経済学101は主に皆様の寄付によって賄われています。温かい支援をお待ちしています

タイラー・コーエン「教育のシグナリングモデルを単純化して考えてみる」

Tyler Cowen “A simple question about the signaling model of education”, Marginal Revolution, April 27, 2018

議論の目的上,教育とは100%シグナリングでしかないとしてみよう。ついでに人々のIQ,誠実さ等々といった地頭的なものはこの議論に関係する範囲の期間中は変わらないものとする。

少なくとも就職後最初の数年間では所得格差が広がっていっているという状況を考えてみよう。雇用主には労働者の質の違いを見抜くことができず,それを表すシグナルを見るほかはない。これは,教育を得ることはそれまでよりも「より分離的」となっていくことを意味するはずだ。

これにより,それまでよりも教育はより厳しいものになる。とはいってもこれは「入ること」のほうではなく(雇用主は自分自身で採用面接官を用意することもできる),やり遂げることのほうだ。やり遂げることが難しいので,きちんとやり遂げることはそれまでよりもより一層質を示すものになる。やり遂げることが難しいのは,教育がより厳しくなるから,というわけだ。

さてこれは正しいかな?

タイラー・コーエン「本の紹介:セシリア・ヘイズ『認知ガジェット』」

[Tyler Cowen, “*Cognitive Gadgets*,” Marginal Revolution, March 30, 2018]

ハーバード/ベルクナップから、セシリア・ヘイズの新著『認知ガジェット』が刊行された。副題は、「思考の文化的進化」だ。ときに文意が汲みにくいところもあるものの、重要な一冊だ。それに、きっと今年の社会科学本でいちばん思慮深い一冊となるだろう。
[Read more…]

タイラー・コーエン「ウクライナ: 何が間違っていたか、そしてどう立て直すか」(2015年5月)

[Tyler Cowen, “*Ukraine: What Went Wrong With It and How to Fix It,*” Marginal Revolution, May 22, 2015]

 

これはアンダース・オースランドの新しい本であり、全面的に参考になる。以下は私が学んだいくつかのことである。

 

  1. ウクライナの若者の80%が何らかの高等教育を受ける。
  2. ウクライナのGDPに占める年金支出は2010年頃には約18%で、世界最高水準の年金支出である。そのほとんどは老齢年金であり、寿命は68.5歳と比較的短く、UNDPによるとこれは世界で122番目である。
  3. この本の出版時点で、ウクライナの公的支出はGDPの53%を占める
  4. ウクライナはお金を使い果たしつつある…” オーケー、これは既に知っていることだ。
  5. 平時において1989年から1999年にウクライナがまずくいった以上にまずくいった経済はない。公式な統計によれば、10年間で、ウクライナのGDPは合計で61%急落した。しかしながら、このいくらかは闇市場の成長によって相殺された。
  6. ドンバス[1]は含まれているけれども、クリミアはもはやウクライナのGDPの公式統計に含まれていない

 

[1] 訳者注: ドンバスとは、ウクライナ東部の地域であり、「ドネツク人民共和国」や「ルガンスク人民共和国」を名乗る勢力が分離独立を主張している。

タイラー・コーエン「サムナーにおすすめの東京情報」

Tyler Cowen, “My Tokyo Advice to Scott Sumner,” Marginal Revolution, March 26, 2018

東京で良質のフランス料理とイタリア料理の両方を食べるべきだ。

君にとって重要ならだが、本物のCDショップが東京にはまだある。

時間を取って地下街を散策するといいだろう。例えば新宿駅とか。他にもいくつか。

築地魚市場がまだ営業しているかわからないが、営業しているなら行く価値はある。

iPhoneの翻訳機能を準備しておくこと。文字と音声の両方。

東京で迷子になるのは最高だ。目に見えるものに囚われないように。

国立博物館。国立西洋美術館は良いが、行かねばならないというほどではない。

移民のいる地区を探してみるといい。

できだけいろんな時間帯に外を散策して東京を味わってみるといい。

紀伊国屋書店はとても良い。全体として六本木は好きではないが、駐在員や長期滞在者向けの派手なバーやレストランはそれなりの楽しさがある。

労働者階級の日本人がいる地区に行ってみるといい。地下鉄の主要な駅でもあるが、池袋とか。

自動販売機を探すといい。いくつも自動販売機が並んでるところとか。

子供向けも含め、ゲームセンターはかなり素晴らしい。

パチンコを一度は試すべきだ。

タイラーより

追記:スコットの元ブログはこちら和訳

タイラー・コーエン「経済学者たちは Twitter をどう使ってる?」

[Tyler Cowen, “How economists use Twitter,” Marginal Revolution, March 24, 2018]

