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ポール・ローマー「広告収入型サービスはもうやめよう:デジタル広告課税のススメ」(2021年5月17日)

Paul Romer “Taxing Digital Advertising” May 17, 2021

 政治態度の左右を問わず、人々はGoogleやFacebookが開拓したデジタル広告モデルが民主主義に対してますます大きな脅威を及ぼしていることに気づいてきている。こうした企業は、世界の民主主義国家の市民について、スタージが東ドイツの人々について知っていたこと以上のことを知っている。こうした企業は、自身が把握していることについて警察国家の強制力に頼ることなく利用できる。彼らは人々が何を見るかを調整し、無数のナッジによって支配を及ぼすことができるのだ。

 アメリカでは、Facebookはデジタル政治広告への支出全体の59%を支配しており、18%はグーグルが支配していることが最近の推計で示されている。2019年夏に行われた公開対話において、FacebookのCEOで同社所有権の過半数を握るマーク・ザッカーバーグは、Facebookは政治的な議論に関する国際的な裁定者の唯一の候補だと主張した。Facebookは「選挙の公正性」のために「世界中の情報機関や選挙委員会と協力して」対処することができる唯一の機関である、なぜならFacebookは「今までにないコンテンツシステム」を構築し、それは「多くの政府がもっているものよりも洗練されている」とのことだ。

 アメリカ国外の政治力学へのFacebookの侵入を私がはじめて知ったのは、チリでの夕食会の場でのことだった。議論の中で、チリの主要政党のひとつの幹部は、最近の選挙での成功はFacebookのターゲット化した政治広告の使用のおかげだとしていた。一人の人間によって支配された外国企業がチリの選挙についてそのような大きな影響力を及ぼしうるというのは懸念ではないかと私は尋ねた。この質問は気に留められることすらなかったように見えた。彼らはFacebookを自分たちが優先的なつながりをもつ武器商人であるかのように考えているように見えた。彼らはFacebookが開発した新たな政治ツールについて、他党よりもはるかに進んだ理解をしていることに満足していた。Facebookがこうした武器を売らないとなれば、彼らはそれを喜ばないように見えた。Facebookは常に引き金に指をかけたデジタル傭兵なのだ。

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ブランコ・ミラノヴィッチ「『資本主義だけ残った』 いくつかのマルクス主義的論点:ロマリック・ゴダンの書評への返答」(2020年10月4日)

Branko Milanovic “On several Marxist themes in “Capitalism, Alone”: My reply to Romaric Godin’s reviewglobalinequality, October 4, 2020

 ロマリック・ゴダン1 が “Capitalism alone” 仏語版(邦訳『資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来』〔西川美樹訳、みすず書房、2021年〕)についてとても刺激的な書評を最近書いてくれた。「資本主義に関するブランコ・ミラノビッチの不完全な考察」といういくぶん挑発的なタイトルだ。以下では、考察が不完全にとどまらざるをえない場合がある理由に加え、私の考えを更に少しだけ明確化し、可能であれば議論をさらに前に進めるために数点はっきりとさせておきたい。

書評の最初の部分にある「資本主義だけ残った」の主要点についてのゴダンの要約は素晴らしい出来で全く異論はないが、その例外として共産主義に関する私の定義について明確化したい。その上で、ロマリック・ゴダンの非常に具体的な4つの批判をおさらいした上で、それらへの回答を試みることとする。

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  1. 訳注;経済分野を主とする仏ジャーナリスト。Mediapart所属。元La Tribune紙副編集長。 []

アセモグル他「偽情報:戦略的シェア、類友、内生的エコーチャンバー」(2021年6月30日)

Daron Acemoğlu, Asuman Ozdaglar, James Siderius “Misinformation: Strategic sharing, homophily, and endogenous echo chambersVOXEU, 30 June 2021

偽情報(misinformation)はソーシャルメディアプラットフォームで急速に広がる。本稿では、オンラインにおけるコンテンツシェアのモデルを用い、コンテンツへのエンゲージメントを最大化したいと考えるソーシャルメディアプラットフォームは極端な記事を最も極端な利用者たちに広めることを示す。「フィルターバブル」は極端な考えを持つ人たち以外にそうしたコンテンツが広がることを妨げ、偽情報がぐるぐると流れるエコーチャンバーを作り出す。検閲とそれによるエンゲージメントの喪失の脅威によってプラットフォームが自らファクトチェックを行うよう圧力をかけることができる一方、彼らのアルゴリズムに対する規制もフィルターバブルによる効果を軽減することができる。

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ホアン・コスタ=フォント「ワクチン接種の社会的価値とインセンティブ」(2021年6月29日)

Joan Costa-Font “Social value and incentives for vaccine uptakeVOXEU, 29 June 2021

新型コロナワクチンは、個人の感染防御効果を越える大きな正の波及効果をもたらし、そのためその価値は費用を大きく上回る。しかし、こうした便益は十分な人数が2回接種を受けた場合にのみ実現するものであり、したがって政策決定者はワクチン接種忌避を緩和するための適切なインセンティブを確保する必要がある。本稿では、考えられる様々なインセンティブを検討したうえで、ワクチンを受けることによる社会からの敬意についてのナラティブを生み出すことが、広範なワクチン接種を確保するうえでの最も効果的な方法となりうると主張する。

