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ノア・スミス「人的資本の資本たるゆえんは」

[Noah Smith, “Why human capital is capital,” Noahpinion, February 25, 2017]

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経済学者は,「資本」という単語をゆるく使いがちだ.「資源を費やして構築でき,長期にわたって持続し,価値を生み出すのに使えるもの」ならなんでも資本とされる.なんとも広義だ.たとえば,社会そのものだって資本に該当しうる.また,典型的に,資本と言えば「人的資本」も含まれる.人的資本とは,人がもつ技能・才能・知識を指す.
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アレックス・タバロック「価格差別の倫理(小ネタ)」

[Alex Tabarrok, “The Ethics of Price Discrimination,” Marginal Revolution, February 20, 2017]

デリーにあるインド国立博物館から,価格差別の一例を.議論の呼び水に疑問を1つ書いておこう――「これって,公正だろうか.倫理的だろうか」「アメリカでは,これは合法だろうか?」

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インド国民:20ルピー
外国人:650ルピー(補足的な音声ガイドつき)
7年生までの学生:無料(I-カード提示)

タイラー・コーエン「実際のところスウェーデンの秩序はどれくらい乱れているの?」

[Tyler Cowen “How disorderly is Sweden really? ” Marginal Revolution, February 21, 2017]

Here is the latest, which is in the media but not being plastered all over my Twitter feed:
最新ニュースはこちら.メディアには出ているけれど,いまのところぼくのツイッターフィードをびっしり埋め尽くすほどの話題にはなっていない:
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タイラー・コーエン「移民同化の真のジレンマ」

[Tyler Cowen, “The real assimilation dilemma,” Marginal Revolution, February 23, 2017.]

移民をめぐる議論は,ラテン系移民の第2世代・第3世代の同化率に関心を集中させていることが多い.だが,いったんこれを脇に置いて,ラテン系以外でアメリカにやってくる人たちを考えてみよう.彼らがいかに急速に同化するかを見ると,ぼくは目を見張る.ここで言ってるのは,カナダ系だけの話じゃない(「このブログの著者2人のどちらが国境の北側出身でしょう」と出し抜けに聞かれて当てられます?) ラテン系以外の移民には,ロシア系もいればイラン系,中国系,インド系などなどいくとおりもある.ムスリム系移民の大半もそうだ.こうした人たちは,アメリカ生まれアメリカ育ちの人と文化的にそっくり同じになりはしない.でも,経済的・社会的な指標で見ると,これ以上望めないほどの実績を示している.

それどころか,同化問題をもたらしているのは,ずっと昔からのアメリカ人たちの方だ.しかも,おうおうにして伝統的なアメリカ人だったりする.彼らの暮らす国は,急激に変わってしまった.そのおかげで,彼らは新しい現実の事情にあまりうまく同化していない.さらに,べつに自ら選んで移民になって「きっと困難が待ち受けているだろう」と思っている人間でもないので,「そういうもんだからしかたない」と受け入れる態度を内面化する方にいつでもかたむくわけでもない.彼らの多くは不平をこぼし,また,職業生活で落伍したり冴えないニッチに落ち着いたりする.

この点で見て,みずから進んでやってくる移民たちにもっとうまく・早く同化するよう促しても,かえって現実の同化問題を悪化させてしまいかねない.自国〔アメリカ〕の文化をいっそう急速に変えることになるからだ.

移民の真の影響は,賃金や選挙結果に表れないこともよくある.むしろ,昔ながらのアメリカ生まれアメリカ育ちの人々の一部に同化の負担がかかることになる.そして,移民たちがいっそう生産的に首尾よくやればやるほど,こうした問題はいっそう深刻になるかもしれない.

この点の議論につきあってくれたケイトー研究所のリバタリアングループに感謝.議論でのやりとりから,Will のものも含めて発言を使わせてもらった.

