アメリカの不穏な情勢はピークを迎えていると,かなり早いうちにぼくは発言していた――だいぶさかのぼって,2021年中盤のことだ.それ以来に起きたいろんなことは,その判断と広い範囲で整合している.ただ,もちろん,不正だとして選挙に異論が唱えられたり今年の大統領選挙でトランプが当選したりすれば,状況は大きく変わるかもしれない.ともあれ,社会の不穏な情勢はちょっぴり引き潮になりはじめている小さなきざしはひとつまたひとつと現れている.
たとえば,2020年2月(パンデミックが全面的に社会を襲う前)に比べて,いまニュースウェブサイトを人々が見る量はだいぶ減っている.また,右派系ウェブサイトへのトラフィックを見ると,非主流・過激派サイトも主流派サイトも,いっそう流入数が減っている.
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左派はどうかと言うと,ハサン・パイカーみたいな主要な左派系ストリーマーの視聴数も,同じく減少中らしい.
また,他のどこよりも騒動の多いプラットフォームであるTwitter/X はどうかというと,2010年代の不穏な情勢の震源地だったここも,利用量が減少しつつある.別々に行われた最近の調査2つを見ると,まったく同じ結果が示されている:
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ただ,ひとつ覚えておこう.不穏な情勢が引き潮になるなかで,社会変革活動は縮小しつついっそう過激になっていくものなんだ.なんでそうなるかって言うと,社会変革のいろんな運動から最初に抜けていくのは穏当な人たちで,より過激な標本があとに残る――そして,この過激な人たちはいまや穏健派による歯止めの影響なしに自由になっている.それで,右派系の社会変革活動に騒動が起きてるわけだよ:
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ますます狂気の沙汰になってきている.右派には問題がある.オンラインでの論議ややりとり〔を導くインセンティブ〕の経済事情は,政治運動をうまく形成し動員することと齟齬が生じている.
かなり主流の活動家である Rufo がここで言及しているのは,右派系メディア人のベン・シャピーロに反ユダヤ差別の右翼が殺到して攻撃している件だ.
一方,左派に目を向けると,パレスチナに関する抗議活動はそれほど頻繁に行われていなかったし,いまはますます稀になってきている.ただ,その多くは,あけすけなまでに反ユダヤ的かつ攻撃的になっている.それに,左派の人たちはゲイへの嫌悪・憎悪を表明するイスラム主義の人物たちをおおやけに歓迎している.
ただ,左右それぞれの社会変革活動がますますイカレたものになっても,主流の文化を見ると,前よりものんびりと穏やかなものになってきているきざしがわずかながら見てとれる.ちょうど1970年代に見られたようなきざしが,現れているんだよ.
[Noah Smith, “Small signs of the ebbing of unrest?,” Noahpinion, March 29, 2024]