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タイラー・コーエン「性風俗施設が性犯罪を抑止する」(2021年6月27日)

Tyler Cowen “The Effect of Adult Entertainment Establishments on Sex Crime Marginal Revolution, June 27, 2021

本論文では、性風俗施設の存在が性的虐待やレイプを含む性犯罪事案にどのように影響するかを検討する。私たちはニューヨーク市における自己申告でない性犯罪報告1 の正確な場所と、性風俗施設のオープン日及び正確な位置を組み合わせた毎日及び毎週単位の高頻度なパネルを構築した。これら性風俗ビジネスがそのオープンから1週間で各警察署管区あたり性犯罪を13%減少させ、それ以外の犯罪には何ら効果がないことを見出した。この結果は、主に潜在的な性加害者が犯罪を犯す代わりにこれらの施設に通うことでこの減少がもたらされることを示唆している。私たちは、警官の増加、路上売春婦の減少、性風俗ビジネスがオープンした地区における潜在的な被害者のありうべき減少といった、こうした結果をもたらしうるその他のメカニズムの可能性も排除している。この効果は他の性犯罪指標を用いた場合でも堅牢である。

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  1. 訳注:被害者の申立によるものではなく、警察が確認したもの。原論文ではこれによって性犯罪に関する自己申告バイアスを最小化できるとしている。 []

タイラー・コーエン「なぜブサイクにはつらく当たっても許されるのか」(2021年6月25日)

Tyler Cowen”Why is it OK to be mean to the ugly?Marginal Revolution, June 25, 2021 

というのがニューヨークタイムズに載ったデヴィッド・ブルックスのコラムだ。以下はその抜粋。

常にというわけではないけれど、多くの場合において魅力的であることで最上の扱いを受けられる。研究によれば、魅力的な人はそうでない人より採用面接に呼ばれる可能性が高く、面接後に雇われる可能性が高く、昇進の可能性も高い。魅力的な人は、融資を受けられる可能性が高く、その融資に適用される利率がより低くなる可能性も高い。

ルッキズムによる差別的な効果はあらゆるところに見られる。魅力的な経済学者はランクの高い大学院課程で学ぶ可能性が高く、魅力的でない経済学者よりも論文が引用される頻度が多い。ある研究では、魅力的でない犯罪者がちょっとした軽犯罪を起こした場合、その罰金は魅力的な犯罪者の場合と比べて約4倍になるという。

この分野の研究の第一人者であるダニエル・ハマーメシュは、見た目の良さで下位7分の1に位置するアメリカの労働者は、上位3分の1にいる労働者よりも年間の収入が約10~15%低いことを発見した。魅力的でない人は、生涯収入で25万ドル近く損をするのだ。

こうしたバイアスの総合的な効果は莫大なものだ。2004年のある研究では、民族を理由としたものよりも、見た目を理由とした差別を報告した人の方が多いことが分かった

American Journal of Sociologyの最新号に掲載された研究において、エリス・P・モンクJr、マイケル・H・エスポジト、ヘドウィグ・リーは、魅力的と見なされた人とそうでない人の間の収入格差は、成人の白人と黒人の収入格差に匹敵ないしは上回ることを報告している。彼らは、この魅力性曲線が黒人女性に特に大きな不利益をもたらすことを見出している。社会で支配的な美の基準に合致した人は収入に上乗せを受け、そうでない人は合致した人の1ドルに対して平均して63セントしか稼げないのだ。

是非全文を読んでほしい。

タイラー・コーエン「暗号通貨界隈の人たちが勘違いしてること」(2021年6月21日)

Tyler Cowen “What crypto people get wrong” Marginal Revolution, June 21, 2021

というのがBloomberg掲載の僕の最新コラムのトピックだ。以下はその抜粋。

どちらかというと、暗号通貨はすごくまずい状況にある国、たとえばベネズエラなどの通貨に悪影響を及ぼす可能性の方が高い。不換通貨がなくなるということはないだろうから、長期的には暗号通貨はドルの潜在的な競争相手を圧迫し、実際にはドルの価値を高めることになるかもしれない。

もうひとつは、これは暗号通貨界隈ではたいてい見ないふりをされていることだけれど、暗号通貨の価格が永遠に上がり続けるということはないということだ。このことは、暗号通貨のシステムにマネーサプライに起因するデフレが組み込まれていたり、毎年暗号通貨の新しい有用な使い道が発見されるとしても変わらない。どこかの地点で市場は暗号通貨の価格に折り合いを見つけて、その情報を高い水準にあるこうした資産の価格に組み込むだろう。それ以降期待収益率は、こう言うのははばかられるけれども、ふつうのものになるだろう。

暗号通貨市場を芸術品市場と比べてみよう。芸術品市場は、長い間アンディ・ウォーホールの絵の潜在的価値を把握できなかった。何年にもわたって価格は大きく上がり続けた。でも今も市場の流動性は高いままだけれど、ウォーホールへの投資による期待価値はほかの有名な芸術作品への投資価値と比べて良くも悪くもない。

