●Diane Coyle, “What should the well-educated student read?”(The Enlightened Economist, January 31, 2016)
ニュースサイトのQuartz(クオーツ)に掲載されているこちらの記事に興味をひかれた。米国の一流大学(計10大学)のシラバス(講義概要)でどんな本が指定図書に選定されているかを専攻分野を問わずに集計したデータベースの話題が取り上げられているが、指定図書に選ばれている回数が多い順に並べると、プラトン(の『国家』)、ホッブズ(の『リヴァイアサン』)、マキャヴェッリ(の『君主論』)が上位3位とのこと。実に興味深い。
件の記事に触発されて、「ある問い」をめぐってああでもないこうでもないと頭を捻(ひね)っているのだが、無人島に持っていきたいレコードを8枚選ぶ(あるいは、無人島に持っていくべき食品を10品選ぶ)よりもずっと難易度が高いことに気付かされた。「大学進学を志(こころざ)している若者に幅広い教養を身に付けてもらうのに格好の推薦図書を特定の分野に縛られずに10冊選ぶとしたら、どの本を選べばいいだろう?」という問いになかなか答えが出せずにいるのだ。大学で本格的に社会科学を学ぶ前に、脳の中にできるだけ広い後背地を築いて準備を整えておけるように夏休み期間中に読んでおいてもらいたい本を10冊選べと問われたら、どう答えたらいいだろう?
個人的な好みだったり、育った文化的な背景だったりが反映されざるを得ないだろうが、とりあえず私なりに大きく3つのカテゴリーに分けて選んでみた結果を以下にまとめてみた。ヨーロッパにいくらか偏重しているところがあるだろうと思う。著者が女性の本をもう少し盛り込みたかったというのが正直なところだが、致し方ない。
言わずもがなだが、他に何かお薦めの本があればコメント欄で指摘していただけたらと思う。
*この世界がどうなっているか――世界の実相――を理解するために読んでおくべき本
- 『On the Origin of Species』(邦訳『種の起源』)- チャールズ・ダーウィン(Charles Darwin)
- 『An Enquiry Concerning Human Understanding』(邦訳『人間知性研究』)- デイヴィッド・ヒューム(David Hume)
- 『Thinking, Fast and Slow』(邦訳『ファスト&スロー』)- ダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)
- 『Postwar:A History of Europe since 1945』(邦訳『ヨーロッパ戦後史』)- トニー・ジャット(Tony Judt)
*この世界がどうあるべきか(どうあるべきでないか)――世界のあるべきかたち――を考えるために読んでおくべき本
- 『The Idea of Justice』(邦訳『正義のアイデア』)- アマルティア・セン(Amartya Sen)
- 『The Second Sex』(邦訳『第二の性』)- シモーヌ・ド・ボーヴォワール(Simone de Beauvoir)
- 『L’Etranger』(邦訳『異邦人』)- アルベール・カミュ(Albert Camus)
*この世界をより良くするヒントを学ぶために読んでおくべき本
- 『Seeing Like A State』(未訳)- ジェームズ・C・スコット(James Scott)
- 『Reinventing the Bazaar』(邦訳『市場を創る』)- ジョン・マクミラン(John McMillan) /あるいは、アルヴィン・ロス(Alvin Roth)の『Who Gets What-And Why』(邦訳『Who Gets What(フー・ゲッツ・ホワット)――マッチメイキングとマーケットデザインの新しい経済学』)
- 『Cities and the Wealth of Nations』(邦訳『発展する地域 衰退する地域』)- ジェイン・ジェイコブズ(Jane Jacobs)