●Tyler Cowen, “German leberkas meatloaf and sweet sausages with mustard arbitrage”(Marginal Revolution, July 7, 2014)
ミュンヘン空港にあるルフトハンザドイツ航空のラウンジでは、飛行機への搭乗を待つビジネスクラスの乗客に無料でごちそうを振る舞うサービスが提供されている。そのサービスを利用して、1年間に35回もただ飯にありついた男がいる。それも、ただの一度も飛行機に搭乗することなく。
その男は、1年間有効のチューリッヒ行きの片道チケットを購入。チェックイン後にラウンジで好きなだけ飲み食いすると、予約を変更(その日の搭乗をキャンセル)。1年間にわたって、何度も同様のことを繰り返した。ルフトハンザドイツ航空は、チケットの有効期限が過ぎると、新たにチケットを買い替えることを条件に、チケット代を払い戻している。
無料で食事を提供するラウンジのサービスは、あくまでも飛行機への搭乗を前提としている。ミュンヘン地方裁判所はそのように判断し、男に飲み食いの代金として、1980ユーロ(2705ドル;およそ30万円)を支払うよう命じた。1980ユーロというと、チケットの代金(744.46ユーロ)の倍以上の金額であり、食事1回あたりに換算すると、およそ55ユーロのお支払いという計算になる。チケットの有効期限が切れるまでは我慢して見逃していたルフトハンザドイツ航空側も、男が、再びただ飯にありつこうとして、(有効期限が切れた後に)新たにチケットを買い替えたところで、裁判所に訴えたのであった。
ビジネスクラスの乗客には、プレミアラウンジや会議室、シャワーなどを自由に利用できる特典が用意されているのが一般的だが、予定が変わった場合には、チケットの予約の変更にも柔軟に応じてもらえるケースが多い。ミュンヘン空港にあるルフトハンザドイツ航空の(ビジネスクラスの乗客だけが利用できる)ラウンジでは、(バイエルン産の)レーベンブロイ(生ビール)に加えて、郷土料理のレバーケーゼ(ドイツ風ミートローフ)やスイートマスタード付きのソーセージなどが無料で振る舞われている。
全文はこちら。情報を寄せてくれたHugo Lindgrenに感謝。ところで、「レバーケーゼ」の綴りって色々あるんだね。
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●Tyler Cowen, “China arbitrage story of the day German flight attendants arrested in quantitative easing scheme”(Marginal Revolution, April 6, 2011)
ルフトハンザドイツ航空に勤務する6名の従業員(そのうちの4名は、キャビンアテンダント)が逮捕された。一旦廃棄された大量のユーロ硬貨(1ユーロ硬貨と2ユーロ硬貨)を、中国からドイツに持ち込んだことがその理由。4年の間に、重量にして63,000ポンド(およそ2万8576キログラム)を超えるユーロ硬貨が持ち運ばれたという。
ユーロ硬貨は、金色と銀色の二色の部分から構成されている(1ユーロ硬貨の場合は、外側の環状部分が金色、内側が銀色)。古くなったユーロ硬貨が廃棄される時には、環状部分と内側とが切り離された上で、中国に送られる。中国で溶かされて鉄屑となるわけだ。
そのまま溶かしてしまうんじゃなくて、環状部分と内側をもう一度くっつけよう。そして、元通りになったユーロ硬貨をドイツに持ち込もうじゃないか。中国人の一味がそのような悪巧みを思い付いた。元通りになったユーロ硬貨の「運び屋」に選ばれたのが、4名のキャビンアテンダント。・・・(略)・・・4名のキャビンアテンダントが(ドイツの中央銀行である)ブンデスバンク(傷んだ硬貨の両替に応じてくれる、欧州で唯一の中央銀行)を訪れて、「元通りになったユーロ硬貨」を「本物のお金」(ユーロ紙幣)と両替してもらうという算段なわけだ。
全文はこちらだが、笑ってしまうような事件だ。情報を寄せてくれたのは、もちろんこの人。「空の天才」ことゲイリー・レフ(Gary Leff)だ。ニューヨーク・タイムズ紙も本件を取り上げており、「裁定取引」の実態を詳しく報じている。中国の安い労働力のおかげで、ユーロ硬貨を元通りにするコストも低く抑えられたらしい。