Twitter 利用にあたって,経済学者も自然科学者も大半はじぶんの分野外の人々と交流しているが,似たような自然科学の専門家たちと比べると経済学者の方がツイート数が少なく,メンションをとばす相手も少なく,知らない相手との会話も少ない――という中心的な発見を報告しているのが,Marina Della Giusta と共同研究者たちによる研究だ.これは2018年3月にブリントンのサセックス大学で開かれる王立経済学会の年次カンファレンスで発表される.

また,彼らの研究では,経済学者たちの方が通じにくい言葉を使っていて,複雑な表現や略号を使いがちなのを見出している.さらに,科学者たちに比べて経済学者たちの口調はもっとよそよそしく,あまり個人的なことを言わず,あまり人の輪を広げないのだそうだ.

こうした結論を導くのに研究者たちが収集したのは,IDEA と sciencemag で同定された経済学者のトップ25名と自然科学者のトップ25名の Twitter アカウントの何万ものツイートに関するデータだ.経済学者のトップ3名はポール・クルーグマン,ジョセフ・スティグリッツ,エリック・ブリニョルフソンで,自然科学者のトップ3名はニール・ドグラース・タイソン,ブライアン・コックス,リチャード・ドーキンスだ.

さらなる情報はこちら (via Romesh Viitilingam).ただ,もとの論文はオンラインでは見つけられなかった.興味深い研究結果だけど,ぼくとしては全体の分布がどんな風になっているのか知りたい.

タイラー・コーエン「テック産業では、われわれはわれわれが制御できないことを恐れる」

[Tyler Cowen, “In tech, we fear what we can’t control” Marginal Revolution, March 21, 2018]

当記事は私のブルームバーグのコラムの話題であり、これはその記事の一部である。

ドローンと同様、自動運転車[1]は、特に強力な恐ろしいいくつかの特徴を持っている。それらは新しくて心躍る技術であり、そしてそれゆえにそれらについての話はよく検索されている。われわれは実際にはどの程度それらが安全なのかを知らないので、人々は、リスクの特定のレベルが何であれ、その不確実性によってそれ以上に怯えるのである。とりわけ、定義上、自動運転車は人間が直接的に制御していないように感じるものを含む。それは空を飛ぶことはふつう、車を運転することより安全であるにもかかわらず、多くの人々が車を運転するときに比べて空を飛ぶときにより重大な危険を感じるのに似ている。自動運転車は運転者の制御に関する多くの問題を提起している。その問題とはすなわち、後部座席で眠っていても構わないか、あるいは運転に常に注意しておかなくてはならないのかということである。そのことは、われわれの精神および感情を制御の問題により一層集中させる。

そして、

最近のFacebookやケンブリッジ・アナリティカをめぐる騒動は幾分似た問題を反映している(これこれを参照せよ)。アメリカ人のほとんどであれば、この件に関して何が間違っていたのかを明確かつ正確に表現できるであろうか。おそらくそうではないだろう。しかし人々は、SNSや個人的なデータやアルゴリズムのこととなると、彼らは明らかに制御できていないと感じていることを確実に知っている。その出来事および法的責任の不明確さが実際のところ問題の一部となっているのだ。

情報技術の世界に関する新たな話や批判を目にするとき、私はもはやテック企業が人気があるかを問わない(彼らが行なっているので)。その代わりに私は投票者が、北朝鮮の核兵器や常軌を逸したアメリカの大統領やどこにでもあるアルゴリズムを伴った世界が制御されていると感じているかを疑問に思う。彼らはその投票を行なっていない。なぜ、完全雇用のときに、ロボットがわれわれをみな失業者にしてしまうという記事が非常に人気なのかと疑問に思ったことはないだろうか。

