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テイヴス&ヴェジーナ「人民の敵による長期的発展」(2021年9月23日)

Gerhard Toews, Pierre-Louis Vézina “Enemies of the peopleVOXEU, September 23, 2021

「人民の敵」とは、教育を受けたエリートであるというだけの理由でソビエト体制の脅威になるとみなされた数百万人の芸術家、エンジニア、管理職、教授たちだった。数百万人の非政治犯とともに、彼らはグラーグ、すなわちソヴィエト全土にわたる労働収容所制度へと強制的に移住させられた。本稿では、この暗い移住エピソードによる長期的な影響を検討する。これにより、人民の敵が収容者中に占める割合が高かった収容所ほど、今日においてその周辺地域が繁栄していることを企業の賃金水準や利潤、人口当たりの夜間光量から捕捉した。

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スコット・サムナー「中国のCPTPP加盟申請をチャンスとすべきだ」(2021年9月19日)

Scott Sumner “Treat CPTPP as an opportunity TheMoneyIllusion, September 19, 2021

以下のニュースが目を引いた。

かつて中国を孤立させてこの地域におけるアメリカの優位を強化する手段としてアメリカが推し進めたアジア太平洋貿易協定に対し、中国が加盟を申請しました。

9月16日遅くに中国政府が発した声明によれば、中国は環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定という正式名称で知られるこの協定に参加するための公式の加盟申請書を提出しました。

これは素晴らしいニュースだ。中国がCPTPPの全てのルールを遵守するなら(現時点ではそうではない)CPTPPに歓迎されるべきだ。いかなるCPTPP加盟国も、いずれの加盟国におけるいかなる類の「自由な言動」に対し、他の加盟国に経済制裁を課すことはできないといった規定も設けるべきだ。今日、中国は他国における気に入らない言動に対して報復を行っている。中国はこうした条件の下で加盟をしたいのなら、いれてやればいい。我々は中国のナショナリズムを抑え、ならず者国家でなくするような協定であればなんであれ積極的になるべきだ。

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アレックス・タバロック「有機農業による経済危機」(2021年9月7日)

Alex Tabarrok “Organic Disaster Marginal Revolution, September 7, 2021

スリランカの大統領は、有機農業100%を達成しようと今年に入って突如として化学肥料を禁止した。この禁止によって生産量の減少と価格の急騰が起こり、観光業の減少と新型コロナ感染拡大とも相まって経済危機が発生している。

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タイラー・コーエン「資本注入して延命させるとしたら?」(2021年8月31日)

Tyler Cowen “The capital life extension queryMarginal Revolution, August 31, 2021

アルジャン・ナラヤンのコメントより:

このブログの読者とタイラーの記事1 の別バージョンについて考えてたんだけど、あまりにも早く資本を使い果たしてしまった人や団体に(彼らがその生涯で備えた資本と)同じだけの額の資本をさらに与える力があったとしたら、誰を選ぶ?

反事実的な想定をしてみると分かりやすいと思う。イーロン・マスクは2008年にほとんどのお金を使い果たして、ダイムラーによって救済された。これがなければいくつかの面では今よりもずっと悪いことになっていただろう(リチウムイオンの生産だけでなく、全ての自動車会社が輸送の電力化問題にこれだけ切迫感をもって取り組むこともなかった)。時をさかのぼって同様に救済すべきは誰だろう?

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  1. 訳注;若くして死んだ芸術家を延命させるとしたら、誰が一番生産性の観点から適切かという趣旨の記事 []

マーク・タイラー「19世紀のイギリス貴族とアメリカ成金の同類婚」

Mark Taylor “The Downton Abbey effect: British aristocratic matches with American business heiresses in the late 19th centuryVOXEU,  September 5,  2021

19世紀後半におけるイギリスの農産物価格の下落は、貴族に加え、土地を所有する「平民」の収入もまた縮小させた。良縁の結婚によって資金を得るという伝統を続けるため、イギリス貴族は大西洋の対岸であるアメリカの、多額の持参金はあるがアメリカ基準においてすら全く名門ではない女性相続人に目を向けた。本稿では、アメリカの大実業家の娘たちをイギリス貴族との結婚に導いた社会・経済的な力について検討する。


