●Tyler Cowen, “How much is politics in the genes?”(Marginal Revolution, June 21, 2005)
ジョン・ヒッビング(John Hibbing)&ジョン・アルフォード(John R. Alford)&カロリン・フンク(Carolyn L. Funk)の3名の政治学者が着手した研究 [1]訳注;John R. Alford, Carolyn L. Funk and John R. Hibbing(2005), “Are Political Orientations Genetically Transmitted?“(The American Political Science Review, Vol. 99, No. 2, pp. … Continue readingでは、8,000組を超える双子を対象にした聞き取り調査のデータが徹底的に分析されている。
その聞き取り調査では、性格特性だったり、宗教上の信条だったり、心理的な傾向だったりについて事細かに調べられているが、件の研究では、その中から政治に関わりが深いと思われる28個の質問に対する答えを抽出した上で分析が加えられている。具体的には、財産税だとか、資本主義だとか、労働組合だとか、成人向け映画(ポルノ映画)だとかに関する質問への答えに分析が加えられているが、双子の多くはすべての質問に一貫して保守寄り(ないしはリベラル寄り)の答えを返しているわけではなく、ある質問に関しては保守寄りの答え、別の質問に関してはリベラル寄りの答えを返しているという。しかしながら、28個の質問すべてを総合すると、保守かリベラルのどちらか一方にわずかながら寄っているのが見て取れるという。
件の研究では、二卵性双生児の調査データと一卵性双生児の調査データが比較されている。二卵性双生児の遺伝子の共有度は50%であり(遺伝子の半分が同じ)、この点はふつうの兄弟と変わらない。一方で、一卵性双生児の遺伝子の共有度は100%だ(遺伝子が丸々同じ)。
まずは、28個の質問それぞれに対して一卵性双生児の二人がどれだけ似た答えを返しているかを相関係数のかたちで求め、次に、28個の質問それぞれに対して二卵性双生児の二人がどれだけ似た答えを返しているかを同じく相関係数のかたちで求める。前者の値から後者の値を差し引いて2倍すると、それぞれの質問への答え――その人なりの態度――に対する遺伝子の影響を測る大雑把な指標(遺伝要因の寄与度)が得られることになる [2]訳注;この点については、例えば次のページも参照されたい。●安藤 寿康, … Continue reading。ただし、同じ家で育った双子は家庭環境を共有していると想定した上での話だ。
例えば、「公立学校で祈りを捧げることに賛成しますか?」という質問に関して言うと、一卵性双生児の答えの類似度を表す相関係数は0.66で、二卵性双生児の答えの類似度を表す相関係数は0.46だったという。ということは、遺伝要因の寄与度は41% [3] 訳注;=(0.66-0.46)×2 ということになる。
遺伝子の影響が最も強く表れた(遺伝要因の寄与度が一番大きかった)のは、公立学校でのお祈り、財産税、徴兵制といった質問への態度(答え)に対してだったという。現代アートや離婚にまつわる質問に関しては、遺伝子の影響はやや弱まるという。28個の質問すべてを総合すると、遺伝要因の寄与度は53%。28個の質問への態度(答え)の違い――保守寄りか、リベラル寄りかの違い――の53%は、遺伝子の違いによって説明できるというわけだ。
しかしながら、似たような政治的イデオロギーの持ち主同士が結婚する「同類婚」の可能性を考慮して分析をやり直すと、双子が共和党と民主党のどちらを支持するかは、親から受け継いだイデオロギー(遺伝要因)よりも、しつけや人生経験といった環境要因にずっと強く影響されることが見出されたという。共和党と民主党のどちらを支持するかの違いに対する遺伝要因の寄与度はわずか14%だというのだ。
記事の最後は、次のように締め括られている。しかめっ面をするしかないね。
超党派で協力して国が一つになる未来はどうもやって来そうにないとのこと。その理由は、政治的なイデオロギーが似ている相手と一緒になる「同類婚」志向が強まっていることもあって、遺伝子のプールに偏(かたよ)りが出てこざるを得ないためだという。
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References
↑1 | 訳注;John R. Alford, Carolyn L. Funk and John R. Hibbing(2005), “Are Political Orientations Genetically Transmitted?“(The American Political Science Review, Vol. 99, No. 2, pp. 153-167) |
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↑2 | 訳注;この点については、例えば次のページも参照されたい。●安藤 寿康, “第2回「遺伝子は『不都合な真実』か?」(1)”(日本子ども学会、2013年2月23日) |
↑3 | 訳注;=(0.66-0.46)×2 |