われわれはまさに私が”制御している感覚の再確立”とよぶところの、アメリカ社会のための新しいメタ・ナラティブに突入しようとしている。残念なことに、実際の制御よりむしろ制御しているという感覚を追求するとき、しばしば両方とも手に入っていないのだ。

全てお読みいただきたい。

[1] 原文では”driverless car”であり「無人運転車」とでも訳すべきなのだろうが、「自動運転車」という用語が最も定着していると思われる。本稿においてもこの訳語を用いることとした。

タイラー・コーエン「サービス部門ではこういうお仕事もあったとか(ほんとかな?)」

[Tyler Cowen, “Those old service sector jobs (speculative?),” Marginal Revolution, March 19, 2018]

ダニー・ベイカーほどの権威が言うことなので、この話は絶対に事実だ。

60年代のハロッズでは、クビにされる役の人間が雇われていた――それはもう世界最高の仕事にちがいない。

パッと見ただけだと、この従業員はハロッズの最上階で品々の箱に囲まれながら腰掛けてパイプをふかしスポーツ雑誌を読みふけるだけでお金をもらっているように見える。しょっちゅう呼び鈴がならされ、その度に彼はあっちの売り場、こっちの売り場に呼びつけられる。駆けつけた先にはご立腹の顧客がいて、ハロッズの店長になだめられている。

今回のお客様はポンソンビー=ワッフルズ夫人だとしよう。夫人は、先日お買い求めになった高価な陶器のティーカップが欠けていたのがわかって苦情にいらしている。

我らがご同輩が駆けつけると、店長はこう言い渡す。「ポンソンビー=ワッフルズ夫人は最高に大事なお客様ですよ、キミがご夫人のお求めになったティーカップの品質を確認しなかったばかりに、こうしてご立腹なさる事態になったのです。キミはクビです」

ポンソンビー=ワッフルズ夫人が「なにもそこまでしなくていいのよ」と許しを申し出ても、店長は一向に許そうとしない。ご同輩はがっくりと肩を落としてトボトボと出口に向かう。最高の顧客対応水準を維持しようとするハロッズの断固とした指針に納得したポンソンビー=ワッフルズ夫人は苦情を取り下げる。さて、我らがご同輩は、いったんデパートの出口を通り抜けるとすぐさま最上階にとってかえしてスポーツ雑誌とパイプをたのしみながら、次にふたたびクビにされるべく待機する。

Henry Tapper からのリンクはこちら。via Steve Stuart-Williams.

タイラー・コーエン「《ビッグ・プロフェッサー》が監視してるぞ学生諸君!」

[Tyler Cowen, “Big Professor is watching you,” Marginal Revolution, March 16, 2018]

アリゾナ大学では、中退しそうな学生を事前に大学当局が把握している。

ツーソンにキャンパスを構えるこの公立大学では、数年前から、キャンパスのあちらこちらで初年度学生たちが学生証を読み取り機にかざすのをデータ収集している。学生証は入学したすべての学生に与えられ、キャンパス内の700箇所以上で使用できる。たとえば自動販売機、図書館、研究室、レジデンスホール、学生会館、映画館だ。

さらに、学生証にはセンサーも埋め込まれていて、カードが読み取り機にかざされた地理的な履歴を追跡するのにも使える。こうしたデータが分析システムに渡され、中退しそうな学生の「きわめて正確な指標」が見つけ出されるのだと、先週公表された大学プレスリリースには記されている。「[学生の]デジタル痕跡を得ることで、彼らの移動・行動・やりとりのパターンを調査できますし、そこから学生たちについてわかることはたくさんありますね」と管理システム学教授で本プログラム責任者の Sudha Ram は同リリースで語っている。「実はもともと学生の社会行動を追跡するために設計されたシステムではないんですが、その用途に使えます。タイムスタンプと位置情報がありますので」と Ram は言い添えた。

以上は、Quartz の Amy X. Wang からの抜粋。

タイラー・コーエン「Twitterではフェイクニュースの方が拡散しやすい?」

[Tyler Cowen “Does fake news spread faster on Twitter?” Marginal Revolution, March 18, 2018]

たぶん読者も覚えているだろうけど,Twitterではフェイクニュースの方が素早く広く拡散するというニュースが先週あちこちで流れた.たとえば,『ニューヨークタイムズ』のスティーブ・ロアもこれを取り上げている.彼はいまひとつわかっていない:
[Read more…]

