Paul Krugman, “Don’t Raise Taxes Just Yet, Japan,” Krugman & Co., November 14, 2014.
[“Japan on the Brink,” The Conscience of a Liberal, November 4, 2014.]
とにかくいま増税しちゃだめよ,日本さん
by ポール・クルーグマン
現実の政策をめぐって1国をあげて論争になるとき――アメリカではそういう論争は起きていない.なにしろ,アメリカの右派は自分が「知ってる」ことがすべてで,証拠に目を向けることも間違いを認めることもないからだ――その意志決定は,中身の重要度を上回る意義をもつ.より広くその国が向かう方向をそうした政策が象徴しているからだ.
さて,日本では再度の消費増税計画がまさにそういう論争になっている.と言っても,消費増税そのものの重要度でみて,些細な意志決定だってわけじゃない.とても大きな問題なのは間違いない.ただ,消費増税は政策にとってのルビコン川のようなものになっているんだ.
たしかに,ぼくが尊敬する人たち,たとえば経済学者のアダム・ポーゼンや国際機関の当局者たちは,「安倍晋三首相は増税を通すべし」と考えている.
おもしろいことに,この論争で賛否どちらの立場にいる人たちも,「これは信用の問題だ」と考えている.ただ,どんな種類の信用がいま決定的に大事なのかってところで考えがちがってる.いま,日本はデフレの罠からの脱出に苦闘している.「物価は上がる,だから現金の上にあぐらをかくのは悪手だし,債務はそれほどの重荷じゃなくなるぞ」ってことを民間部門に信じさせることを,日本は切実に必要としてる.それと同時に,日本はとてつもない公債を抱えているし,人口動態もタチが悪い.
増税賛成派はこんな風に心配してる:「日本が増税しなかった場合に財政の信用を失ってしまい,いまそこにある経済を危機に陥れてしまうだろう」――基本的に,「増税しなかったら国債自警団に攻撃されるぞ」式の心配だ.
「なんでクルーグマンはこの見解に与さないの?」 ひとつには,信用の危機がこんな風に展開するはずだって話がぼくには理解しかねるからだ.実際,それこそが,去年ぼくがワシントンの IMF でやったマンデル=フレミング講演の眼目だった:ある国が自国通貨で借り入れていて,しかもインフレ圧力にさらされてもいないときに,ギリシャ型の危機がそもそもどのようにしてありうるのかってことがどうにも理解しがたいんだよ(講演はここで読める:英文PDF).日本銀行は短期金利をコントロールしてる.長期金利は,主に,予想される短期金利を反映する.そうだね,投資家たちは円を押し下げるかもしれない.でも,それって日本からみていいことだよ.ポーゼン氏は「株価が暴落しかねない」と言ってるけれど,ぼくには理由がわからない.金利が低いままなら,日本株式会社は弱い円のおかげでいっそう競争力を増すことになる.
冗談じゃなく,これがどう機能すると考えられるのか,教えてほしい.というか,財政の信認が失われたとして,それが――日本がやがて債務の一部を貨幣化する〔お金をすって債務を支払う〕んじゃないかという懸念が――いい方向への展開にならないワケを教えてほしい.
他方で,日本はデフレとの戦いで勢いを失うことをすごくすごくすごく恐れるべきだと,ぼくには思える.ぼくの予想どおり,消費増税第2弾でさらに国内総生産が落ち込んだとしよう.そのあとで日銀がのこのこやってきて「信用してください――今度こそ,2年でインフレ率を2パーセントにまで上げてみせますから」と言って,それで信じてもらえる見込みがどれくらいある? いまの勢いを失速させれば,対デフレ戦線で信用を致命的に失ってしまうだろう.ちなみに,そうなってしまえば,財政でもものすごい打撃を食らうことになる.
いまの話がまるっきり間違ってるってことがありえるかな? もちろん:世の中はややこしい.それに,さっき言ったように,ぼくの尊敬する人たちが賛成側にいる(けど,この件では彼らの論理がぼくには理解できない).でも,すべてはリスクどうしの比較の問題だ.目下,対デフレの信用を失うリスクの方が,財政面の信用を失うことよりもずっと悪いことに見える.
