H・G・ウェルズの小説『When the Sleeper Wakes』(邦訳『冬眠200年』)を読んだ。主人公にロビン・ハンソン(Robin Hanson)の姿をだぶらせながら読んだ。つまりは、楽しく読んだということだ。
グラハム(グレイアム)という名の男が昏睡状態に陥り、200年後に再び目が覚める。「複利の力」のおかげで、世界の富の半分が彼のもの。グラハムは、周りから恐れられもし、崇(あが)められてもいて、彼の代弁者を名乗ったり、彼に成り代わって世界を統治しようと試みる者が200年の間に何人も現れる。
200年間かけて発達した催眠術のおかげで、誰もが数学の問題を楽々解けるし、「余計な想像力や余計な感情に邪魔されずに」天才のようにチェスを打てる。あれやこれやについて学ぶために何年もかける必要はなく、「トランス状態に数週間」入るだけでいい。記憶に関しては思うように切り貼り(取り除いたり付け加えたり)できるが、欲望に関してはそうはいかない。どの紙幣にも(そう簡単に破れないようにするために)絹(きぬ)のような繊維が織り込まれていて、奇跡を約束する神殿の朧(おぼろ)げな姿が印刷されている。どこかで目にしたことがあるような・・・。
ウェルズは、過小評価されている作家の一人だと思う。とりわけ、彼の「マイナーな」作品の中には、過小評価されているのがいくつかある。ウェルズのフィクション作品が漏れなく収められている一冊がこちら。Kindleで99円〔2023年4月時点〕で読める。
—————————————————————–
H・G・ウェルズの『When the Sleeper Wakes』(1910年刊)より。
「黄禍論はどうなった?」 グラハムは、浅野に説明を求めた。中国人を妖怪に見立ててやたらと怯(おび)えていたのも、とうの昔の話。中国人とヨーロッパ人は、今では友好的な関係を築いている。平均的な中国人は、ヨーロッパの平均的な農奴と同程度の礼儀を身につけており、ヨーロッパの平均的な農奴よりも道徳的で、知性の面ではヨーロッパの平均的な農奴をはるかに凌駕する。20世紀を通じてそのことが渋々ながら揺るぎない事実として認められるに至ったのであり、17世紀にスコットランド人とイングランド人の間で芽生えたのよりも何倍ものスケールの親密な結びつきがあちこちで生まれたのが20世紀だった。浅野曰く、「よくよく考えた末に、結局のところ、みんな白人だってことに気付いたんです」。
〔原文:“*When the Sleeper Wakes*”(Marginal Revolution, September 28, 2011)/“Foresight by H. G. Wells”(Jason Collins blog, February 24, 2012)〕