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ダイアン・コイル 「『公共政策の経済学』を教えるとしたら」(2013年12月9日)

●Diane Coyle, “What can economics contribute to public policy?”(The Enlightened Economist, December 9, 2013)


大学で「公共政策の経済学」をテーマとする講義を受け持っているのだが、どんな内容をカバーするのがベストだろうかと、ずっと頭を悩ましている。世間を賑わす「ビッグ・イシュー」(大きな争点)に対する学生たちのごく自然な興味・関心を満足させつつ、経済学徒たる彼らを公共政策(ないしは、政府の決定)に明るい「事情通の市民」(well-informed citizen)へと涵養するには、あるいは、公共政策の世界に飛び込んでも活躍できる職業人に育てるには、どんな内容を教えたらよいだろうか? それに加えて、これまでに色んな講演の機会(例えば、こちらこちら)を通じてあれこれ論じてきたところでもあるが、「経済分析(経済学)は、公共政策に対していかなる寄与をなし得るか?」というさらにどでかい問題も背後には控えている。

公共政策をテーマとする経済学の講義でどんな内容が教えられているかを、ネットを使って調べてみる(講義のシラバスなり、課題図書リストなりを調べてみる)と、公共財の理論だったり、公共選択論だったり、取引費用経済学/新制度派経済学だったりといった、理論的な思考枠組みの説明に重点を置いている向き(第一のアプローチ)があるかと思うと、具体的なトピック――教育問題絡み(授業料、バウチャー制度など)、環境問題絡み(環境の経済評価など)、独禁法をはじめとした競争政策などなど――の解説に重点を置いている向き(第二のアプローチ)もあるようだ。具体的なトピックを論じる場合には、個別の事情(文脈)を踏まえざるを得ず、それゆえ、課題図書リストには、各国の事情を取り上げた文献が名を連ねている。その他には、伝統的な財政学の流儀に則って、租税や財政支出、福祉国家などなどについて論じるという向きもある(第三のアプローチ)。私が学部時代(はるか昔)に受けた講義が、まさにこのやり方(伝統的な財政学の流儀)に則って進められたものだ。教科書は、マスグレイブ夫妻の『Public Finance in Theory and Practice』(邦訳『マスグレイブ財政学-理論・制度・政治-』)だったっけ。公共政策について教えるといっても、色合いの異なる様々なアプローチがあるようで、実に興味深いところだ。

ちなみに、公共政策をテーマとする経済学の講義で(イギリス国内で)一番よく使われている教科書は、どうやら以下の三冊ということになるようだ。

*『Economics of the Welfare State』(「福祉国家の経済学」) by ニコラス・バー(Nicholas Barr)

『Economics of the Welfare State』

 

*『Economics of the Public Sector』(邦訳『スティグリッツ 公共経済学』) by ジョセフ・スティグリッツ(Joseph Stiglitz)


『Economics of the Public Sector』

 

*『The Economics of Social Problems』(「社会問題の経済学」) by ジュリアン・レグラン(Julian LeGrand)&キャロル・プロパー(Carol Propper)&サラ・スミス(Sarah Smith)


『The Economics of Social Problems』

 

私の蔵書の中だと、リー・フリードマン(Lee Friedman)の『The Microeconomics of Public Policy Analysis』(「公共政策分析のミクロ経済学」)なんかは、(アメリカの事情に力点が置かれているという難点はあるものの)お気に入りの一冊。ジョナサン・グルーバー(Jonathan Gruber)の『Public Finance and Public Policy』(「財政学と公共政策」)をお薦めされたことがあるが、お値段がバカ高いのよね。

(少なくとも、第一のアプローチに関する限りは)古典も勿論いくつかある。ブキャナン&タバロックの『The Calculus of Consent』(邦訳『公共選択の理論-合意の経済論理』)に、オルソンの『The Logic of Collective Action』(邦訳『集合行為論-公共財と集団理論』)に、オストロムの『Governing the Commons』(「コモンズを統治する」)。そして、(「私の一番のお気に入り」の座に長年君臨し続けている一冊である)シェリングの『Micromotives and Macrobehavior』(邦訳『ミクロ動機とマクロ行動』)。


『Micromotives and Macrobehavior』

 

公共政策をテーマとする講義でどんな内容をカバーしたらいいものか、まだ決めかねている。何かお薦めはないだろうか? ご意見を賜りたいところだ。


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