アレックス・タバロック「チャック・ノリス vs. 共産主義」

[Alex Tabarrok, “Chuck Norris Versus Communism,” Marginal Revolution, January 5, 2017]

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チャック・ノリス vs. 共産主義』はルーマニアに取材した芸術とヒーローの力と共産主義の終焉をめぐる傑作ドキュメンタリーだ.共産主義体制が1948年に樹立されると,旅行は制限され,メディアは検閲され,秘密警察がみんなを監視するようになった.ルーマニアは外の世界から隔絶された.ところが,1980年代中盤に,密かに持ち込まれたアメリカ映画の VHS テープが出回りだした.地下グループはひそかに集まっては,『ロッキー』や『テキサスSWAT』といったご禁制映画を上映した.
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スコット・サムナー「2パーセント目標の超過より3パーセント目標未達の方がのぞましい」

[Scott Sumner, “Better to undershoot a 3% target than overshoot a 2% target,” TheMoneyIllusion, January 1, 2016]

金融政策について,ぼくはライアン・アヴェントとよく似た見解をとっている.でも,次の点について,ちょっとばかり細かい文句をつけておこう.

同時に,連銀の2パーセント目標をインフレ率が上回っている期間には,中央銀行が政策金利を上げる余地がもっと大きくなる.長期的名目金利の水準が高ければ高いほど,次に問題が生じたときに金利をゼロまで下げねばならなくなる見込みは薄くなる.

2009年,2010年,2011年だったら,2パーセントインフレ目標を超過しようとするのは意味があっただろう.でも,失業率が 4.6 パーセントになっている今日では話がちがう.経済が堅調なときにインフレ率を2パーセントを超えるところまで押し上げれば,経済が低調になったときに2パーセントインフレ率の下を狙わなければならなくなる.次にゼロまで引き下げねばならなくなる見込みはむしろ強まる.

というか,これこそ,2008年に間違ってしまったことだ.住宅ブームのあいだにインフレ率は2パーセントを超過していた.このため,2008年に政策を積極的に緩和する手をうつ必要が生じたとき,(2008年のあいだ2パーセントを超えていた)インフレの昂進を恐れて連銀は手控えてしまった.景気過熱期に2パーセントインフレを下回っていて,景気後退局面で2パーセントインフレを上回るのなら,理にかなっている.

ライアンはもっと高いインフレ率を支持する力のこもった論証を他にも提示しているけれど,インフレ目標の変更という観点でとらえた方がもっと有効だろうと思う.2パーセント目標を 0.5 パーセント超過するのを支持するかわりに,もっと高い3パーセントインフレ目標を 0.5 パーセント下回るのを求める方が理にかなう.インフレ目標を3パーセントまで引き上げることで,次に景気後退が訪れたときに連銀が金利を引き下げられる余地は大きくなる.2パーセント目標の超過では,そうはいかない.それに加えて,景気過熱期に目標未達でいる方が,ライアンも以前から支持している名目GDP 目標の精神と整合する.

こういう話は,意味のない難癖に思えるかもしれない.「2.5パーセントインフレ率になるんだったら,〔超過か未達かで〕目標をどうするかって話になんかちがいがでてくるの」と思うかもしれない.ごく短期的には,なんのちがいもないかもしれない.でも,明確に定義された政策レジームの文脈で金融政策の意思決定をしなかったら,経済は安定しなくなる見込みが大きい.とくに,景気循環のターニングポイントに達したときにはなおさらだ.

例によって,この3パーセントインフレ目標はぼくが優先する選択肢ではない(ぼくが推すのは名目GDP水準目標だ).ここでは,たんに「ハト派的」とでも言えそうな現行の政策論をとる人たちにとっていちばん有益な選択肢だとじぶんが考えるものを例解しようと試みてるにすぎない.

