ヒスパニック系と白人の犯罪統計がどんな風に収束してきてるかについて,キース・ハンフリーズ〔心理学者〕が秀逸な Slow Boring でいい記事を書いてる.
収監に関する政府の新しい報告書はおおよそ退屈だけれど,ひとつだけ目を見張る事実が記載されてる:ヒスパニック系は,いま白人に比べてわずかながら収監される確率が低い.刑事司法においてヒスパニック系と非ヒスパニック系白人に見られる各種の落差が狭まってきているのをうかがわせる兆しは複数あるが,いまなお正当に評価されていない.収監される率もそのひとつだ.これは,将来の改革や選挙政治のどちらにとっても重大な含意をもっている.
一点,はっきりさせておくと,この数字は刑務所ではなく拘置所に入れられた人数だ.刑務所ではいまだに〔ヒスパニック系と白人とで〕さまざまな相違点がある.だが,そうした相違点も急速に消えつつある.また,警官になる人数はヒスパニック系の方がずっと多くなっている.
刑事司法が採用する人員にも,これと並行した変化が見られる.1997年から2016年のあいだに,アフリカ系アメリカ人の警察官が占める割合は一定で変化していない一方で,ヒスパニック系が占める割合は 61% 増加している.この点をふまえると,2021年にギャラップ世論調査で警察を「かなり」または「非常に」信頼すると回答したヒスパニック系の割合が 49% だった理由の一端が説明される.この 49% という数字は,白人のそれ (56%) に近く,アフリカ系アメリカ人のそれ (27%) をはるかに上回っている.また,警察活動と犯罪に関するヒスパニック系の考え方も,白人に近いかもしれない.というのも,どちらの集団でも暴力犯罪の犠牲者となる率はほぼ同一だからだ(ヒスパニック系では 1,000人あたり 21.3 人,白人では 21.0 人).
もしかすると,系統的人種差別というやつは,そんなに系統的ではないのかもしれない.
(…)アメリカにおける刑事司法改革と人種差別について絶望が広まっている時代にあって,ヒスパニック系と非ヒスパニック系白人の各種落差が縮小しているのは,熟考する値打ちがある.一世代前,刑事司法制度内のこうした落差が劇的に縮小したり,さらには消滅するなどという考えを語っても,甘いと受け止められただろう.こうして各種の落差が縮小しているのを見れば,改革者たちはさらなる高みを目指すようになるだろうし,よく言われるアメリカ社会における偏見の根強さについてシニシズムは減少するはずだ.
原文についた読者コメントから:
100年前は,イタリア系とそれ以外のカトリック系ヨーロッパ人は基本的に別々の人種だと考えられてた.いまや,どちらもなんの註釈もなしで白人に括られてる.もしかすると,ヒスパニック系もこれと同じ推移をたどってるのかもね.(Bryan L)