●Mark Thoma, ““Political Aspects of Full Employment””(Economist’s View, July 17, 2010)
「時は巡る」といったところか。メールで教えてもらったのだが、カレツキ(Michal Kalecki)の1943年の論文の一部を以下に引用しておこう。
“Political Aspects of Full Employment”(「完全雇用の政治的側面」) by Political Quarterly, 1943:
【IV節】3. ・・・(略)・・・不況(スランプ)下においては、大衆からの要求もあって(あるいは、そのような要求がない場合でさえも)、大量失業の発生を防ぐことを意図して、国債を財源とした公共投資(市中からの借り入れを通じた財政出動)が試みられることだろう。しかしながら、スランプが去ってブーム(好景気)が到来した後もなお、高水準の雇用を保とうとして公共投資が続けられる(そのために国債の発行が続けられる)ようであれば、産業界のリーダー(経営陣)たちの間から強い反対の声が上がることだろう。 [1] … Continue reading
・・・(中略)・・・
かような状況下では、大企業と金利生活者との間で強力な同盟関係が築かれる可能性があるし、「ブームが到来してもなお公共投資を続けるというのは、明らかに不健全だ」と公言して、彼ら(大企業と金利生活者)の後ろ盾となってくれるような経済学者も何人か出てくることだろう。公共投資の継続に抵抗する勢力(とりわけ、政府に対して強い影響力を持つ大企業)の圧力もあって、やがて政府は、十中八九の確率で、「財政赤字の削減」という伝統的な政策へと舵を切ることになるだろう。その結果として、再びスランプがやってくることだろう。・・・(略)・・・
このような政治的景気循環の発生は、単なる可能性の話にとどまるわけではない。1937~38年のアメリカで瓜二つの事態が起きているのだ。アメリカでは、1937年の下半期に入って、それまで続いていたブームが一気に冷え込むことになったが、その原因は、政府が財政赤字を急速に削減しようと試みたことに求められるのだ。・・・(略)・・・ [全文はこちら(pdf)]
References
↑1 | 訳注;この後に次のような文章が続く。「前にも指摘したように、完全雇用がいつまでも続くというのは、産業界のリーダーたちの好むところではない。というのも、完全雇用が当たり前の状況となると、労働者たちは〔強気の姿勢で賃上げや労働条件の改善を求めるなどして〕『手に負えなくなる』だろうし、『産業の統率者たち』(産業界のリーダー)の生きがいでもある『労働者に規律を教え込む』という機会が〔クビにするという脅しの効力が薄まるために〕失われることにもなるだろうからである。さらには、景気が上向くと、それに伴って物価も上昇することになるが、そうなる(インフレが生じる)と、大小の金利生活者は損を被ることになる。そのため、金利生活者たちは『ブームを煙たがる』ことだろう」。この直後に(中略)以下の文章(「かような状況下では大企業と金利生活者との間で強力な同盟関係が築かれる可能性があるし、~」)が続くことになる。 |
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