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アレックス・タバロック「チャック・ノリス vs. 共産主義」

[Alex Tabarrok, “Chuck Norris Versus Communism,” Marginal Revolution, January 5, 2017]

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チャック・ノリス vs. 共産主義』はルーマニアに取材した芸術とヒーローの力と共産主義の終焉をめぐる傑作ドキュメンタリーだ.共産主義体制が1948年に樹立されると,旅行は制限され,メディアは検閲され,秘密警察がみんなを監視するようになった.ルーマニアは外の世界から隔絶された.ところが,1980年代中盤に,密かに持ち込まれたアメリカ映画の VHS テープが出回りだした.地下グループはひそかに集まっては,『ロッキー』や『テキサスSWAT』といったご禁制映画を上映した.
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アレックス・タバロック 「クリスマスゲーム理論」(2009年12月27日)

●Alex Tabarrok, “Christmas Game Theory”(Marginal Revolution, December 27, 2009)


愛しき妻へのクリスマスプレゼントに宝石を買っておいたのだが、妻曰く「返品してきてちょうだい」とのこと。「高価すぎるわ」(高価すぎて受け取れない)というのだ。素晴らしい。実に素晴らしい応答だ。こうして私はクレジットカードを使わずして妻からクレジット(信頼、信望)を勝ち得たというわけだ1

「ゲームの木」を慎重に辿った挙句に(後ろ向き帰納法を駆使した挙句に)宝石を買うという選択に至ったのだが2、そんな裏事情があるなんてことは妻には絶対に明かすまい。

(追記)真似はしないように。ゲーム理論や自分の配偶者のことは細かいところまでよく知っているというなら話は別だが、そうでもないのに私の戦略を真似ると懐事情に大打撃が加えられる恐れがある(詳しくはトーマス・シェリング(Thomas Schelling)の瀬戸際戦略(brinkmanship)を参照のこと)。

  1. 訳注;お金を一銭も使わずに妻からの信頼を勝ち得た、ということ。宝石を返品すればその代金を支払う必要もなくなる(クレジットカード払いで宝石を買っていた場合は宝石の代金が後日預金口座から引き落とされずに済む)が、その一方で妻には「夫は大枚をはたいて私に宝石をプレゼントしてくれようとした」という好印象を持ってもらえる可能性がある。 []
  2. 訳注;妻に宝石をプレゼントしても決して受け取らないだろう(「高価すぎて受け取れないわ。返品してきてちょうだい」と応じるだろう)と見越した上で宝石を買った、という意味。 []

アレックス・タバロック「大停滞に関する憂鬱な論文:アイディアは見つけにくくなっている」

[Alex Tabarrok, “A Very Depressing Paper on the Great Stagnation,” Marginal Revolution, December 17, 2016]

アイディアは見つけにくくなってるんだろうか? 「なってる」と言っているのがこの論文 [PDF] の著者たち,ブルーム,ジョーンズ,ヴァン・リーネン,ウェッブだ.アメリカの経済成長については,よく知られている事実がある.この100年あまりにわたって,アメリカの成長率は比較的に一定していた.一方,研究者の数は同じ期間にずっと大幅増加を続けている.研究者が増える一方で成長率が一定だということから,アイディアの生産性が下がっているらしいとわかる.ジョーンズがこの論点を主張したのは,ずっと昔の論文でのことだ [PDF].それ以来,この問題がずっと頭に引っかかってる.ただ,アメリカ一国をのぞいて世界の成長率は上昇しているのだから,もしかして,アメリカにはなにか相殺する要因があるのではないだろうか? だが,ブルーム,ジョーンズ,ヴァン・リーネン,ウェッブは,この問題をあらためて考察して,具体的な産業をもっと詳細に調査している.その結果得られた見取り図は,うるわしいものじゃあない.
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アレックス・タバロック「アメリカ人は多様性を強みだとみている」

[Alex Tabarrok “Americans Believe Diversity is Our Strength,” Marginal Revolution, October 7, 2016]

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ピュー研究所の調査によると,ヨーロッパ人に比べてアメリカ人は多様性をずっといいものだと考えている.多様なほどアメリカはよくない場所になると信じるアメリカ人は,わずかに7パーセントしかいない.これに次ぐのはスペインだが,アメリカの実に3倍以上もの人々が「多様になるとスペインはよくない場所になる」と信じている.

リベラルは保守に比べて多様性をよいことだとみているが,アメリカの保守派の多く (47%) は,多様なほどアメリカはもっとよくなると考えている.つまり,ヨーロッパのリベラルの大半よりアメリカの保守の方が多様性をよいことだと考え手いることになる.

多様性を楽観的に考えるのは,アメリカのとくに賞賛すべき特質だ.

多様性は信頼を損ないうるし,不信と強力な中央政府が結びついた社会は内戦と権威主義とを揺れ動く恐れがある.だが,限定された政府のもとでは,少しばかりの不信は手に負えるし,そればかりか利点でもある.たとえば,かりにアメリカがもっと同質であったなら,言論や信仰の自由をとっくの昔に放棄していただろう.その理由は,ほかでもなく,どういうことならみんなが自分の言いたいことを言っていいかどうか合意できない点にある.

多謝: Cardiff Garcia.

