アレックス・タバロック 「新型コロナのせいで天気予報の精度が下がっている?」(2020年7月19日)

●Alex Tabarrok, “COVID‐19 Pandemic Imperils Weather Forecast”(Marginal Revolution, July 19, 2020)


ウイルスが天気予報の精度を下げるなんてことがあり得ると思う? どうやら、あり得るらしい。新型コロナの影響で飛行機の発着が減っていて、その波及効果の一つとして天気予報の精度が下がっているらしいのだ。

天気予報は、日常生活を営む上においてだけでなく、農業や産業活動にとっても欠かせない役割を果たしており、相当な経済価値を秘めている。天気予報の精度を高める一翼を担っているのが、商用航空機が飛行中に入手する気象情報である。しかしながら、新型コロナの流行を受けて世界中でロックダウン(都市閉鎖)が断行される中(2020年3月~5月)、商用航空機の発着が減っており、それに伴って、商用航空機経由で得られる気象情報がこれまでよりも50~75%近く減っている。本稿では、気象予報モデルを使って得られる最善の予測と実際の予測結果を比較して、新型コロナの流行が天気予報(1~8日先の予報)の精度にどのくらいのインパクトを及ぼしたかを定量的に明らかにする。本稿で得られた結果によると、新型コロナの流行によって、遠隔地(例:グリーンランド、シベリア、南極大陸、サハラ砂漠)や航空機の往来が盛んな地域(例:北アメリカ、中国の南東部、オーストラリア)の天気予報の精度がかなり下がっている。具体的には、地上の気象(地上の気温、湿度、気圧、風速)や大気の安定度に関する予測の精度が下がっていて、より長期の予測になるほど予測精度の落ち込みが大きい。天気予報の精度が下がってしまうと、異常気象の兆候をなかなか掴めずに警報を出すのが遅れてしまい、新型コロナの影響に付け加わる格好で経済的な損失が生み出されてしまいかねない。西ヨーロッパでは、気象観測所が密に設けられているおかげで、この間も天気予報の精度がそこまで下がっていないが、コロナ禍という世界中を巻き込む緊急事態がこれからの天気予報に及ぼす負の影響をできるだけ和らげるためにも、(気象観測所の数を増やしたりして)気象観測の機会を増やすことが必要とされていると言えるだろう。

イン・チェン(Ying Chen)の論文(“COVID‐19 Pandemic Imperils Weather Forecast”)のアブストラクト(要旨)より。

情報を寄せてくれたケヴィン・ルイスに感謝。毎回、素晴らしい情報をありがとう。

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