経済学101は主に皆様の寄付によって賄われています。温かい支援をお待ちしています

ノア・スミス「同質性にいざなうセイレーンの歌」(#6)

[Noah Smith, “The siren song of homogeneity,” Noahpinion, April 30, 2017]

〔数回にわけて掲載しています.前回はこちら

代替理論: 信頼が同質性を生じさせる

再定義や人種間・民族間の婚姻をとおして同質性はうみだせるのだと認識すると,同質性と信頼の相関が現れうる理由について,すぐさま代替理論が思い浮かぶ:信頼が高いところほど,時がたつにつれて同質的になっていくんじゃないか.
[Read more…]

ノア・スミス「同質性にいざなうセイレーンの歌」(#5)

[Noah Smith, “The siren song of homogeneity,” Noahpinion, April 30, 2017]

〔数回にわけて掲載しています.前回はこちら

同質性はどれくらい人種の問題なんだろう?

だが,ここでひとひねりが加わる.それが次の論点につながる.日本人はみんな同じ人種なんだろうか? もしかしたらちがうかも.日本は2つの集団が混合して形成された.縄文人(異例なほど人口密度の高かった狩猟採集民)と弥生人(稲作民)の2つだ.この両者が遺伝的に交わっていることは,いまでも遺伝データにごくはっきりと見てとれる.そして,おそらくはこの結果として,日本人の特徴はかなり幅広い多様性が見てとれる.たとえば,この2人は日本人なんだけど――
[Read more…]

ノア・スミス「同質性にいざなうセイレーンの歌」(#4)

[Noah Smith, “The siren song of homogeneity,” Noahpinion, April 30, 2017]

〔数回にわけて掲載しています.前回はこちら

同質的な社会に暮らしてみたぼくの経験

いつもこのブログを読んでくれてる人なら知ってるとおり,ぼくは日本に暮らしたことがある(合計で3年半くらい).もちろんぼくは日本人じゃないけれど,日本暮らしの経験で,日本の人たちがどんな風に暮らしてどんな風に考えるのかずいぶんわかった.おかげで,間近で見た同質的な社会のいい具体例を少なくとも1つは観察できたわけだ.
[Read more…]

ノア・スミス「同質性にいざなうセイレーンの歌」(#3)

[Noah Smith, “The siren song of homogeneity,” Noahpinion, April 30, 2017]

〔数回にわけて掲載しています.前回はこちら

データに基づいて同質性を支持する議論の注意点

Roissy は論争的なブロガーだ.彼がやろうとしているのは自説の主張であって,教育ではない.同質性を支持する学術的な主張は,Roissy が提示する論ほど明快ではない.
[Read more…]

ノア・スミス「同質性にいざなうセイレーンの歌」(#2)

[Noah Smith, “The siren song of homogeneity,” Noahpinion, April 30, 2017]

〔数回にわけて掲載しています.前回はこちら

オルト右翼は本当に同質性支持の運動なんだろうか? トランプ支持運動は?

どんな運動も…まあ,異質だ.オルト右翼は同質性についてよく語るけれど,同質性の話ばかりしてるわけではないだろうしし,運動をやってる理由も同質性を求めるからというだけじゃないはずだ.なかには,社会正義運動がこわくてオルト右翼に加わった人たちだっているかもしれない――結束して相互防衛しようというわけだ.あるいは,とにかくしかじかの移民集団に反対して加わっている人たちもいるかもしれない――キューバ系の隣人はかまわないけれどシリア系の隣人はこわくてたまらないという人たちも,オルト右翼に参加しているかもしれない.あるいは,キリスト教右派が崩壊したあとに安住できる集団を探し求めている宗教的伝統主義者かもしれないし,古き南部らしいスタイルの人種主義政治で結集したネオ南部連合主義者かもしれないし,参加できるイケてるクラブを探してるただのトランプ・ファンかもしれない.人によっては,「同質性」なんてたんにこの国からけしからん連中を追い払うために連呼しやすい言葉でしかないかもしれないし,あるいはみずから選び取った価値観の基礎となっているかもしれない.トランプ支持運動について言えば,ほぼ間違いなく複数の理念がある――大統領選に勝つという大同団結の目標を掲げるものなら,かならず複数の理念があるものだ.
[Read more…]

ノア・スミス「同質性にいざなうセイレーンの歌」(#1)

[Noah Smith, “The siren song of homogeneity,” Noahpinion, April 30, 2017]

〔註:長文のため,数回にわけて掲載します〕

socal

アメリカとヨーロッパは,政治が大変動する時代を迎えている.とはいえ,政策は大して変わっていない.この2~3年ほどで急激に様変わりしたのは,いろんな大衆運動や政治活動の原動力となる思想や公共の論議だ.ぼくがいちばんよく知っているアメリカでは,左派が新たに大きなうねりを起こしている――とりわけ目立つのが,社会主義運動の復興と社会正義運動だ.ただ,ぼくが知るかぎりでは,新しい動きでなにより大きいのはオルト右翼だ.ざっくり言えば(日が暮れるまで定義を論じ続けることもできるし,なかにはそうしたい向きがいるのもわかってる),オルト右翼がのぞんでいるのはアメリカ社会を同質にすることだ.とりわけ熱狂が見られるのは人種的な同質性を求める動きだけど,宗教も一枚かんでいるように見える.
[Read more…]