頼むから,増税はやめてくれ!
© The New York Times News Service
【バックストーリー】ここではクルーグマンのコラムが書かれた背景をショーン・トレイナー記者が説明する
安倍首相が賛否両論を検討中
by ショーン・トレイナー
安倍晋三首相は,20年にわたって日本経済を苦しめてきたデフレを終わらせると誓約して2012年に選出された.
彼の音頭取りのもと,日本銀行は過去2年にわたって大規模な刺激策を展開してきた.これにより,成功のきざしがみえてきた.ところが,この数ヶ月というもの,日本経済はふたたびエンジンからプスンプスンと音を出している.ひとつには,異論の多い消費税増税のためだ.この増税は,安倍氏が首相になる前に可決されている.
国内総生産の240パーセントにのぼる世界最大の日本の公的債務に対処する試みとして,前政権は消費税の2段階増税プランを可決した.第1段階はこの4月から実施され,5パーセントから8パーセントに消費税が上がった.だが,これが消費支出の急減につながった.これを見て,多くの批評家は増税第2弾の延期または撤回を主張している.8パーセントから10パーセントへの増税第2弾は,2015年10月に予定されている.日本の世論は,増税に強く反対している.ただ,大企業は大半がこれを支持している.そうした企業の重役たちは,増税が延期された場合に日本の信用に影響がでるのではないかと恐れているからだ.
新聞各紙の報道によれば,いまのところ安倍氏は増税について中立だという.だが,第2弾を予定通り実施するかどうかを12月までに決断しなくてはならない.今月,『ブルームバーグ』が実施した経済学者15名へのアンケートでは,12名が安倍氏は増税を予定通り進めるべきと考えると回答している.
他方,日本銀行による当初の刺激策を受けて上昇していた日本のインフレ率は,4月の増税から下落してきている.10月31日に,日本銀行はすでに大規模だった量的緩和プログラムをさらに拡大すると公表した.日銀は,年間およそ80兆円にのぼる国債購入を約束している〔日銀資料PDF〕.
© The New York Times News Service
消費税は延期するだけでなく減税するべきだろう。日本国債の暴落などはあり得ないし、それに、すでに日銀が買い取った国債は償還が終わっているから、累積国債残高はそれだけ減少した。もともと国債を借金だと誤認しているから、そのような財政均衡を目指すわけだ。国債も
通貨も総需要調節の手段に過ぎないのである。何をおそれる必要がある。
もっとも恐れる必要があるのはGDPの減少だ。これが減少すると言うことは人類が元気を失うことを意味しており、他の動物と同じく、この地球や宇宙に対して生産的でない動物に成り下がることを意味している。
多くの学問を研究しても最終的には馬鹿なことを主張するなら、それは単なる馬鹿だと思う。学問しない馬鹿の方が学問を下馬鹿よりも地球に貢献できると思う。
お札が足りないと騒いでるのがデフレなんだから、お札を刷ればいいんじゃないでしょうか? 国債で必要な流通貨幣の代替をしようとするから金利を払う必要が生じて破たんするのでは?
貨幣は流通するものなので現実に存在する価値の合計とバランスして存在する必要があります。価値や取引規模が増えてるならそれに応じて貨幣を刷らないと取引ができなくなりますよね。GDPが4%増えたら流通貨幣も4%増やさないとバランスしないはずです。流通貨幣が不足して流通貨幣の価値が高まってるのだとしたら、本来生産性のないものに対して価値を高めてることになるのは不動産バブルと同じだと思います。
経済学者は貨幣バブルを防ぐ手段を考えるべきでは? 市場参加者はインテリジェンスがあるので次々と生産性のない金儲けを考えだします。なので次々と中和して無効化する手段を投じないと経済が止まってしまいます。
マネーゲーマーに経済学者が負けて成長分を吸い取られてのが現在の状況かと。実体経済は正常に動いてて生活には困ってませんからね。
プリペイド、電子マネーなどで民間業者が次々と勝手にお金を刷ってる現状で、国だけが縛られるのはおかしいでしょう。