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レヴィ・ボクセル「インターネット,ソーシャルメディア,政治的二極化」(2017年10月)

[Levi Boxell, “The internet, social media, and political polarisation,” VoxEU, Oct.1, 2017.]

これまで,政治的二極化が近年になって高まっているのはインターネットのせいだと多大な非難が向けられてきた.だが,政治的二極化が全体的に高まる傾向は少なくとも70年代までさかのぼり,そこにインターネットはなんら有意な役割を果たしていないことをこのコラムでは論じよう.使用するのはアメリカのデータだ.さまざまな研究結果を見ていくと,わかりやすい物語による説明に安んじずにもっと奥深く見通すことの重要さが際立ってくる.政治的な感情を押し動かす要因をもっと深く理解することが重要なのだ.
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サイモン・レン=ルイス 「名目賃金は実質賃金とちがう――それがイギリスで重要な理由は」(2018年5月30日)

[Simon Wren-Lewis, “Nominal wages are not real wages, and why it matters in the UK,” Mainly Macro, May 30, 2018]

この記事は,先日のクリス・ディロウのツイートを敷衍したものだ.この件についてもっと書いておく値打ちはあると思う.ここには,左翼・右翼を問わず広く誤解された問題が映し出されているからだ.次のグラフを見てもらおう.1948年からの総所得のうち,従業員報酬が占める割合と企業利益が占める割合を示してある.あくまでイギリスについてのグラフであることに留意してほしい.アメリカでは事情が異なる.


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サイモン・レン=ルイス「ユーロの悲劇」(2018年6月2日)

[Simon Wren-Lewis, “A Euro Tragedy,” Mainly Macro, June 2, 2018]

「イタリアがユーロ圏の活断層だろう」――最近の危機について述べた文章から引いた一節ではない.出典は,アショカ・モウディの『ユーロ悲劇:9幕の戯曲』だ.アメリカではちょうど刊行されたところで,イギリスでも7月に刊行される.
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サイモン・レンルイス「メディアと政治家はこうしてダメ経済学を広める」(2018年5月20日)

[Simon Wren-Lewis, “How the media and politicians dumb down economics,” Mainly Macro, May 20, 2018]

経済学者がコミュニケーション技能を磨くのには大賛成だし、いま進行中のすぐれた改善計画もいくつかある。とはいえ、政治家とメディアがダメ経済学を世間に触れ回っていては、そんな努力も無に等しい。
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タイラー・コーエン「グレーバーの新著『クソ仕事:その理論』」

[Tyler Cowen, “*Bull Shit Jobs: A Theory*“, Marginal Revolution, May 17, 2018]

デイヴィッド・グレーバーの愉快な新著のタイトルは『クソ仕事』だ.きっと,すでに小耳に挟んだ人もいるだろう.短い要約はこちら
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サイモン・レン=ルイス「放送メディアはいかにしてメディアマクロをつくりだしたか」(2018年5月14日)

[Simon Wren-Lewis, “How the broadcast media created mediamacro,” Mainly Macro, May 14, 2018]

アメリカメディアについて〔Voxニュースの〕カーロス・メイザがやっている論評シリーズを見ていないなら,ぜひ見てみてほしい.この最新動画では,ニクソンとトランプそれぞれの調査の比較がうまくいかない理由を論じている.かんたんに言ってしまえば,理由はフォックスニュースにある.ニクソンの場合,共和党支持の有権者たちの大半は主流テレビネットワークのどれかからそのまま情報を得ていた.その結果,〔ウォーターゲート事件の〕もみ消しがどれほどのものだったか明らかになると,共和党の政治家たちはニクソンを弾劾するよう共和党支持者からの圧力にさらされた.今日,共和党支持の有権者たちはトランプとその関係者たちへの捜査をはげしく攻撃するニュースを受け取っている.現実から完全に乖離したニュースを,だ.そして共和党の政治家たちは,支持層の見方を反映して,フォックスニュースが繰り出している攻撃路線を踏襲している.
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スコット・サムナー「消費者物価指数と住宅価格」(2018年5月11日)

[Scott Sumner, “The CPI and housing prices,” TheMoneyIllusion, May 11, 2018]

9年前のことだが、住宅価格の計測間違いで消費者物価指数 (CPI) がどう歪んでいるか論じたポストを書いた:

朗報! 住宅バブル崩壊なんてなかったんだよ!

――少なくとも、アメリカ政府によればね.

労働統計局によれば、住宅価格は過去12ヶ月で 2.1% 上昇しているそうだ
それがなんで重大かって? ありとあらゆる理由があるけれど、まずは,実際に起きたことを探ってみよう。労働統計局によれば、財とサービスのコア・バスケットの40パーセント近くを住宅が占めている。

カテゴリ 重み インフレ率
住宅 39 % 2.1%
それ以外 61% 1.4%
全体 100% 1.7%

かりに、2.1% 上昇するかわりに住宅コストが過去12ヶ月で 2.1% 下落していたとしたらどうだろう? その場合、コアインフレ率はゼロということになる。どちらがもっともらしい数字だろう? 過去1年間のかなりにわたって、住宅価格は月あたり 2% 以上で下がり続けてきたんだよ。

ブルームバーグ』で、同様の結論に達した新しい学術研究が伝えられている:

