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スコット・サムナー「今度の平均インフレ率目標が守られたなら」(2020年8月27日)

[Scott Sumner, “The (PCE) price level will be 135.207 in January 2030,” TheMoneyIllusion, August 27, 2020]

2030年1月に(個人消費支出)物価水準は 135.207 になるわけだ.あるいは,少なくとも,そうならなきゃいけない.
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ジョセフ・ヒース「『どこに投票しても同じじゃないか!』と嘆く若者のために:オンタリオ州に見る政治選択の黄金時代」(2014年4月1日)

The golden age of ideological politics in Ontario
Posted by Joseph Heath on April 1, 2014

不満を抱いた有権者――特に若者――による、主要な政党間に「違いがない」ので投票にする気にならない、との不満たまに聞くことがある。私は、こういった不満にあまり共感を持てないできた。特にカナダでは。ここでは主要政党間に非常に大きなイデオロギー的な隔たりが存在するからだ。もちろん、どの政党も、特定個人の固有の好みに応じようとはしていないだろう――結局、政党は大衆政党であり、数百万の人々の要求と要望に応じようとしている。ただそうはいっても、政党の意見表面が、非常に異なっているのを観察できていない人は、おそらく少し注意散漫だ。

これが顕著に具現化しているのが、今のオンタリオ州である。私が、このオンタリオ州の現状について想起したのは、ダニエルがケベックの実情について不満を鳴らしているのを読んだからだ。「ケベックでは、分配の公平性を中心軸とした伝統的な右・左の線引ではなく、(分離主義vs.連邦主義の)建国来の線引に頑固なまでに偏向してしまっている」とダニエルは毒づいている。実際、ケベックの政治制度は(ADQやCAQやQSの台頭によって1 )「標準化」しそうになる度に、「標準化」は一度限りの選挙で終わってしまい、古い建国来の中心軸に引き戻されてしまっているようだ。

対照的に、オンタリオ州の有権者は、3つの政党に極めて分かりやすい選択肢を保持している。3政党は、次期政権を樹立する可能性を有しており、3政党は、左右のイデオロギーを中心軸にした、明確に定義可能なポジションに立っている。これは、社会正義の基本的な問題に「関心を持つ」人(ないし、市場経済における国家の役割に関して確固たる見解を持つ人)からしてみれば、ある意味黄金時代となっているのだ。オンタリオ州においてNDP(新民主党)は正真正銘の左派政党であり、自由党は正真正銘の中道政党であり、保守党は正真正銘の右派政党である。ここで「正真正銘」とは何を意味するのかを、オンタリオ州において政治的議論を支配してきた問題、すなわち「公共交通機関」を俎上に載せて解説してみよう。 [Read more…]

  1. 訳注:ADQ、CAQ、QSは全てケベックの地域政党 []

ラルス・クリステンセン 「Fedが『平均インフレ目標』の採用へ ~インフレ目標を2.5%へと引き上げたも同じ?~」(2020年8月27日)

●Lars Christensen, “The Fed just de facto increased its inflation target to 2.5%”(The Market Monetarist, August 27, 2020)


久しく待たれていたが、遂にその時がやって来た。Fedが金融政策の戦略を見直すと宣言したのだ。

「金融政策の長期的な目標と戦略」に関する声明の変更点のうちで重要なポイントがこちらにまとめられている。引用しておこう。

  • 「雇用の最大化」について言うと、幅広い指標に照らして総合的に評価されるべき包括的な目標である旨が強調されている。さらには、「足元の雇用水準が最大限の雇用水準を『どれだけ下回っている』か」を慎重に評価した上で、金融政策の策定にあたる旨が明記されている(ちなみに、これまでの声明では、「足元の雇用水準が最大限の雇用水準から『どれだけ乖離している』か」を慎重に評価した上で、と表現されていた)。
  • 「物価の安定」について言うと、2%の長期的なインフレ目標の達成に向けて、「インフレ率が『平均して』2%に向かうよう試みる」と記されている。インフレ率が平均して2%に向かうようにするためには、「インフレ率が2%を一貫して下回り続けた後には、インフレ率が2%を若干上回るのをしばらくの間にわたって容認するのが適当である」とも記されている。
  • 今回見直された声明では、低金利が常態化することに伴う挑戦についてもはっきりと言及されている。政策金利が下限に達してしまう(政策金利を引き下げる余地がなくなってしまう)事態に追いやられる可能性がアメリカをはじめとして世界各国でこれまで以上に高まっているのだ。

ほぼほぼ予想通りの線に沿った変更だが、Fedのこれまでの戦略に比べるとかなり大きな変化だと言える。 [Read more…]

