ノア・スミス「オリヴィエ・ブランシャールにインタビュー(要点のみ)」(2022年6月28日)

著名マクロ経済学者が語る,供給vs需要,金融政策,などなど
[Noah Smith, “Video interview: Olivier Blanchard on inflation,” Noahpinion, June 29, 2022]

著名マクロ経済学者が語る,供給vs需要,金融政策,などなど.

オリヴィエ・ブランシャールといえば,現代でも指折りに声望あるマクロ経済学者だ.それに,引用回数が歴史上でも最多を争うマクロ経済学者でもある.ブランシャールは長らく MIT で教授を務めた(いまは名誉教授).また,2008年から2015年までは IMF のチーフエコノミストを務めていた.現職は,「ピーターソン国際経済学研究所」のシニアフェローだ.同研究所のウェブサイトでは,ブランシャールによる経済の考察があれこれと読める(それに,Twitter でフォローもできるよ!)

ブランシャールによる膨大な研究がもっぱら考察してきたのは,景気循環と金融・財政政策だ.彼は,今日のマクロ経済学で景気循環をとらえる支配的な理論であるニューケインジアン・パラダイムの発展に多大な貢献をしてきた.2021年の初め頃,バイデンによるコロナ救援法案の規模にブランシャールは懸念を表明した.コロナ救援法案が実現すると,顕著なインフレが引き起こされかねないというのが,彼の主張だった(あと,同じような警告を発していた他の人たちとちがって,ブランシャールは自分の計算を示していた.だからこそ,いまのインフレやその収束のためにすべきことについておしゃべりするなら彼こそうってつけの人物だろうと思ったんだ.

今回のインタビューの要点を並べておこう:

  • ブランシャールの考えでは,アメリカのインフレは,供給面が引き上げている部分よりも需要面が引き上げている部分の方が大きい.他方で,ヨーロッパではそれが逆になっている.2021年のコロナウイルス救援法案は大きすぎたけれど,チップや船舶や原油といった部門で生じた不足でこれがいっそう悪化してしまったと,彼は考えている.
  • 賃金がインフレを押し上げているとは,彼は考えていない.そうではなく,消費者の需要と製品価格がインフレを押し上げている.
  • 供給不足が続いている部門――たとえば原油――で,企業の超過利潤に一回限りの課税をする案をブランシャールは支持している.これで生じる税収は,消費者に再分配され,実質賃金といっしょに実質購買力が落ちるのを防ぐ.
  • 超過利潤への一回限りの課税を支持してこそいるものの,彼の考えでは,独占力はいまのインフレに顕著な貢献をしている要因ではない.
  • ブランシャールの考えでは,じきにインフレが勝手におさまえることもまだありえる.だが,そうならなかった場合には,インフレを制御下におくべく FRB が必要な対策を講じる必要が生じるだろうと彼は考えている.
  • 景気後退に入りそうになったら,FRB は利上げペースを落とすだろうけれども,インフレ目標に変更はないだろうとブランシャールは見ている.
  • インフレ予想のレジーム転換の危機にはまだ陥っていないと彼は考えている.レジーム転換には数年がかかるだろうというのが,彼の考えだ.
  • 長期のインフレ目標には,2% よりも 3% の方がすぐれているとブランシャールは考えている.もし〔実際のインフレ率が〕 3% にまで下がったら,そこからさらにインフレ率を下げることに大していいことはないだろうとブランシャールは言う.
  • ニューケインジアンの各種モデルから,経済で動いている各種の基本的なプロセスについての知見を彼は得ている.ただ,基本モデルの方程式のなかにはあまりに現実離れしていて,そうしたモデルにおける信頼は限られている.
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