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バルテルミ&ビニョン「今の世にルーズベルトがいたならば」(2020年5月12日)

Jean Barthélemy et Vincent Bignon “Qu’aurait fait Roosevelt face à la crise économique du Covid19 ?Bloc-note eco, Banque de France, le 12/05/2020

ルーズベルト大統領はアメリカを大恐慌から抜け出させたことで歴史に名を残している。そのために彼はアメリカ国民の不安に応えるためにコミュニケーションを行い、経済政策を修正した。その目的はといえば、悲観主義が景気後退を増幅させるという負の螺旋を断ち切ることだった。目下の危機と当時の危機には違いはあるにせよ、本記事ではルーズベルトの戦略について学んでみたい。

フランクリン D. ルーズベルト、1934年の「炉辺談話」にて
(出典:Harris & Ewing、アメリカ議会図書館)

ルーズベルトが大統領になった1933年3月4日は、銀行パニックの波が広がり始めてから1か月経ったところだった。アメリカは1929年以降不況のさなかにあり、銀行制度は度重なる取り付け騒ぎを被っていた。失業率は25%にも達した(グラフ1)。1929年10月から連鎖的な倒産が続き、金融機能は麻痺していた。物価は年間10%以上も下落し、それは雇用や収入も同様で、これにより各主体の収入に占める債務返済の重みが増すこととなった。

ルーズベルトはこうした傾向を反転させた。回復は急速かつ力強かった。インフレ期待も十分に織り込まれた。失業率は3分の1となり、インフレ率はプラスへと戻った。1933年以前にはあらゆる政策が事態の解決に失敗したのに、ルーズベルトの政策は数週間で成功したのだ。

どうしてこんなことができたんだろうか。ルーズベルトは何を変えたんだろうか。経済危機への対処について何を教訓とすべきだろうか。

グラフ1:1929年から1937年にかけてのアメリカの物価と失業率の変化
(出典:全米経済研究所(NBER))

景気後退から大恐慌へ

経済学では、悲観的な予想が自律継続的になると景気後退が不況へと変わるとされている。そのメカニズムはケインズの登場以降よく知られている。すなわち、各主体が物価の下落を予想し、したがって支出を遅らせることが合理的であると考え、それによって総需要の減少が継続され、さらに物価が下がるというわけだ。

不況は公的権力の不作為ではなく、経済政策の誤りと将来の公共政策に関する不確実性によってもたらされることが歴史によって示されている。1932年に至るまで、激しい議論が行われ、対応策について専門家の意見も分かれていた。フーバー大統領は、カルテル化と生産者間の示し合わせを促す法律によって物価の下落に対抗した。しかし、中央銀行についてミルトン・フリードマンとアンナ・シュワルツが示したのと同じように、各人は自身の信念の虜囚となっていた。例えば、真正手形主義とドルの金との兌換性の護持の必要性についての認識に基づき、Fedは1931年秋に政策金利を引き上げた。この引き締めによって新たな倒産の連鎖が引き起こされ、それがマネーサプライと銀行の信用供与の減少をもたらした。

ケインズとフリードマンによるこの二つの遺産は、ルーズベルトが避けた3つの落とし穴を示している。それは(1)景気後退の第一要因である銀行部門の堅実性に対する疑念、(2)不況の自律継続的な性質、(3)将来の経済政策に関する不確実性だ。

ルーズベルトの大統領就任からの最初の数か月:コミュニケーションとポリシーミックスの方針転換

ルーズベルトは銀行の堅実性を保証するための具体的かつ信頼性ある施策を提案するとともに、直接コミュニケーションを採用し、ポリシーミックスの方針転換を行った。

銀行パニックを止めるため、ルーズベルトは迅速に動いた。3月6日、彼は4日間の銀行閉鎖を命じた。議会は3月9日に段階的な再開に関する規則を定めた法案の投票を行った。この法律により、銀行のバランスシートにある優良資産と同額まで中央銀行が資金の供与を行うことが認められた。

ルーズベルト大統領は、定期的なラジオ演説「炉辺談話」を行い、決定事項の詳細を具体的に話すとともに、採用した方針のそれぞれについて説明した。1933年3月12日に行われた最初の演説において、銀行の閉鎖を決定した理由を次のように正当化した。「我々は更なる銀行倒産の感染拡大を望まない。」 彼は続けて銀行がいつどのように段階的に再開するかを説明した。彼は他の演説では財政政策と金融政策について語っている。

