タイラー・コーエン 「ビジネスマンが選挙に出馬するのはなぜ?」(2007年4月5日)

●Tyler Cowen, “Why do businessmen run for public office?”(Marginal Revolution, April 5, 2007)


イタリア観光も終えて帰路の真っ只中なのだが、イタリアにいたせいか、こういう話に自然と目が向いてしまうものだ [1] 訳注;おそらくは、ベルルスコーニあたりのことが念頭にあるのだと思われる。

民主主義の成熟度が低い国では、ビジネスマンは、議員ないしは首長といった公職にありつくことを通じて、公共政策の立案に直接関わろうとする。その一方で、民主主義の成熟度が高い国では、ビジネスマンは、公職にありつく以外の手段 [2] 訳注;議員や首長への陳情だったり献金だったりといったロビー活動など。を通じて、公共政策に影響を及ぼそうとする。本稿で組み立てられたシンプルなモデルから導かれる予測によると、ビジネスマンが公職にありつくために選挙に出馬するのは、以下の二つの条件が満たされる場合に限られることになる。まず一つ目の条件は、民主主義の成熟度が低い国においてそうであるように、選挙で掲げた公約の遵守を促す制度が整っていないこと。公約を破っても大してお咎めを受けないようであれば、公共政策を自分の意に沿うように操って私的なレントを手に入れる余地が生まれることになる。私的なレントに惹かれて、ビジネスマンも(自らのビジネスに有利になるように公共政策に手を加えられる地位にありつくために)選挙に出馬するというわけである。次に二つ目の条件は、公共政策を自分の意に沿うように操ることで得られるうま味(私的なレント)が大き過ぎないこと。公職にありつくことに伴って得られる私的なレントがあまりに大き過ぎると、職業政治家の立候補が相次ぐことになり、それに伴って(勝ち目は薄いと踏んで)ビジネスマンは選挙への出馬を見合わせる格好となるのである。本稿ではロシアの地方選挙のデータに分析を加えているが、モデルの予測と整合的な実証結果が得られている。すなわち、1)「報道の自由度」も「行政の透明性」も高く、それゆえ、選挙で掲げた公約の遵守を促す制度が整っている(公約を破ると、手痛いしっぺ返しを覚悟せねばならない)地域(選挙区)に加えて、2)「報道の自由度」も「行政の透明性」も低いが、公職にありつくことに伴って得られる(天然資源の豊富さによって測られる)私的なレントが並外れて大きい地域(選挙区)では、ビジネスマンは選挙への出馬を控える傾向にあるのである。

論文のリンクはこちら。この論文はこちらのセミナーで発表されたものだが、「民主主義は暴動(市民による暴動)のコストをいかにして低く抑えているのか?」をテーマしたジェームズ・フィアロン(James Fearon)の論文も同じセミナーでお披露目されてるようだ。

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1 訳注;おそらくは、ベルルスコーニあたりのことが念頭にあるのだと思われる。
2 訳注;議員や首長への陳情だったり献金だったりといったロビー活動など。
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