スキデルスキー、イギリスおよび労働党の惨状を嘆く

ロバート・スキデルスキーが激おこプンプン丸である

労働党が保守党・自由民主党の連合政権をうまく攻撃出来ていないからだ。労働党の影の厚生大臣であるアンディ・バーナムは国民健康サービス (National Health Service) を争点にしたい構えだが、スキデルスキーは「そこじゃないだろ!」と。

The Prime Minister and Chancellor are keen to persuade us that austerity has been worth it. Unemployment has fallen for a second quarter running; there are the first signs of growth for two years. By concentrating on the elements of unfairness in the Coalition’s economic policy – the cuts to public services, tax cuts for the rich – Labour are missing the chance to attack Osborne’s austerity policy on its central front: its utter failure, after three years, to bring about the promised revival of the British economy.

連立政権は公的サービスの削減、富裕層への減税という不公平な経済政策を行って来たわけだが、ここにきてやっと失業率も低下し始めた。首相と大蔵大臣は緊縮財政は意味があったと誇らしげだ。しかし、労働党が攻めるべきはまさにこの点であり、本来得られたであろう経済の回復を逃したという真の失敗こそが争点なのだ、とスキデルスキーは言う。

連立政権が誕生してから5年。回復のスピードはかつてないほど遅く、この3年に至ってはほとんど横ばいできた。しかも成長に見えるものの殆どは労働人口の増加、それも移民の増加で説明がついてしまう。つまり、実際にはずっと停滞しているのだ。

大臣たちは多くの新しい雇用を生んでいると言う。彼らにしてみればイギリスの労働者は仕事があるのに働きたがらない怠け者だ、だから移民がその仕事を奪ってしまうのだ、というわけだ。ロンドンではたしかにそういう面もあるだろうが、地方に行けばそんな状況ではない。さらに、新しい雇用を生んでいると言うが、実際には公的部門の雇用の減少とのひきかえだ。結局のところ2008年と比較すれば経済は3.5%も小さくなっている。失業率もこの3年間8%で推移しているのだ。

Putting all this together, we can say that the economy is today slightly larger than it was in 2010 –though still 3.5% smaller than in 2008 – but with less output per person, and most people worse off. And, at almost 8%, unemployment has remained unchanged for three years.

連立政権は無い袖は振れないとばかりに緊縮の正当性を掲げるが、この緊縮策がイギリスの停滞の原因であり、労働党は攻撃すべきなのである。なぜなら、

This makes perfect sense when the nation’s resources are fully employed; but it is nonsense economics in the presence of massive unused resources.

(支出を収入にバランスさせるのは国家の資源(資本及び労働力)が完全雇用されているときなら意味がある。しかし、今日のような巨大な遊休資源が存在するときにそんな考えはナンセンス経済学)

だからだ。財政赤字を恐れて失業を放置しておくとは一体だれのための労働党なのか。労働党の党首、エド・ミリバンドはBBCの「財政赤字を増やすべきか」質問についてまともに答えられない。労働党の党首たるもの、こう答えるべきなのだ。

Labour would look after the economy, and let the deficit look after itself

(労働党は経済を立て直す。財政赤字はその後でいい。)

イギリスと日本は民間の抱える債務状況が異なるため、比較は慎重にすべきではあるが、スキデルスキーの次の言葉は参考にすべきであろう。

In practice, the effect of deficit reduction policies depends not on the actual cuts made, but on the effect of these cuts on the level of economic activity. Spending cuts will not reduce the deficit if it reduces the economy at the same time, because the economy is the source of the government’s revenues. Over the last two years, the government has taken about £100bn out of the economy in spending cuts and tax increases but there has been no reduction in the deficit as a percentage of GDP. This is because austerity has weakened the economy by just enough to nullify the fiscal ‘consolidation’.

(実際のところ、債務削減は実際の削減額ではなく、経済活動レベルの低下に依存する。経済が支出削減に呼応して収縮してしまえば、債務は削減できない。なぜなら経済全体が政府の歳入の源泉だからである。この2年間、政府は支出削減と増税によって1000億ポンドの債務削減を図ったが、対GDP比政府債務比率は減少していない。これは緊縮策が経済を弱体化させて、財政再建を無効化してしまったからなのである。)

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