ノア・スミス「経済学概論のモデルでは労働市場はわからない理由」

[Noah Smith, “Why the 101 model doesn’t work for labor markets,” Noahpinion, April 14, 2017]

ether

「経済学101(概論)」の初歩的なモデルといえば,取引される財になんのちがいもない単一市場の供給-需要モデルだ.このモデルでは労働市場はわからない.でも,そこのところがどうにもわかりかねる人たちは多い.労働政策をめぐる論争にかかわる人たちのなかには,この理論がほぼ公理のようになっている向きもある――つまり,労働市場は「労働供給曲線」と「労働需要曲線」で記述できるに決まっていると考える人たちもいる.そういう人たちに向かって,「そりゃムリですよ」と言ったりすると,先方の脳みそは故障をおこしたみたいになる.「労働需要曲線がないなんてことがありうるかね? モノの価格と,みんながそいつをどれくらい買いたがってるかってこととの関係がないなんて,ありえないだろう?」
[Read more…]

ノア・スミス「ロボットが仕事とりよってん」

[Noah Smith, “Robuts takin’ jerbs,” Noahpinion, March 31, 2017]

K2SO

数学でモデルを書くといいことがある.まだ検証していないままでも,アイディアを具体的に詰められる.たとえば,最近ライアン・アヴェントとポール・クルーグマンがかわしたやりとりを考えてみよう.アヴェントが説明しようとしているのは,「生産性の向上が減速している最中にすらロボットが仕事を奪いうる」ということだ.この論は,これまでにいろんな人たちがめいめいのバージョンを語っている:「もしロボットがみんなの仕事を奪っているのだとしたら,いったいどうして生産性の向上がこうも鈍くなってるの?」 アヴェントの説はこんな具合:
[Read more…]

アレックス・タバロック「人件費が安いとこうなる:インド編」

[Alex Tabarrok “When Labor is Cheap,” Marginal Revolution, April 22, 2017]

インドの人件費は安い.そのため,なにかとアメリカと事情がちがう場合がある.

インドでタクシーをつかまえてレストランに行ったとき,最初の2回くらいはびっくりした.運転手が,「ここで待ってましょうか」と尋ねてきたんだ.アメリカでレストランの外にタクシーを待たせたら,しゃれにならない費用になるだろう.だが,インドでは運転手が1時間 1.50ドルでよろこんで待っていてくれる.いまだにこれには当惑する.

物理的な資本である自動車はインドでもアメリカでもだいたい似たようなコストだ.運賃が安上がりだということは,タクシー代にしめる運転手のコストがどれくらいかの例証でもあるし,運転手のいらない自動運転車ができたら移動コストがどれくらい下がるかを示してもいる.

あと,なんでも宅配してくれる.

モールでもホテルでもアパートでもお金持ち向けの店舗でも,かならず警備がいる.といっても,ぜんぶハッタリだ〔いかにも警備を厳重にやっているような印象を与えているにすぎない〕 ――インドはアメリカほど危険じゃない――けれど,なにしろ1時間1ドル~2ドルでできるのだったら,「じゃあやろうか」となるだろう.

オフィスは1日24時間,週7日ずっとあいていることがある.べつに,誰かがオフィスにいるわけではなくて,24時間ずっと警備されているなら,いちいち戸締まりする理由もないからオフィスが物理的に開けっ放しになっているだけだ.

どこの店でも,店員は有り余っている.これが不可解で,というのも店員が大勢いる結果としてサービスが悪化しているのだ.たとえば,ごく小さなお店ですら,店員が支払い票を書くと,それをべつの店員に渡して会計をやったりする.おそらく,店員に窃盗をさせないために店のオーナーがとった対策なのだろう.つまり,こうしておけば店からちょろまかすには店員2人が結託しなくてはならなくなる.

オフィスでは,清掃員が常勤で雇われている.おかげで,週に1回か2回どころではなく,1時間に1回か2回姿を現して清掃していく.過剰に(?)民間の空間が清掃されていることで,民間の清潔ぶりと公共の汚らしさの対比が際立っている.

アレックス・タバロック「疲労困憊した医師は間違いをおかしやすく患者の害になる」

[Alex Tabarrok, “Fatigued Physicians Make Mistakes and Harm Patients,” Marginal Revolution, March 12, 2017]

疲れ果てた状態で車を運転すると事故をおこす.この当たり前の事実への対応策として,バスやタクシーの運転手は8時間連続して休憩をとったあとで最大10時間までしか運転できないように制限されている.ところが,内科医の場合,現行の基準はこれより大幅にゆるい.1年目の研修医の交代勤務時間はなんと16時間だ.これだけでもすでにどうかしてる.ぼくは午後 7:20から10時の夜学クラスをよく教えている.いつも,むずかしい題材は早めの時間に教えるように心がけている.なにしろ,9時ごろになると,もう調子がすっかり落ちてしまっているからだ.言うまでもなく,教師よりも研修医たちにかかるストレスの方がはるかに大きいし,疲労も大きい.さらに,1年目の研修医たちが働けるのは16時間までだけれど,2年目になると連続24時間ずっと働けるどころか,最大30時間まで働けるようになっている.睡眠をとらずにまともに稼働できる秘訣を1年の研修で内科医たちに教えられるんだとしたら,すごくない?
[Read more…]