●David Beckworth, “Another Look at The Cleansing Effects of Recessions”(Macro Musings Blog, January 7, 2008)
不況は、アメリカ経済が抱える不均衡(歪み)を一掃するためにも必要かもしれないなんていう恨み節めいたつぶやきがあちこちから聞こえてくる今日この頃だが(例えば、こちらやこちらを参照)、ユンス・リー&向山敏彦の二人〔拙訳はこちら〕が「不況の浄化効果」の解明に乗り出している。アブストラクト(要旨)を引用しておこう。
景気循環の過程では、創造的破壊が次々と起きて産業が清められる(‘cleanse’ )と広く信じられている。しかしながら、崩壊(busts)期よりもブーム(booms)期のほうが市場への新規参入が盛んな一方で、市場からの退出率と市場から退出する企業のタイプは、景気循環のどの局面でも変わりがないようだ。さらには、不況期に新規参入する企業は、ブーム期に新規参入する企業と比べると、規模が大きくて、生産性が高い傾向にあるようだ。すなわち、不況期に起きているのは、「創造的破壊」(‘creative destruction’)ではなく、「創造的参入」(‘creative entry’)なのだ。