アレックス・タバロック「パワーポーズは死んだ」

[Alex Tabarrok, “Power Poses Are Dead,” Marginal Revolution, September 26, 2016]

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ダナ・カーニーが共著者となっている有名な論文(被引用数462)が発端となって,のちに〔アイミー・カディによる〕有名な TED トーク(3600万再生)につながり,さらに「パワーポーズ」に関する一般向け記事が無数に世に出回ることにもなった(たとえば「このシンプルな『パワーポーズ』であなたの人生とキャリアが変わるかも」).そのカーニーが,証拠を検討したのちに (pdf) こう書いている:

1. 私は「パワーポーズ」の身体的な効果を信じていない.その効果が現実にあると考えていない.

2. 私はパワーポーズの身体的効果を研究していない.

3. 私は他の人たちがパワーポーズを研究するのをよしとしない.

4. 私はもう自分の授業でパワーポーズを教えていない.

5. 私はメディアでパワーポーズについて今後語らないし,過去5年間も(懐疑論がでてくるよりずっと前から) 語っていない

6. 自分のウェブサイトにもCVにも,パワーポーズの効果について懐疑論を載せているし, Ranehill et al. による再現の失敗や「効果ない」を示唆する Simmons & Simonsohn のp曲線論文にリンクを貼っている.

書くのは容易でなかったにちがいない.すばらしい.

アレックス・タバロック「車文化の衰退」

[Alex Tabarrok, “The Decline of Car Culture,” Marginal Revolution, September 23, 2016]

UMTR1: 1983年には19歳以上の人々の約87パーセントが運転免許をもっていた.ところが,30年以上たったいま,その割合は69パーセントにまで落ちている.19歳未満のグループでも,運転する割合はやはり減少している:18歳の人々で運転免許をもっていた割合は1983年に80パーセントだったが2014年には60パーセントに,17歳は69パーセントから45パーセントに下がり,16歳は46パーセントから24パーセントに激減している.

自動車はかつて自由の象徴だった.いまや自由の象徴は WiFi だ.車を運転する若者の減少も,道路がかつてより安全になっている理由の1つになっていそうだ.

多謝: @counternotions.

補足:スティーブン・コピッツが言うには (youtube),これは文化の変化よりも若年世代の雇用が不足しているせいだという.

アレックス・タバロック「平等主義とオンライン教育」

[Alex Tabarrok, “Egalitarianism versus Online Education,” Marginal Revolution, September 20, 2016]

司法省がUCバークレー校に書簡を送って脅しをかけた (pdf).アクセス可能性の諸条件を満たすように同大学の無料オンライン教材を改変しないかぎり,裁判を起こすというのだ.これに対して,教務部長こう書いている
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アレックス・タバロック「差別する会社の方が倒産しやすい」

[Alex Tabarrok, “Firms that Discriminate are More Likely to Go Bust,” September 21, 2016]

差別は高くつく.とくに,競争的な市場ではそうだ.たとえば,X-タイプ労働者の賃金が Y-タイプ労働者の賃金より25パーセント低いとしよう.すると,貪欲な資本家は X-タイプ労働者をもっと雇うことによって利益を増やせる.もし Yタイプ労働者のコストが1時間15ドルかかる一方で Xタイプ労働者のコストが1時間あたり11.25ドルかかるとしたら,従業員100名の企業なら75万ドルも余計に稼げてしまう.それどころか,貪欲な資本家ならさらにもっと稼げるだろう.差別的な企業よりもぎりぎり下の価格を設定して市場を制覇してやり,差別的な企業を下に追い込んでやればいい.雇用主による賃金差別の基本的な論理を考えたのは,1957年のベッカーだ.この論理からは,差別はそれが起きたときだけでなく,とくに長期的にコストがかさむことが含意される.

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[図1: 2004年に差別の証拠があった企業のうち,2010年にすでに廃業していた雇用主の割合]
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アレックス・タバロック「労働参加率とビデオゲーム」

[Alex Tabarrok, “Labor Force Participation and Video Games,” Marginal Revolution, September 16, 2016]

以前とりあげた〕エリック・ハーストが新しい研究を論じている
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アレックス・タバロック「グラフをグラフ化したグラフ:ニューヨークタイムズ紙面の変遷」

[Alex Tabarrok, “Charting Charts Chart,” Marginal Revolution, September 15, 2016]

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[『ニューヨークタイムズ』の9月号に掲載されたグラフの数(5年刻みで調べた)]

Pricenomicsブログから引用:

『ニューヨークタイムズ』からとったサンプルでは,1990年以前だと「ビジネス」セクション以外にグラフは1つしか見つからなかった(…).2000年代の後半になると,『タイムズ』の報道にとってグラフは中心を占めるようになっている.同紙はグラフィック担当の記者チームに紙面を斬新な視覚情報で埋めさせている.また,『タイムズ』のウェブ版では,そうしたデータ視覚化がインタラクティブになっている場合も多い.

(…)『ニューヨークタイムズ』が視覚重視の報道の方針をゆるぎないものにしたのは,2014年のデータ主導ニュースサイトの Upsot を立ち上げたときのことだ.Upshot 立ち上げ当時のチームは15名で,そのうち3名がフルタイム雇用のグラフィックジャーナリストだった.

言うまでもなく,この変化を後押ししている要因はコンピュータだ.データ分析と視覚化は強力なツールだ.もしかするとフリン効果でデータIQが上昇しているんじゃないかと思う.