スコット・サムナー「弱者に同情しすぎる保守派」

[Scott Sumner, “Bleeding heart conservatives,” TheMoneyIllusion, December 30, 2016]

長年,やたら弱者に同情するリベラルに悩んできた.彼らは,社会の底辺で苦しむ人たちを美化する傾向がある.もちろん,右派はこれと真逆の間違いをおかして,底辺の人たちを邪悪な人間だと考えた.適正な態度は,冷静な功利的現実主義だ――彼らは犠牲者でもないし悪漢でもない.さて,道徳心の見せびらかしにやっかいな新しい傾向がでてきているようだ――弱者に同情しすぎる保守派という新しい傾向がある.
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スコット・サムナー「炭鉱の雇用を奪ったのはオートメーションであって貿易ではない」

[Scott Sumner, “Coal jobs were lost to automation, not trade,” TheMoneyIllusion, December 21, 2016]

dwb というコメンターがこんなコメントを残している:

炭鉱の雇用をつぶした「技術変化」は安い天然ガスと電力需要の低迷とオバマによる化石燃料撲滅キャンペーンの 1-2-3 パンチだよ

この人は,少なくとも貿易を悪者にはしていない.それでも,基本的にはまちがってる――ごく最近まで,石炭の雇用を奪っていたのはオートメーションだ.石炭産業の雇用はこうなってる:

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実は見かけよりなおわるい.1973年にオフィスでの雇用が加えられたおかげで,データで人為的な急増が生じているからだ.実際の炭鉱夫たちを数えたなら,雇用喪失はグラフよりはるかにひどいものになる.ただ,このグラフですら,87万人から約11万人へと雇用が失われている.鉄鋼業よりほんのわずかにわるい.

すると,石炭産業は輸入に圧倒されてしまったんだろうと決めてかかる人がいるかもしれない.でもちがう.過去5年というもの,石炭は純輸出になっている.全生産量の 7% から 12% の範囲だ.

「輸入ではないとすると,じゃあ石油やガスとの競争で生産がたたきのめされたんだよね?」と言うかもしれない.そうでもない.以下のグラフをみてもらうとわかるように,石炭産業はこの数十年にわたって生産を増やしている.石油やガスとの競争が実際に生産を食いはじめたのはこの数年になってのことだ.

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じゃあ,どうしてこれほど多くの石炭産業の雇用が消えてしまったんだろう? 答えは単純,「オートメーション」だ.ぼくが若かった頃とくらべて,いまの生産量は2倍近くまで増えている.そして,はるかに少ない労働者で回している.

コメンターのなかには,「オートメーションによる雇用喪失は貿易による雇用喪失より痛みがかるい」と思う人がいるかもしれない.実際には,痛みは同等だ.オートメーションで失われる雇用は,人員削減によって時間をかけて徐々に起きるわけではなく,波となって生じる.しかも,景気後退のさなかに起こることもよくある.たとえば鉄鋼業では,USスチールとベツレヘムスチールが旧式の工場を閉鎖したとき数千の雇用が失われ,ニューコアとチャパラルは別の地域にもっと効率のいい新式工場をつくった.ピッツバーグで多くの鉄鋼業雇用が失われる一方で,その分を置き換えたのはテキサスのもっと少ない人員だった.

似たことが石炭業でも起きる.ワイオミングの新しい巨大露天掘り炭鉱は巨大ショベルカーを使う.ウェストバージニア州の閉鎖炭鉱の従業員100名がこれで置き換えられてしまう.

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ワイオミングが外国だったら,ウェストバージニア州の炭坑夫たちは議員たちに怒鳴り声を上げて,自分たちは安いワイオミングの輸入から「保護」される必要があると訴えるところだろう.だが,ワイオミングもアップルパイなみにアメリカなので,誰も関税を主張なんかしない.それでも,かりにオハイオ州の鉄鋼が中国からの輸入に影響を受けた場合と,経済問題はそっくり同じだ.

オハイオ州の鉄鋼労働者やウェストバージニア州の石炭鉱夫の苦しみにもっと注目すべきだという聖人ぶった論評がメディアで騒々しく飛び交っているのをみかける.なるほど,でもそうした評論家たちの何人が,この2つのグループの利害が真っ向から衝突しているのを認識してるんだろう? トランプが鉄鋼を助けるべく保護主義政策を追求したら,それによってアメリカの石炭輸出は打撃を受ける.TPP はウェストバージニアの景気をよくするだろうけれど,一方でオハイオの製造業を脅かす.