新研究によれば、CPI は物価変動の反映が遅れるという――さらに、同じくらい重要な点として、CPI は物価が上がったり下がったりする度合いを過少に示してしまう。この問題の出どころにさかのぼると、政府による住居費の計算方法にたどりつく。住居費は、この物価指標の3分の1を占める。

3名の経済学者が開発した代替の計測法では、物価が動くとすぐさまこれを把握し、さまざまな変化の全域を示している。大恐慌以来で最悪の景気後退が起きた 2008年〜2009年にもしもこれが存在していたなら、労働統計局が公表した数字よりはるかに深刻なデフレを示していたことだろう。新研究によれば、大不況のあいだに公式の CPI はインフレ率を年率 1.7 パーセントポイントから 4.2 パーセントポイントも過大に示していたという。さらに、もっと近年では、反対方向の問題も生じている:年率の数値が 0.3 から 0.9 パーセントポイントも過少に示されていたと著者たちは書いている。さまざまな予想では公式数値のたった 0.1〜0.2 パーセントポイント の上下変動で大騒ぎしているのを考えると、これは途方もない落差だ。

どれだけ落差が大きかったかわかるグラフを示そう:

実のところ、今回の訂正はぼくの予想よりもちょっとばかり大きかった。だが、彼らの手法が完璧でないとしても、基本的な論点は正しいことにほぼ疑問はない。経済の実際の市場物価を反映する代替の物価指標に比べて CPI は上下変動がおとなしい。

彼らが指摘している問題は、ぼくがかつて2009年に言及した問題に似ている。労働統計局は既存の契約での賃料支払いを計算につかっている。その数字には、現時点で賃貸物件が市場でいくらで貸し出されているのかが反映されない。不況時には、新しい店子が賃貸料1〜2ヶ月分を無料にしてもらえることはめずらしくない:

今回の研究を行なったのは、ペンシルバニア州立大学スミールカレッジオブビジネスの Brent Ambrose と Jiro Yoshida、そしてカリフォルニア大学 Merage Schoold of Business の Edward Coulson だ。研究の最新版は学術論文「住宅賃料とインフレ率」のタイトルで掲載されている。CPI との主なちがいは、新研究では新しい賃貸物件のみ(新しい店子の賃貸契約や以前からの店子が更新した契約を含む)を計測している点だ。これと対照的に、労働統計局は賃貸契約が直近の月に更新されていない店子が払った賃料も含めている。これにより、CPI は市場状況の変化を遅れて拾い上げることになっている。

CPI の重大な欠点にスポットライトを当てた Ambrose, Yoshida, Coulson の3人に拍手。多くのプロ経済学者たちはあまりに無批判に CPI を使ってしまっている。

サイモン・レン=ルイス「財政政策は石器時代にとどまっている」(2018年5月10日)

[Simon Wren-Lewis, “Fiscal policy remains in the stone age,” Mainly Macro, May 10, 2018]

もしくは中世だろうか.ともあれ,1920年代より新しくはない.ケインズは1930年代に彼のいう流動性の罠において財政政策を使うことを提唱した.今日では,当時とちがった用語法を使って,金利がゼロ下限または実効的下限にあるとき場合に財政拡張の必要だという話がなされている.(私としては実効的下限という用語の方が少しだけ好ましく思う.金利の引き下げはどの地点からリスクが大きくなったり逆効果になったりするのかという判断は中央銀行しだいだからだ.) 今日でも,1930年代から論理は変わっていない.経済を管理する効果的で信頼のおけるツールを金融政策が失ってしまったときには,その次に効果的で信頼のおけるツールを持ち出す必要がある:それが財政政策だ.
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サイモン・レン=ルイス「敵対的環境:移民政策とネオリベのやりすぎ自滅」(2018年4月23日)

[Simon Wren-Lewis, “A hostile environment,” Mainly Macro, April 23, 2018]

移民に関する通説では,こんな風に考える――イギリスにやってくる移民が増加したことに国民の間で懸念が高まったことで連立政権は移民受け入れの上限目標を設定することとなり,その目標を達成するための方策を実施した.移民を抑止する「敵対的環境」をつくりだすのは,こうした対策の一環だった.ウィンドラッシュ世代の移民〔1948年にイギリス領植民地から本国への移住・定住が合法化されてイギリスにやってきた世代〕やその子孫たちは,目標達成に熱心すぎたりやたら官僚主義的だったりする当局の不運な犠牲者となっているのだ――
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ジョセフ・ヒース「なんでも人種化に抗して」(2018年4月25日)

[Joseph Heath, “Against the racialization of everything,” In Due Course, April 25, 2018]

私も含めていろんな学者が飽きもせず繰り返し語ってきたように,人種は社会的な構築物だ.だが,こう語る多くの人たちは,社会的構築物ですよとそっけなく語ってすませて,そのあとは人種が永遠不変の自然種であるかのように扱いつづける.私に言わせれば,人種が「構築物であること」を強調する要点は,人種がそれ抜きですませられない社会的カテゴリではないことを強調するところにある.人種というのは,個々人の素性や対人的なやりとりの特定の側面を切り取る独自の方法だ.だが,ものごとの切り取り方なら他にもあるし,必ず人種という切り取り方をしなくてはいけないわけでもない.こう考えると,どんな場面であっても,いったい今ものごとを切り取るのに人種が最善の方法なんだろうかと問うのは理にかなっている.問題は,カテゴリとしての人種が本当にその場面で重要なことをうまくとらえるのかどうかだ.
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