ニュースを見てるアメリカ人のあいだでこれほど多くの悲観論が通説になりつつあるのは,どうしてだろう? ひとつには,2010年代後半の社会全体の動揺が挙げられる.それと,国が危機のさなかにあるという感覚をつくりだすことで利益を手に入れたがってるアウトサイダー政治派閥が〔そういう悲観的で危機を煽る〕メッセージを送り出していることも,理由の一端にあると思う.ただ,この十年~二十年ほどで,他でもなくニュースメディアがますます悲観的になってきたっていう事情もある.
Binsbergen et al. による新しい論文では,テキストマイニング手法を使って新聞で用いられている言葉を分析している.彼らは,経済ニュースと経済以外のニュースの両方でプラスの感情とマイナスの感情をはかる尺度を構築した.短期的には,経済に関する感情は経済関係の出来事に対応している――景気後退やインフレにはマイナスの感情が対応するし,好景気にはプラスの感情が対応する.ところが,長期的には経済に関する感情も経済以外に関する感情も,長年にわたって下降傾向が続いている:
いったいなにが起きてるんだろう? みんなも知ってのとおり,そして大量の研究が示しているとおり,ニュースには悲観バイアスがかかっている――いいニュースよりも悪いニュースの方が注目を集めやすい.そのため,メディアには悪いことを強調して過剰に報道するインセンティブがはたらく.近年,この傾向は強まっていたのかもしれない.というのも,ニュースメディアの競争がいっそう強まっているからだ.規制緩和と新テクノロジーによって競争が激しくなったことで,新聞各社は生き残りをはかってますます人騒がせで悲観的になってきたのかもしれない.
それとは別の仮説として,地域ニュースから全国ニュースへの移行にともなって報道がいっそう悲観的になったとも考えうる.全国ニュースよりも地域ニュースの方が全国ニュースよりも楽観的になりがちな傾向があるかどうかを検討した研究は見つけられなかったけれど,人々が全国の経済よりも自分の地域の経済の方をよい状況だと考える傾向があるのは間違いない:
もしかすると,長い間にゆっくりと地域紙が消えていっていることと,それにともなってニュースが全国的になってきていることで,悲観的な傾向が強まっているんだろうか? この点は注視しておいていいと思う.
[Noah Smith, “At least five interesting things to start your week (#25),” Noahpinion, January 16, 2024]