●Tyler Cowen, “My favorite short stories”(Marginal Revolution, March 13, 2010)
本ブログの読者であるycから次のような質問を頂戴した。
貴殿の好きな短編小説(あるいは短編集)をお教えください。
20世紀を代表する偉大な短編作家の多く――例えば、ジョン・チーヴァーとかドナルド・バーセルミとか――にはそこまで心惹かれないが、アリス・マンローに関しては大ファンと言っていい。彼女の作品はその大半(もしかしたら全部かな)を読んだものだ(最新の短編集も悪くはないが、彼女の作品としては平均以下の出来だと思う)。マンローは人間の本性および人間の弱みに関する興味深い作品を世に問い続けている作家だ。取っ掛かりとしてはこちらの短編集(邦訳『イラクサ』)あたりから試してみたらいいんじゃないかと思う。
古典の中から選ぶとなるとどうなるだろうか? まずはカフカの『田舎医者』にメルヴィルの短編多数。ボルヘスもお気に入りだ(特に『伝奇集』)。ジョイスの短編も個人的には高く買っているが、読んで楽しいかというとそこまででもないだろう。エドガー・アラン・ポーの『黄金虫』とかヘミングウェイの『キリマンジャロの雪』とかも好きな作品だ。チェーホフの作品の中だと(翻訳の問題ももしかしたらあるのかもしれないが)短編よりも中編が好きだ。トルストイの『ハジ・ムラート』は中編ということになるのかね。ヘンリー・ジェイムズの短めの作品にもお薦めはたくさんある。例えば、『ねじの回転』とか『ジャングルのけもの』とか。他にもイサーク・バーベリだったりシャーリイ・ジャクスンだったりマーク・トウェインだったり(の短編)もお薦めだ。SF(サイエンス・フィクション)の方面でも好きな短編はたくさんある。SFの魅力が一番発揮されるのは短編という形式なのかもしれないね。
満足いく返答とは到底言えないが、頭にパッと浮かんだあれこれをまとめるとこんなところだ。