原子力発電は,グリーンエネルギーの主力にはなりそうにない.主力は太陽光発電だろう(蓄電用バッテリーと併せて).とはいえ,それでも原子力が重要なことには変わりないよ.なにより,建設済みの原子力発電所はたくさんある.ドイツやニューヨークがやったように,そしていまカリフォルニアがやろうという構えを見せているように,そういう原発を閉鎖するのは,気候変動危機を目前にした状況では狂気の沙汰ってものだ.それに,原子力は天然ガスの最後のシェアを置き換える「クリーンファーム」電力をもたらす有用な源泉だ.原子力発電に環境保護団体が反対するのは愚かしい.
その一方で,これまで歴代の大統領は民主党だろうと共和党だろうと,原子力発電にリップサービスだけしておいて,支援はほとんどしてこなかった.トランプは原子力研究にちょっとお金を出させたけれど,既存の原子力産業を支援するお金は大して出させなかった.
でも,ジョー・バイデンと彼の政権は実用本位で分別がある.彼らはまずもって実業家なんだ.それで,バイデンは実際に原子力発電を支援するために現実の具体的なことをやっている.
バイデン大統領の「アメリカに投資を」アジェンダには,ホルテック・パリセーズという企業への支援も含まれている.合衆国エネルギー省 (DOE) は 融資プログラム局 (LPO) を通じてホルテック・パリセーズへの上限 15億2千万ドルの融資保証に条件付きでコミットすることを今日発表した.これにより,ミシガン州カバートタウンシップにある800メガワット発電施設の再建と操業再開の資金を同社は確保する.
同プロジェクトの目的は,2022年5月に停止していたパリセーズ原子力発電所の操業を再開するとともに,遅くとも2051年までにその設備を更新して安定したクリーン電力の供給をはかることにある.
「原子力こそ,炭素排出ゼロの最大の供給源であり,全米で10万件の雇用を直接に支えるのに加えて間接的にも数十万の雇用を支えることになる」と合衆国エネルギー省長官ジェニファー・M・グランホルムは語った.「バイデン大統領の「アメリカに投資を」アジェンダは,ホルテック・パリセーズ原子力発電所に多大な資金供与を行ってここミシガン州の活発なクリーン電力労働力を支援し拡大している」(太字強調は筆者によるもの)
いまこれを読んでるキミが原子力の支持者なら,この件の功績はバイデンに認めるべきだね.
さて,これが一回きりの施策なのか,それとも,アメリカ全土で原子力発電所を支える方向に政権が全般的に転換するきざしなのかは,まだはっきりわからない.それに,太陽光とならんで原子力を建設するのに欠かせない許認可プロセスの改革を首尾よく進めていく意思と能力をバイデン政権が発揮するするかどうかもはっきりしていない.ただ,これは重要な起点だ.原子力発電に賛同している人は,その功績をしかるべき相手に認めるべきだろう.今回と同じことをさらにもっとやるように励ますために.
[Noah Smith, “Joe Biden supports nuclear power,” Noahpinion, March 29, 2024]