市場がまだ暗号通貨の完全な価値を把握できていないという見方は、まったくもって擁護しうるものだ(争いはあるが)。この状態は今後もある程度の間は続くかもしれないけれど、数十年続くようなものじゃない。

皮肉なのは、暗号通貨推しの人たちの主張の非常に多くが暗号通貨の特に金銭的な収益率の低さを示していることだ。暗号通貨が担保や流動性といった用途で有用であればあるほど、暗号通貨を保有したいという気持ちは高まり、そのために求める金銭的な収益率は低くなる。これは、現金を保有したいと思ったり、米国債が担保として使われることで米国債の価格が上がって期待収益率が下がるのとちょうど同じことだ。

今後、株式の年間の期待値上がり率が例えば5%から7%で、ビットコインのそれが1%とかっていう世界に到達したならば、それは暗号通貨の成功の証だ。より一般的に言えば、暗号通貨は誕生からこれまでとても変わった資産区分であったが、いつまでもとても変わった資産区分のようにふるまうことはないだろう。

ここも注目

サトシ(・ナカモト)やヴィタリック・ブテリンはすごいイノベーターというだけでなく、今の世で最も重要な貨幣経済学者二人なのだ。

おすすめなので全文を読んでみてほしい。

オーター他「家庭環境の悪さは女子より男子に響く」(2021年6月11日)

David Autor, David Figlio, Krzysztof Karbownik, Jeffrey Roth, Melanie Wasserman “Low-performing boys are particularly affected by family environmentVOXEU, 11 June 2021

初等学校においては、たとえば女子の方が男子よりも読解の成績が良い傾向にあったり、停学になるような問題行動を起こす可能性が低いなど、わずかなジェンダー格差が表れる。本稿では、アメリカのフロリダ州のデータを用い、こうしたわずかな格差がその後の学業成果においては、中等教育の修了や高等教育への進学・卒業といった大きなジェンダー格差へとなぜ変わるのかを検討する。幼少期の家族環境が男子に及ぼす影響は異なり、特に学校成績や出席率で下位に分布する男子ほどそれが顕著であることが分かった。

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タイラー・コーエン「収入も顔が決める」(2021年6月20日)

Tyler Cowen “The looks gap in earningsMarginal Revolution, June 20, 2021

(略)外見的な魅力の違いに応じた収入差の大きさは、各種要因をコントロールした後の純効果で、収入に関する黒人・白人間の人種格差に匹敵ないし上回り、アフリカ系アメリカ人においては黒人・白人間の人種格差及びジェンダー格差に匹敵もしくは上回る。

論文はの全文はこちら。ルッキズムに関する本ブログの過去記事はこれ1 とかこれがある。以下2点は心得ておきたい。


1. 多くの場合、ルッキズムに一番傾倒しているのは教育を受けた(そしてその多くは左巻きの)両岸のエリートで、服装や体形等々に関する内部倫理を通じてルッキズムを強いている。こういう人たちは、自分が競合する白人の利益集団よりも良い人間であると脅迫的なまでに信じているので(これがどれだけ明白か、彼らの無自覚のほどは驚きだ)、ルッキズムにみんなの注意が向くことを好まない。ルッキズムについて示されると、「うん。それも悪いことだね」とあしらって、それ以上話すことはないんだ。ルッキズムは今後も衰えることはなく、むしろほかの主義主張(イズム)が退潮することで強まることもありえる。

2. 誰かを雇うときや掘り出しものの才能を発掘しようとするなら、以上のことを頭に入れておくべきだ。

教えてくれたイケメンのケヴィン・ルイスに感謝。

  1. 訳注;和訳はこちら(optical_frog氏訳) []

アレックス・タバロック「イデオロギーを仕事に持ち込むのはやめよう」

Alex Tabarrok “Mission ProtocolMarginal Revolution, June 14, 2021

ビジネスは人間が協力するためのもっとも重要な方法だ。「哲学書簡」において、ヴォルテールはフランスの友人に対し、ビジネスに注力することを通じてどのようにしてイギリス人が宗教的寛容を達成したかを説明している。

ロンドン株式市場に行ってみるといい。そこはおおよその裁判所よりも立派な場所なのだが、あらゆる国からの代表が人類の団結のために集うのをみることができるだろう。ユダヤ教徒、イスラム教徒、キリスト教があたかも同じ信仰を持つかのように互いに取引を行い、不信心者と呼ばれるのは破産したもののみだ。そこは長老派が再洗礼派を信用し、国教徒がクエーカーの約束を受け入れるところだ。この平和的かつ自由な集会所を出ると、ある者はシナゴーグへ行き、それ以外は飲みに出かける。そのうちある者は父と子と聖霊の名において大きな桶で洗礼を受け、またある者は自身も理解していないヘブライ語の単語をいくつか呟きながら息子の割礼を行い、別のものは教会に行って帽子をかぶりながら典型を待つ。これら全員が満足しているのだ。

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