サンフランシスコの「マーケットストリート」大失敗がダウンタウンの破壊の一因になった
近頃のパリは本当にステキに見える．市街の中心地から車を追いだす努力を継続してきた結果，多くの通りは自転車と歩行者にとって心地いい通り道になってきている．アメリカにいる都市計画の専門家たちのなかには，このお手本をアメリカで模倣したいと考えている人たちもいる．でも，残念ながら，彼らが模倣の第一歩に選んだ場所はサンフランシスコのダウンタウンだった．
これがとんでもない失敗になってしまった．たしかに，サンフランシスコの中心ダウンタウン大通り，かの有名なマーケットストリートに自動車が入れないよう禁止された．でも，自動車と入れ替わりに自転車や歩行者がやってきてはいない．わずかに自転車乗りをちらほら見かけることはあるけれど，多くはない．サンフランシスコはすごく勾配の大きい都市だから，自転車を利用する人は多くない．それに，歩行者はマーケットストリートの中心部に入ることを許されていない．いまもときおり道路を走っているバスや路面電車にはねられないようにという措置だ――マーケットストリートは，遊歩道じゃない．
こうして，シャンゼリゼに似るどころか，マーケットストリートは，ダウンタウンのど真ん中を突っ切るガランとした巨大な駐車場みたいになってしまっている――半ば人の往来が途絶えた都市景観をえぐる不毛なアスファルトの切り傷みたいになっている．一方ではダウンタウンのオフィス街がリモートワークにともなって空虚になりつつあり，他方ではマーケットストリートが封鎖されるなかで，サンフランシスコは死にかけている．歩行者の往来や自動車の行き来がなくては，あちこちでお店やモールが閉店している．この地域全体が，あたかも永劫に終わらないパンデミックに閉じ込められているかのようだ．
でも，それでおしまいじゃない．マーケットストリート閉鎖じたいも大失敗だけど，それもさらに大きな大失敗の一部でしかない．その大失敗とは，サンフランシスコが何億ドルも注ぎ込んで最重要の商業地区を破壊することになった都市政治と行政の大失敗だ．San Francisco Standard の記事でその顛末が語られている．サンフランシスコがどうしてこうも機能不全になっているのかを理解したいなら，この記事は絶対に読む値打ちがある．ほんのちょっとだけ抜粋しよう：
「よりよいマーケットストリート」という6億ドル資本プロジェクトは，歩道の高さを上げて自転車やスクーターの安全を図る緩衝をつけるなど未来的な大通りをつくりだすことを約束していた（…）．10年以上におよぶ計画は，マーケットストリートをさまざまに様変わりさせた（…） 今日，実現した景観は，サンフランシスコの壮大な約束とはおよそ似ても似つかない．たしかに，自動車はマーケットストリートから消えた．だが，人々の姿まで消えてしまったのだ（…）．5番通りから8番通りのあいだまでマーケットストリートの3ブロックにほどほどの改善をする以外の資金は，蒸発してしまった．また，その3ブロックの改善にしても完了は来年夏になる見込みだ．市の部門間では，このプロジェクトがどう間違ったのかを説明する責任をホットポテトのように押しつけ合っている（…）． 「かりに，運輸債が可決されていて，さらに，「財政の崖」に直面もしていなかったとしても，「よりよいマーケットストリート」プロジェクトを構想通りに進めるべきかというそもそもの問題があることに変わりない．」 そう語るのは，［監督者のラファエル・］マンデルマンだ．「こうした巨大プロジェクトは，じっくりと検討して，どれくらいの時間がかかり，コストがどれほどかかるのかを本当に考え抜く必要がある．「よりよいマーケットストリート」プロジェクトはそういうテストにまだ合格していないと思う．」
ともあれ，怒りを覚えた人はぜひ全文を読んでみてほしい．
[Noah Smith, “At least five interesting things to start your week (#23),” Noahpinion, December 27, 2023]
