Paul Krugman, “Why Economists Worry About Population Growth,” Krugman & Co., May 30, 2014.
[“Demography and the Bicycle Effect,” May 19, 2014;”Cheese-eating Job Creators,” May 21, 2014.]
なんで経済学者は人口成長を気にかけるの?
by ポール・クルーグマン
経済学者アルヴィン・ハンセンが「長期停滞」(secular stagnation) の概念をはじめて提案したとき,彼は投資需要の低迷に人口増加の鈍化が果たす役割を強調した.
現代の議論は,この強調点をふたたび取り上げるようになっている:日本の労働人口減少は,あの国が抱えるいろんな問題の重要な源泉になっているように見える.また,ヨーロッパとアメリカで人口増加が鈍化しているのは,ぼくらも日本と同様の型にはまりつつあることを示す重要な指標だ.
でも,こうした論点を示すたびにいろんな人から質問をもらう.「どうして人口の減少はいいことだって考えないの? だってさ,人口が減るってことは,資源への負担が減るってことだし,環境に与える損害も減るってことでしょ.」
ここで認識しておくべき大事なことがある.「人口増加が鈍るのは,いいことになりうるし,そうなるべきだ――ただし,健全な政策としてまかり通ってるものは,この潜在的にはいい発展を大きな問題に変えてしまう見込みがあまりにも大きい」ってのが,それだ.なんでかって? 現状のゲームの規則では,ぼくらの経済には,「自転車」っぽい側面が色濃くあるからだ:十分にスピードを出して走ってないと,こけてしまいがちなんだよ.
これは,かなり直球の論証だ.おおむね完全雇用を達成するには,経済は十分な支出をしてその潜在力を使う必要がある.でも,支出の重要な要素である投資は,「加速効果」に影響を受ける:つまり,新規投資の需要を左右するのは経済の成長率であって,目下の産出水準じゃない.ということは,もし人口増加の鈍化によって成長が鈍れば,投資需要も減少する――そうなれば,経済は永続に近い不況に追い込まれてしまう.
さて,これへの対処はかんたんなはずだとは言える.十分に金利を下げてやれば,人口増加が鈍化してても投資需要を維持できる.問題は,必要な実質金利は安全な資産ではマイナスになってしまうかもしれないってこと.すると,十分に金利を下げられるのは,十分なインフレがあるときにかぎられるってことになる――で,そうしようとなると,今度は物価安定に対するイデオロギー的なコミットメントにぶつかるハメになる.
これは基本的には技術的な問題だ.ぼくらの現実よりマシな世界だったら,地球上でもっと人がまばらになるって便益を享受しながらこの問題に単純に対処してるはずだ.でも,この世界では,技術的問題はとてもつもない損害を引き起こす.なぜなら,技術的問題の性質について明瞭に考えようって意欲をもってる人なんて滅多にいないからだ.だからこそ,ぼくらは人口増加の鈍化を気にかけてるのよ.
© The New York Times News Service
クルーグマンのこの評論見ると日本の将来はかなり暗いんだろうなぁ
一応一人あたりのGDPは増加してる予測は多いけど