この直接コミュニケーション政策は銀行システムの状態に関する懸念を鎮めた。その後このコミュニケーションによって、不況を脱し、インフレ率をプラス域に戻すための経済政策のフォーワードガイダンスも提示された。その結果はすぐさま現れた。Jalil et Rua (2016)は、このコミュニケーションがインフレ率に関する世間の議論(グラフ2)を喚起したことを示している。

グラフ2:アメリカ主要紙におけるデフレーション・インフレーションへの言及
(出典:Jalil et Rua (2016), Inflation expectations and recovery in spring 1933)

グラフ注記:アメリカ主要紙の記事タイトルへのインフレーションとデフレーションという単語の出現数(左軸)と記事本文での出現数(右軸)。灰色の部分は全米経済研究所(NBER)の定義による景気後退期を示している。

政府は財政・金融政策をあるひとつの目的の下に置いた。その目的とは経済回復だ。Jacobson, Leeper et Preston (2019)は、このポリシーミックスを財源的裏付けのない財政拡張と呼んでいる。その特徴は次のとおり。

  1. 金融政策面では、インフレ率を上昇させるための緩和方針
    • インフレ予想の下落に対し、アメリカはいくつかの国の例にしたがって金に対するドルの価値を40%引下げ、輸入製品の価格を引き上げた。
    • 銀行の倒産と預金の減少によって引き起こされたマネーサプライの収縮への対処のため、1933年5月、議会はFedに対し、従来の手段である民間債務の現先取引に加えて公的債務を購入するよう命じた。
  2. 財政政策面では、ルーズベルトは経済が回復するまでは公的支出の増加は債務で賄われると発表し、これは財政的「フォーワードガイダンス」にも類するものだ。ルーズベルトはこの財政拡大を状況の異例さで正当化し、「民主主義の生存をかけた戦いだ」と述べた。

Jacobson, Leeper et Preston (2019)は、このポリシーミックスによって名目資産効果が生み出されたとしている。公的債務が将来の徴税よりも急速に増加することで、民間部門の(割引)名目資産を押し上げた。この資産効果が総需要を増加させ、不況の自律継続性を打破したのだ。さらには、財政再建による将来の景気収縮が予想されないことで、財政乗数も上昇した。これらが可能となったのは、1933年のドルの減価によって金本位制による財政収縮が一時的に緩和したためだ。

危機を脱するための2つの教訓

もちろんながら比較は何の証明にもならない。大恐慌と現在の景気後退ではその主要因の性質が大きく異なり、片やアメリカの銀行、片や目下の感染拡大だ。制度も同様ではないが、歴史から学ぶところはある。ルーズベルトによる危機への対処からは次の2つのことが分かる。

  1. (1)実践的かつ継続的な実例をもって不況の主要因に対して行動する能力と意思があると安心させ、(2)将来の政策に関する不確実性を減少させる、信頼性のあるコミュニケーションによって不況は回避できる。
  2. 特定の状況下では、名目資産効果を生み出すため、経済回復には継続的な成長が戻るまで財政再建を延期することが求められる。

ポール・ローマー「広告収入型サービスはもうやめよう:デジタル広告課税のススメ」(2021年5月17日)

Paul Romer “Taxing Digital Advertising” May 17, 2021

 政治態度の左右を問わず、人々はGoogleやFacebookが開拓したデジタル広告モデルが民主主義に対してますます大きな脅威を及ぼしていることに気づいてきている。こうした企業は、世界の民主主義国家の市民について、スタージが東ドイツの人々について知っていたこと以上のことを知っている。こうした企業は、自身が把握していることについて警察国家の強制力に頼ることなく利用できる。彼らは人々が何を見るかを調整し、無数のナッジによって支配を及ぼすことができるのだ。

 アメリカでは、Facebookはデジタル政治広告への支出全体の59%を支配しており、18%はグーグルが支配していることが最近の推計で示されている。2019年夏に行われた公開対話において、FacebookのCEOで同社所有権の過半数を握るマーク・ザッカーバーグは、Facebookは政治的な議論に関する国際的な裁定者の唯一の候補だと主張した。Facebookは「選挙の公正性」のために「世界中の情報機関や選挙委員会と協力して」対処することができる唯一の機関である、なぜならFacebookは「今までにないコンテンツシステム」を構築し、それは「多くの政府がもっているものよりも洗練されている」とのことだ。

