企業が商品価格の下2ケタを99セントにする理由は,「左端の数字バイアス」がかかっているからだと言えそうだ――消費者たちには, $5.00 よりも $4.99 の方をずっと安く知覚する傾向がある.全米25のチェーン店で販売されている 3,500コの商品に関する小売り店スキャナーデータを分析したところ,この説明を堅固に支持する証拠が得られた.「左端の数字バイアス」の強さを構造的に推計すると,次のことがわかる――下2ケタが 99 になっている価格から 1セント増えると,消費者たちは,まるで 20セント以上の値上がりであるかのように反応する.次に,左端の数字バイアスがかかった需要をふまえた最適値付けのポータブル・モデルの解を得た.本研究では,このモデルやその他のさまざまな値付け手法を用いて,小売店が商品に値付けする意思決定の際に知覚している左端の数字バイアスのレベルを推定した.あらゆる小売業者が下2ケタが99の価格を用いて左端の数字バイアスに反応する一方で,彼らの行動はみずからの直面する需要に対して一貫して食い違っていた.企業は,あたかもバイアスが実態よりずっと小さいかのように値付けする.そして,彼らの値付けは,需要の構造をふまえた最適化よりもヒューリスティックスや経験則の方とより整合していた.筆者の計算では,左端の数字バイアスに対するこの粗雑な反応によって,小売店は潜在的な総利益の 1パーセントから4パーセントをとりこぼしている.
上記は,Avner Strulov-Shlainによる近日掲載予定の論文から.via いつも冴えてる Kevin Lewis.