だが,もっと深い水準では,石炭と鉄鋼が直面する問題はそっくり同じだ.アメリカでは,というかほぼ世界のいたるところで,オートメーションが急速に鉱山業や製造業の雇用を削減していっている.この問題が消えてなくなることはなさそうだ.それどころか,ロボット工学の進展にともなって,事態はいっそうわるくなるだろう.トランプはいくらか象徴的な動きこそ見せられるだろう(空調設備企業 Carrier の件や環境保護法の緩和など).それで救われるのは一握りの雇用だ.そして,世間には見えない他の雇用が失われる.だが,根本のところではなにも変わらない.たんに,いまより薄汚くて暑い地球をもたらすだけだ.そして,そんときにもラストベルトの労働者たちはあいかわらず怒っているだろう.

自分たちの苦しみは外国人のせいだとデマを吹聴するのはいつだって心地いいものだ.でも,その外国人も同じことをやる――彼らにとっての外国人がわるいと責めるだろう.その外国人にはぼくらも含まれる.

タイラー・コーエン「サービス部門の新たなお仕事あれこれ:《スペイン式ハムスライスの供給と需要》 編」

[Tyler Cowen, “Those new service sector jobs, supply and demand Spanish ham slicing edition,” Marginal Revolution,December 21, 2016]

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55歳,世界最高峰のハムスライス職人――フローレンはそのサービスに相応の料金をとっている――ハム1本をスライスするのに4000ドルをとるという.

フローレンは愛称だ.そう呼ばれるのを本人も気にいっている.彼はこれまで数多くの多彩な有名人たちのためにハムをスライスしてきた.バラク・オバマ大統領,ロバート・デ・ニーロ,デイヴィッド・ベッカム,さらには,スペインのファン・カルロス国王陛下のためにスライスしたこともある.ハモン・スライスの匠の技を披露した場所もさまざまだ.オスカー賞の受賞会場,ハリウッドの内輪パーティ,ラスベガスやマカオのカジノなどなど.一年中,各地で開催されるF1レースのサーキットを転々としながら,パドックの VIP たちやラウンジのトップレーシングチームのためにハムを切る.

ハモン愛好家たちのあいだでは,どうやらスライス機は論外らしい.摩擦で生じる熱でハムの味がかわったり脂肪がとけてしまったりして,ハムを賞味する経験がすっかり台無しになってしまうのだという.だが,スペインで催されるそれなりのカクテルパーティやイベントならきまって専門のハムスライス職人がいるものだが,ハム1本あたりの費用はだいたい250ドル程度だ.これでは,とうてい生計を立てられない.このため,職人たちの大半は兼業だ.一方,フローレンこと Florencio Sanchidrián はハム1本あたりおよそ4000ドルを請求し,1時間半かけてスライスする.

さらに:

「ハム切り師が英語をしゃべるのもちょっとどうかと思いますね」と彼は語る.

全文はこちら.この記事を教えてくれた Chug に感謝.

タイラー・コーエン「多くの人にとってアメリカンドリームは消失してしまっている」

[Tyler Cowen, “For many people, the American dream has been vanishing,” Marginal Revolution, December 9, 2016]

1940年に生まれた赤ちゃんたちが30歳の大人になったとき,親が30歳で稼いでいた課税前の世帯所得を上回っていた人たちはおよそ92パーセントいた.(もっと上の年齢の課税後所得でも結果は同様だ)

(…)1980年生まれの赤ちゃん――いま36歳になっている人たち――の場合,アメリカンドリームをはかるこの指標は,50パーセントにまで落ちている:つまり,親が同年齢のときに稼いでいた額を上回った人たちは,半数にすぎない.

上記は,『ニューヨークタイムズ』のデイヴィッド・レオンハートの記事から引用した.紹介されている元ネタは Raj chetty による新研究だ.Jim Tankersley の文章にもっと詳しく書かれている.『ブルッキングス』での報道はこちら.さらに,ここで Vincent Geloso がデータのいろんな調整法について考察している.

▼ 親世代の収入を上回っている割合を生年別で見ると:
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