タイラー・コーエン 「ビル・ジェームズのもう一つの顔」(2012年6月7日)/「ビル・ジェームズの次なる標的は殺人鬼」(2011年5月4日)

●Tyler Cowen, “Malcolm Gladwell on Bill James”(Marginal Revolution, June 7, 2012)


ビル・ジェームズ(Bill James)は僕らの世代の中でも一番重要な野球ライター(あるいは野球研究家)ですが、それだけにとどまりません。予想外も予想外でしょうが、彼は生きている人間の中でおそらく誰よりも多くの犯罪ドキュメント(実際にあった犯罪事件をテーマにしたノンフィクション本)を読破してるようなんです。彼が(2011年に)上梓した『Popular Crime』では過去200年間の犯罪史に残る(リジー・ボーデン事件からジョンベネ殺害事件までにわたる)重大犯罪の数々に念入りな検証のメスが入れられています。お見事でメチャメチャ面白くて時に意表を突かれる「彼らしい」観察があちこちに散りばめられています。でも、『Popular Crime』は大ベストセラーとまではいきませんでした。その理由(売れ行きが芳しくなかった理由)は私にはわかりません。・・・いや、わかるような気もします。『Popular Crime』は496ページもあるんです。

・・・とはマルコム・グラッドウェルの言だ(ビル・シモンズとの対話の中での発言)。ちなみに、グラッドウェルとシモンズの対話ではスポーツを題材としながら「才能の配分」や「才能の発掘」についてだけではなく、「テクノロジー」と「才能」、そして「名声」の三者の絡み合いが話題の中心となっている。

——————————————————————————————————-

●Tyler Cowen, “Bill James pursues serial killers”(Marginal Revolution, May 4, 2011)


そう、ビル・ジェームズというのはあのビル・ジェームズ――秀でたパターン認識能力の持ち主である野球博士のあのビル・ジェームズ――のことだ。こちらの記事でビル・ジェームズのもう一つの顔が紹介されているが、興味深い話が目白押しだ。ジェームズは次のような提案もしているようだ。

ビル・ジェームズは刑務所(「暴力支配」が蔓延る現状の刑務所)の改革案も示している。一つひとつの刑務所の規模を縮小して収容人数を最大でも24名に抑え、さらにはインセンティブを組み込むというのが彼の改革案だ。例えば、こんな感じだ。「レベル1」の刑務所に収監された受刑者は弁護士とも面会できるし聖書も持ち込める。ただし、24時間絶えず監視される。ところが、「レベル5」の刑務所に収監された受刑者は猫もコーヒーメーカーも持ち込める。「レベル10」の刑務所に収監された受刑者ともなるとお金を稼ぐのも許されるし(刑務所への)出入りも比較的自由にできる。ジェームズによると、大人数が押し込められた刑務所で蔓延りがちな「暴力支配」を突き崩し、受刑者が一つでも上のレベルの刑務所入りを目指すよう焚きつける1のが改革案の狙いだという。

当該記事の核心とも言える箇所も引用しておこう。

犯罪事件を扱った本を長年にわたって読み漁ってきて驚かされたことがあるという。犯罪捜査および裁判の過程であまりに多くの「弱い証拠」が真面目に受け取られる一方で、上質の証拠のあまりに多くが見過ごされているように(ジェームズには)思われたのだ。それに対してジェームズが提案する(犯罪の証拠に関する)評価方式では警察は犯罪の目撃談を6段階のレベルにランク分けして評価することになる。容疑者の身長や人種に関する目撃談はレベル1、顔をよく知る隣人が真昼間にガレージにある巨大冷凍庫の中から人体を運び出すのを目にしたという目撃談はレベル6、というようにだ。目撃談をはじめとした一つひとつの証拠はそのランクに応じて点数に換算され、先ほど取り上げた点数方式での裁判(証言や物証等々の点数の合計が100点を越えたら有罪と判定)に取り入れられることになる。

情報を寄せてくれたBrent Depperschmidtに感謝。

  1. 訳注;模範囚と評価されれば今よりも束縛の少ない(レベルが上の)刑務所への転所が認められる可能性があり、そのため受刑者としても模範囚として振る舞うよう動機付けられることになる、という意味。 []