 アメリカ国外の政治力学へのFacebookの侵入を私がはじめて知ったのは、チリでの夕食会の場でのことだった。議論の中で、チリの主要政党のひとつの幹部は、最近の選挙での成功はFacebookのターゲット化した政治広告の使用のおかげだとしていた。一人の人間によって支配された外国企業がチリの選挙についてそのような大きな影響力を及ぼしうるというのは懸念ではないかと私は尋ねた。この質問は気に留められることすらなかったように見えた。彼らはFacebookを自分たちが優先的なつながりをもつ武器商人であるかのように考えているように見えた。彼らはFacebookが開発した新たな政治ツールについて、他党よりもはるかに進んだ理解をしていることに満足していた。Facebookがこうした武器を売らないとなれば、彼らはそれを喜ばないように見えた。Facebookは常に引き金に指をかけたデジタル傭兵なのだ。

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ブランコ・ミラノヴィッチ「『資本主義だけ残った』 いくつかのマルクス主義的論点:ロマリック・ゴダンの書評への返答」(2020年10月4日)

Branko Milanovic “On several Marxist themes in “Capitalism, Alone”: My reply to Romaric Godin’s reviewglobalinequality, October 4, 2020

 ロマリック・ゴダン1 が “Capitalism alone” 仏語版(邦訳『資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来』〔西川美樹訳、みすず書房、2021年〕)についてとても刺激的な書評を最近書いてくれた。「資本主義に関するブランコ・ミラノビッチの不完全な考察」といういくぶん挑発的なタイトルだ。以下では、考察が不完全にとどまらざるをえない場合がある理由に加え、私の考えを更に少しだけ明確化し、可能であれば議論をさらに前に進めるために数点はっきりとさせておきたい。

書評の最初の部分にある「資本主義だけ残った」の主要点についてのゴダンの要約は素晴らしい出来で全く異論はないが、その例外として共産主義に関する私の定義について明確化したい。その上で、ロマリック・ゴダンの非常に具体的な4つの批判をおさらいした上で、それらへの回答を試みることとする。

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  1. 訳注;経済分野を主とする仏ジャーナリスト。Mediapart所属。元La Tribune紙副編集長。 []

アセモグル他「偽情報:戦略的シェア、類友、内生的エコーチャンバー」(2021年6月30日)

Daron Acemoğlu, Asuman Ozdaglar, James Siderius “Misinformation: Strategic sharing, homophily, and endogenous echo chambersVOXEU, 30 June 2021

偽情報(misinformation)はソーシャルメディアプラットフォームで急速に広がる。本稿では、オンラインにおけるコンテンツシェアのモデルを用い、コンテンツへのエンゲージメントを最大化したいと考えるソーシャルメディアプラットフォームは極端な記事を最も極端な利用者たちに広めることを示す。「フィルターバブル」は極端な考えを持つ人たち以外にそうしたコンテンツが広がることを妨げ、偽情報がぐるぐると流れるエコーチャンバーを作り出す。検閲とそれによるエンゲージメントの喪失の脅威によってプラットフォームが自らファクトチェックを行うよう圧力をかけることができる一方、彼らのアルゴリズムに対する規制もフィルターバブルによる効果を軽減することができる。

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ホアン・コスタ=フォント「ワクチン接種の社会的価値とインセンティブ」(2021年6月29日)

Joan Costa-Font “Social value and incentives for vaccine uptakeVOXEU, 29 June 2021

新型コロナワクチンは、個人の感染防御効果を越える大きな正の波及効果をもたらし、そのためその価値は費用を大きく上回る。しかし、こうした便益は十分な人数が2回接種を受けた場合にのみ実現するものであり、したがって政策決定者はワクチン接種忌避を緩和するための適切なインセンティブを確保する必要がある。本稿では、考えられる様々なインセンティブを検討したうえで、ワクチンを受けることによる社会からの敬意についてのナラティブを生み出すことが、広範なワクチン接種を確保するうえでの最も効果的な方法となりうると主張する。

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