●Scott Sumner, “Our grandparents hold us in utter contempt”(TheMoneyIllusion, March 10, 2017)
現代人(現代に生きている人々)が過去の世代を蔑(さげす)んでいることには、とりわけ、ドイツにおいてその風潮が強いことには、多くの人が気付いている。アメリカでも、祖父母世代は、蔑みの対象となっている。黒人や女性や同性愛者に対して偏見まみれの考えに囚われていたために。ところで、あまり気付かれていないことがある。祖父母世代も我々のことを蔑んでいるのだ。蔑むだけで終わらせずに、わざわざ警告を発してくれている先輩までいるのだ。その先輩の名は、ジョージ・オーウェル。オーウェルは、プライバシーを手放したらその先にどんな結果が待っているかを警告してくれているのだ。政府は、監視機能付きのテレビを通して君が自宅で何をしているかを監視しようとする。そうはさせてはならない。絶対に。・・・と警告してくれているのだ。 さすがはオーウェル・・・と言いたいところだが、よく理解できない?
21世紀に生きる哀れな現代人には理解できないのも無理はない。
水曜日にボストン大学でサイバーセキュリティがテーマのカンファレンスが開催されたが、FBI(連邦捜査局)のジェームズ・コミー長官はその席上で、「ここアメリカでは、絶対的なプライバシーなんてものはないのです」と語った。
内部告発サイト「ウィキリークス」がCIA(中央情報局)の内部文書を公開したのは、つい先日のこと。その文書によると、CIAは、情報を収集するために、いくつものハッキング技術を駆使してスマートフォンやスマートテレビを監視装置に変貌させているという。CIAのサイバーインテリジェンスセンターにはハッキングを専門とする特別な部署が存在し、iPhoneやAndroidを標的としたマルウェアの開発などにあたっているというのだ。
コミー長官は、「ウィキリークス」によってCIAの内部文書が公開された件には言及しなかったものの、絶対的なプライバシーなど存在しないと強調した。
NSA(米国家安全保障局)の嘱託職員だったエドワード・スノーデンによって、NSAがサイバースパイ行為に手を染めていることが暴露されたのは2013年。あれからデータを暗号化する試みが盛んになっているが、コミー長官はその事実に言及した流れで次のように語った。「誰もがプライバシーを大事に思っています。誰もがセキュリティ(安全)を大事に思っています。どちらか一方を得るために、もう一方を犠牲にするなんてことはあってはならないのです」。
コミー長官の発言をまとめると、以下のようになるわけだ。
- セキュリティのために、プライバシーを犠牲にするべきじゃない(「誰もがプライバシーを大事に思っています。誰もがセキュリティを大事に思っています。どちらか一方を得るために、もう一方を犠牲にするなんてことはあってはならないのです」)。
- セキュリティのためとあれば、時にプライバシーを犠牲にすべきだ(「ここアメリカでは、絶対的なプライバシーなんてものはないのです」)。
オーウェルも誇らしく思ってることだろうね [1] 訳注1;「二重思考の例がここに」ということが言いたいのだと思われる。。