タイラー・コーエン「人工子宮って政治的に左っぽい？右っぽい？」（2022年1月20日）

[Tyler Cowen, “Are artificial wombs a left-wing or right-wing proposal?” Marginal Revolution, January 20, 2022]

〔※訳者の補足: イーロン・マスクが人口減少について発言したツイートを発端に，「人工子宮が実現したら子供をつくりやすくなる」「男女の負担の差がなくなる」etc. のネタがひとしきり盛り上がっていた流れでの文章です〕

一方では，人工子宮は出生主義寄りだから，右っぽい．

他方で，人工子宮は（うわべだけは？）フェミニストっぽい．つまり女性の負担を軽減するわけだからね．その点で，左っぽい．

それでいて，人工子宮は「家族を平等に」しようとしてるとも解釈できる．その点では左っぽいし，それどころか共産主義的でもある．

他にも読み方はある．人工子宮は「企業ベビー」のためとも読める．そう考えると，今度は右寄りに振りもどされる．

さらにさらに別の見方をすると，人工子宮が実現するとほんきで思ってる人なんていない．すくなくとも，すぐにできると思ってる人はいない．すると，いまも世界で人工子宮がおくるメッセージは，これだ――「女性はそれほど重要じゃないし，いつか機械で置き換えられうるぞ．」 もしかすると，左翼も右翼もそんなメッセージは好まないかもしれない（なにか他の理由がなければ）．でも，ほんのりと，こんな含みもある．「いつの日か，男女での負担のちがいが消え去る．そうなったら，キミら左翼フェミニストは泣き言を言うのをやめる必要があるよ．」

すると，これでちょっぴり右よりに動くことになる．

はてさて，人工子宮ネタは左右のどっち寄りなんだろうね？