タイラー・コーエン 「中国はマルクスに立ち戻りつつあるのだろうか?」(2018年5月11日)

●Tyler Cowen, “Is China moving back toward Marx?”(Marginal Revolution, May 11, 2018)


中国はマルクスに立ち戻りつつあるのだろうか? 習近平(国家主席)と一緒になって、マルクスのことを讃えるべきなのだろうか? ・・・という問いを、ブルームバーグに寄稿したばかりの拙コラムで考察している。社会主義陣営内部における思想論争についてもかなりのスペースを割いて論じているが、以下では記事の締め括りを引用しておくとしよう。

今後の中国で政治改革が進められたとしたら、その行き着く先はマルクスが唱えたようなプロレタリア独裁ということになりそうだろうか? おそらくそうはならないだろう。しかしながら、こと中国のこれまでの歩みに照らすと、マルクスは今のところはまだその間違いが露呈せずにいる理論家の一人であることは間違いない。それとは対照的に、(予測が外れて)面目を失う格好となっているのは、西洋の自由主義者 [1] … Continue readingであり、マオイスト(毛沢東主義の信奉者) [2] … Continue readingなのだ。

今後の中国にとってよいお手本(あり得る選択肢)の候補となるのは西洋流の自由主義という考えの持ち主からすると、中国で高まるマルクス再評価の機運を目にして不快になるかもしれない。しかしながら、毛沢東主義について(毛沢東主義が中国の歴史において果たした役割について/毛沢東主義の強烈な土着主義的な起源について)少しばかり腰を落ち着けて考え直してみたら、マルクスを讃える輪に加わってもいいと思うかもしれない。

是非とも全文に目を通されたい。

References

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1 訳注;「中国で経済の自由化が進み、それに伴って国内が豊かになれば、共産党の一党独裁体制も崩壊して民主的な政治体制への移行が進むに違いない」というのが西洋の自由主義者の見立てだったが、今のところはその予測通りにはいっていない(共産党の一党独裁体制が今もなお続いている)・・・というのがコーエンの評価。
2 訳注;「共産主義への橋渡し役となる社会主義革命は、資本主義が高度に発達した段階(都市化や工業化が高度に進んだ社会)でこそ(産業資本主義の行き詰まりの結果として)起こる」というマルクスの予測に対して、毛沢東は共産革命の担い手を農民に求めた。都市化や工業化が進んでいない農業(農村)中心の社会でも共産主義への移行は可能と訴えたわけだが、毛沢東が進めた大躍進政策にしても文化大革命にしても共産主義を実現するには至らなかった。その後の中国は、鄧小平が掲げた「改革開放」路線を歩み、経済の自由化(市場経済化)に乗り出した。その結果、現在の中国は都市化や工業化が高度に進んだ社会となるに至っている・・・というのがコーエンの評価。
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