マーク・ソーマ 「『労働の未来: 賃金上昇が停滞しているのは何故か』」 (2015年8月13日)

Mark Thoma, ‘The Future of Work: Why Wages Aren’t Keeping Up’ (Economist’s View, August 13, 2015)


 

Robert SolowがPacific Standardに執筆したものから:

労働の未来: 賃金上昇が停滞しているのは何故か: ここ数十年の間にますます不可解かつ有害の度を強める諸般の特徴をアメリカ労働市場は抱えてきたが、その中の1つは、生産性の向上に伴った実質 (すなわち、インフレ調整をした) 賃金および諸給付の確保が蔑ろにされてきた点にある。…

慣習的に、一企業 (或いは、経済全体) への付加価値は、労働への対価と資本への対価の総計と等しいものと考えられてきた。しかしこれは正しい考え方とは言えない。というのは、この他に第三の要素が存在するからである。この要素を 『独占レント』 としよう。いや、単純に 『レント』 と呼ぶべきか。こちらの方がいっそう適切だろう。…

ここで私が示唆したいことは何か。それは、ここ数十年のあいだに産業間で目に付くようになってきた、レント分配の労働者側に不利な方向への移行、これこそ生産性に伴った実質賃金の確保が蔑ろにされている重大な理由の1つなのだということ、これである。これは、直接の計測データが存在しない為、検証の難しい仮説ではある。しかし、労働組合や団体交渉の腐敗凋落、事業姿勢の明白歴然たる硬化、働く権利に関連した諸法の人気高騰、さらに、賃金停滞はどうもレーガン政権とほぼ時を同じくして現れたようであるという事実、これら全てが指し示す方向はただ1つである。すなわち、国内の付加価値に対し賃金分が占めるシェアが低下してきたのは、労働者側の社会的交渉力が減少した為であるかもしれないということだ。…

さてここで私としては、この仮定をいま労働市場で姿を現し始めたもう1つの変化と関連付けてみたいのだ …、すなわち、労働のカジュアル化のことである。パートタイムで働く人の割合はここのところ上昇の一途を辿っている … 同じことが有期契約の下で働いている者や契約社員 (independent contractors) の数についてもいえる …

臨時労働者 (casual workers) には、企業が獲得した付加価値のレント部分に対する請求権が殆ど無い、或いは事実上皆無であるといって良い … もし本当に、企業レントの分配が労働側に不利な方向へと移行してきているならば、ますますカジュアル化が進む労働者層にとってこの傾向を逆転するのは極めて困難となるだろう。

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