう男女の〕カップルが一組結婚すると,新郎新婦それぞれの友人たちが伝統的な手法でマッチングされて結婚する確率が高まるからでもある.弱いつながりの強さとは,それまでかけはなれていたネットワークどうしをもっとつなげるのに必要な弱いつながりはそんなむちゃくちゃ多くないという点だ.

白人・黒人・ヒスパニック系・アジア系・アメリカンインディアンや混血の人どうしの結婚を含むものとして定義される人種間結婚は,遅くとも1960年代には増え始めていたけれど,著者たちは下記のグラフを使ってこう主張している――オンライン・デートの登場と普及にともなって伸び率が増加した.2009年の Tinder 登場以後に人種間結婚が大幅に増えてる点に注目!
(これが複合的な影響によるものではない説得力ある論証を著者たちは展開している.)

オンライン・デートによって結婚相手候補の人数が増えるため,オンライン・デートのないモデルでの相手候補たちよりも選好空間で平均的に「もっと近しい」人どうしでの結婚につながる.このため,彼らのモデルでは,オンライン・デートは離婚率を下げるはずだと予想される.この仮説を裏付ける証拠もいくらかある:

Cacioppo et al. (2013) によれば,オンラインで成立した結婚だと夫婦が離婚しにくく,結婚生活への満足度も高くなりやすい.彼らが用いたのは,2005年から2012年までに結婚したアメリカ人 19,131名の標本だ.著者らによると:「オンラインで結婚相手に出会った場合,平均でみると,伝統的な(オフラインの)結婚事例に比べて,結婚生活への満足度がわずかながら高くなる一方で離婚にいたる率は低くなっている.

このモデルは,他のいろんな潜在的ネットワークにも当てはまる.

感謝: MIT Technology Review.

スコット・サムナー「2.9%!(イェレンに朗報)」

[Scott Sumner, “2.9%! (Good news for Yellen),” Money Illusion, October 6, 2017]

最新の賃金レポートはジャネット・イェレンにとってすごい朗報だ:
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タイラー・コーエン「多くの児童は算数を使って市場での問題を解いているのに学校の問題は解けないでいる」

[Tyler Cowen, “Many Indian children can use math to solve market problems, but not school problems,” Marginal Revolution, September 8, 2017]

「インドの働く児童の活用されざる数学スキル:証拠,考え得る説明,含意」(Abhijit V. Banerjee, Swati Bhattacharjee, Raghabendra Chattopadhyay, & Alejandro J. Ganimian):
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タイラー・コーエン「アメリカ政府は NFL にお金を払って国歌斉唱のときに起立してもらってるんだって」

[Tyler Cowen, “The American government pays the NFL to tell its players to stand during the national anthem,” Marginal Revolution, September 27, 2017]

アレックス経由のネタ(そう,あのアレックス).記事はこちら.抜粋しよう:
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スコット・サムナー「大不況はアメリカの出生率を低下させたか」

[Scott Sumner, “Did the Great Recession reduce the US birth rate?” Money Illusion, September 22, 2017]

2~3年前,「大不況でアメリカ人の出生率が低下した」というのは通説だった.ありえる話ではあるけど,その主張を支える証拠の乏しさには目を見張るものがあった.たしかに2007年から2010年のあいだに出生率は下がったけれど,誰もが知っているとおり,相関は因果関係の証明にならない.しかも,逆方向を指し示す証拠はたくさんある.出生率の数字として広く受け入れられているものはこんな具合だ:
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タイラー・コーエン「インドの児童労働禁止は逆効果だった?」

[Tyler Cowen, “Was banning Indian child labor counterproductive?” Marginal Revolution, September 25, 2017]

著者は Prashant Bharadwaj, Leah K. Lakdawala, Nicholas Li で,アブストラクトは次のとおり:
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タイラー・コーエン「社会保険の一形式として再分配を支持するロールズ的な論証はあるか?」

[Tyler Cowen, “Is there a Rawlsian argument for redistribution as a form of social insurance?” Marginal Revolution, September 23, 2017]

そういう論証を提示した一例がこれ (pdf).ただ,次の点に留意しておこう:
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ノア・スミス「エアカーも宇宙植民もないけどサイバーパンクは実現した21世紀」

[Noah Smith, “What we didn’t get,” Noahpinion, September 24, 2017]

先日,1980年代と1990年代のサイバーパンク SF がいまの世界について多くのことをいかに正確に予測していたかという話題で Twitter に連投したらけっこう好評だった.現代社会はなにもかもがネットに接続されてつながっているけど,同時に,なにもかもが不平等だ――ギブソンが好んでよく言ってたように,「未来はここにある,ただ均等に分布してないだけだ.」 ハッカー,サイバー戦争,オンライン心理戦は,みんなの政治経済生活でおなじみのものになっている.億万長者たちは宇宙ロケットをつくったり政府に協力して国民監視に手を貸したりしてる.白人労働階級は廃棄コンテナを住居にして有毒な水を飲んで暮らしてる.在野の趣味人たちが身体改造や遺伝子工学に手を染めてる一方で,実験室では人工四肢や脳-コンピュータ・インターフェイスを研究してる.ジェットパックは実現してる.ただしひとつきりだし,持ち主はお金持ちだ.人工知能が株取引をやり碁で人間に勝ったり,耳の聞こえない人が音を聞こえるようになったり,リバタリアンと犯罪者どもが追跡不可能な民間の暗号通貨で世界中で何十億ドルってお金を回してる.『スノウ・クラッシュ』みたいにイカレたミーム・ウイルスがネジのはずれた男を合衆国大統領の座にまで上り詰めさせたり,テキサスでは『ニューロマンサー』のストリート・サムライみたいにカタナをかついで町中を歩き回れる.バーチャルアイドルもいるし,殺人サイボーグスーパーアスリートだっている.
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