これまで一貫して「混沌」という単語を使っていま第二次トランプ政権がやっていることを言い表してきた.混沌こそ彼らがやっていることなんだと,じょじょにアメリカ人も気づきはじめている:

ハリー・エンテン(CNNのホストで政治分野のデータ分析ジャーナリスト):
「アメリカ人はこれを見て,ドナルド・トランプは『サウスパーク』のバターズみたいな存在だと考えています.トランプは「プロフェッサー・カオス」というわけです」
アメリカ人による Google 検索で「トランプ」と「混沌」の検索件数が記録的な水準に達している.56% が「トランプは性急すぎる」と回答している.アメリカ人は,アメフトコーチのヴィンス・ロンバルディよろしく,「いったいなにがどうなってやがる?」と言っている.
いま,ネイト・シルバーはいろんな世論調査を集約してトランプの支持率を計測している.それによると,支持率は着実に下がってきている:

それに,いろんな世論調査でも,国民感情がゆっくり不機嫌になってきているのが見てとれる.CNN を引用しよう:
全米で,成人の過半数 55% が,「トランプは国のとりわけ重要な問題に十分な注意を払っていない」と回答している.また,62% は,「日用品の価格引き下げに十分な取り組みをしていない」と回答している.支持政党によらず,かなりの割合が後者の見解を抱いており,その数字はそれぞれ共和党支持で 47%,無党派層で65%,民主党支持で 73% となっている.
CNN の1月調査では,「経済」が他のあらゆる問題を大きく引き離してアメリカ人の最大の関心事となっている(…) 第二期トランプ政権の終わりまでの期間について本人の展望を尋ねると,「悲観的」または「心配」という回答が過半数を占める (54%).他方,「熱狂的」または「楽観的」という回答は 46% だった.去年12月は楽観的な回答が 52%,悲観的な回答が 48% だった.「不安」との回答が 6ポイント増えて 35% にまで上昇している点は注目に値する.支持政党別にみても,その割合はおおよそ同じだった.
『ワシントンポスト』でも同様の調査結果が出ている:
全体では,「就任から1ヶ月間の大統領の行動を支持する」という回答がアメリカ人 43% を占めているのに対して,「反対する」という回答は 48% を占めている(…).大半のアメリカ人は,「大統領が権限を越えた行動をとっている」という見方に同意している(…). 個別の責任分野を見ると,大統領の経済運営をよしとしない回答が過半数を占めた(不支持 53% vs. 支持 45%).また,大統領による連邦政府の運営についても同様に不支持が支持を上回っている (54%).移民に関しては意見が拮抗しており,50% が大統領の取り組みを支持する一方,48% が不支持と回答している(…). [イーロン・]マスクが不要と判断した連邦政府機関の閉鎖に関しては, 2対1 で反対が上回っている.マスクのチームが個人の機密データにアクセスできることに懸念を示す回答は 63% にのぼった.
その一方で,予測市場では,トランプとイーロンが意味のある支出削減をするという考えに悲観的な見方が強まっている:

自分たちは欠陥品をつかまされたんだってアメリカ人が気づくまでこんなにかかっていることに,ぼくは正直ちょっとがっかりきてる.ただ,今後も,関税を引き上げたり社会保障給付を止めたり,アメリカの工場建設ブームを牽引している産業政策を取りやめたり,マネーロンダリングを許容したり,防衛生産を減らしたり,世界中で食糧支援や緊急支援を打ち切ったり,科学研究助成をさらに攻撃したりなどなどをトランプが繰り広げて毎日のように新しい混沌をもたらしていくにつれて,きっと,世論はますます不機嫌になっていくとぼくは予想している.2010年代以降つづく疲弊のまっただ中にあっても,これほどの混沌を生じさせておいて人々に気づかれないわけがない.
【著者ノア・スミスの本『ウィーブが日本を救うーー日本大好きエコノミストの経済論』が出ます。】
[Noah Smith, “Americans aren’t enjoying the Trump chaos,” Noahpinion, March 8, 2025]
題名が不自然なのはわざとですか?「トランプの大混乱でアメリカ人もご不満」とかそんな感じでは?
いえ,ぼくのセンスの問題です
タイトルを変えてみました