ラルス・クリステンセン 「ユーロ圏の救世主としてのFed」(2011年11月15日)

●Lars Christensen, “The Fed can save the euro”(The Market Monetarist, November 15, 2011)


デビッド・ベックワースがこちらの大変優れたエントリー〔拙訳はこちら〕で米国の名目GDPとユーロ圏の名目GDPとの間に見られる相関(つながり)を詳らかにしている。

ベックワースによると、ユーロ圏の名目GDP成長率は米国の名目GDP成長率の後追いをしているようだとのこと。そのことが一体何を意味しているかというと、仮にFedが米国の名目GDPを危機以前のトレンドに引き戻すべく重い腰を上げたとしたら、それに伴ってユーロ圏の名目GDPも同じく勢いづく可能性があるということになるのだ。

つまりはこういうことだ。「世界経済を牛耳るマネタリー・スーパーパワー」(pdf)たるFedが名目GDP水準目標(NGDPLT)の採用に踏み切ったとしたら、ECB(欧州中央銀行)もFedの真似をせざるを得なくなるということだ。ここで興味深い問題が持ち上がることになる。ECBが(Fedの後を追うようにして)名目GDP水準目標の採用に踏み切り、その結果として名目GDPが危機以前のトレンドに向けて回復を続けたとしたら、その過程で一時的にユーロ圏内のインフレ率が(ECBが目標として掲げている)2%を上回る可能性がある。そうなったらECBはどのような対応をとるだろうか? まずはじめにFedが、それからややあってECBがそれぞれ名目GDP水準目標の採用に踏み切ったとしたらはじめのうちはユーロ高ドル安が急激に進み、そのおかげでユーロ圏内のインフレ圧力もいくらか和らげられることになるではあろうが、それはそれとして探っておくべき問いはECBが名目GDPの回復が続いている最中に何らかの手を打つかどうかということだ。「我々が標的としているのは足許のインフレではなく将来のインフレ(今後のインフレの成り行き)だ」というのがECBの公式見解だが、そのことから何とも逆説的なシナリオが予想されることになる。ECBのお偉方の口から次のような言葉が吐かれる可能性があるのだ。「確かに足許(現状)のインフレ率は5%に達しています。しかしながら、現状のインフレ率にすぐさま影響を及ぼせるだけの力は我々にはありません。かといって、インフレ率は今後もこのまま高止まりしそうかというとそういうわけではなく、米国の名目GDPが危機以前のトレンドに肩を並べるまでに回復を遂げてそこで落ち着けば(そしてユーロ圏の名目GDPも危機以前のトレンドに肩を並べる水準で落ち着けば)それに伴ってユーロ圏内のインフレ率も2%に向けて徐々に沈静化するものと思われます。そういうわけですので今のところは金融政策を引き締める必要はないと判断されます」。

ECBは今のところ(2011年11月時点においては)新たな金融緩和策に踏み切ることに難色を示している。しかしながら、Fedが積極果敢な金融緩和策に打って出たとしたら、ECBもその後を追って金融緩和策の「輸入」に乗り出すことだろう。そうなればおそらくユーロ圏も救われることだろう。というわけで、Fedの議長さんにお願いするとしよう。欧州の民に救いの手を差し伸べてくれませんかのう?

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