VoxEUアブストラクト「ドイツにおける非伝統的財政政策としての付加価値税減税」(2020年8月25日)

[Felix Montag, Alina Sagimuldina, Monika Schnitzer, “VAT reduction as unconventional fiscal policy in Germany: Fast but heterogeneous pass-through in the fuel market,” VoxEU, August 25, 2020]

アブストラクト
COVID-19パンデミックがもたらす各種の影響に対応すべく,6月3日にドイツ政府は前例のない経済刺激パッケージを公表した.その政策の1つは,2020年6月から12月のあいだ一時的に付加価値税率を引き下げるというものだった.この政策の狙いは,一時的に価格を引き下げてインフレ予想を引き上げることにより消費を刺激することにあった.本コラムでは,経済の主要部門1つをとりあげ,その転嫁率の推定値を提示する〔付加価値税の減税分のうちどれだけが実際の小売価格に反映されたかを推定したということ〕.我々の推定値では,小売り販売の燃料では転嫁が急速かつ相当なものではあったが不完全で,転嫁率は当該市場の競争の度合いによって異なっていることが示されている.

タイラー・コーエン「1918年のスペイン風邪はどれくらいひどかったのか」(2020年8月25日)

[Tyler Cowen, “How bad was the Spanish Flu pandemic of 1918?” Marginal Revolution, August 25, 2020]

〔1918年のインフルエンザ・パンデミックは〕たしかに酷い悲劇だったにはちがいないけれど,多くの地域では,近い年に起きた他の出来事の方がずっと酷かった.
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ピーター・ターチン「人類の社会進化についてのアナーキスト的見解:デヴィッド・グレーバーさん、かなりヘンですよ」(2019年2月10日)

An Anarchist View of Human Social Evolution
February 10, 2019
by Peter Turchin

デヴィッド・グレーバーとデヴィッド・ウェングローは、最近New Humanist誌に「我々は都市居住者なのか? それとも狩猟採集民なのか? 最新の研究は、原始人間社会に関するお馴染みのお話は間違えていることを明らかにした――研究の帰結は深遠である」との長い論説を発表した。以下は、私の彼らの論文への批判的レビューだ。彼らのエッセイから、「大きな塊の文章」を引用してから、それに私がツッコミを加えるスタイルを採用している(通常私は、長々と引用しない。しかし私の見解がかなり批判的なので、パラフレーズではなくて、著者達自身の声をもって語らせることを選択した。)

グレーバーはアメリカ人の人類学者であり、アナーキストの活動家だ。私は『負債論』を含め、彼の著作を3冊読んでいる。ウェングローは、草創記エジプト史を専門にしている考古学者だ。ウェングローの著作では、“What Makes Civilization?(何が文明を作るのか?)”を含め、2冊を読んでいる。2人は、デヴィッド&デヴィッドとして「大衆インテリ」の地位を狙っている。もっとも、有名になるまでの道のりは遥か遠いのは疑いようもない。彼らの最新の論考がどんなものか見てみよう。 [Read more…]

ヴィラ et al.「財政緊縮とナチ台頭」(VoxEU, 2020年8月16日)

[Gregori Galofré Vilà, Christopher Meissner, Martin McKee, David Stuckler, “Fiscal austerity and the rise of the Nazis,” VoxEU, August 16, 2020]

2007-2008年の金融危機で発生した債務への対策として,多くの西洋諸国は強い緊縮策を追求した.COVID-19 の経済刺激策パッケージののちにも,またこれを繰り返すかも知れない.このコラムでは,1930年代前半に,いかにして緊縮策が社会の苦境を悪化させ,政治的不安定を増す一因となり,やがてドイツにおけるナチ党の台頭の布石となったかをまとめる.本稿の主張は次のとおり――ワイマール政府で生じた社会の苦境に対して一貫した対策がなされなかったことで,不況は悪化し,これがドイツ有権者の急進化と二極化を進める一因となった.
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VoxEUアブストラクト「COVID-19 によって高等教育での格差が広がっている」(2020年8月9日)

[Esteban Aucejo, Jacob French, Paola Ugalde Araya, Basit Zafar, “COVID-19 is widening inequality in higher education,” VoxEU, August 9, 2020]

すでに1世代の学生たちが COVID-19 にどう影響を受けているのかを評価する新研究が登場してきている.本コラムでは,合衆国でも有数の規模の公立大学の学生たちを対象にした調査を用いて,新たな知見を示す.パンデミックは学生たちに幅広く混乱をもたらしているが,その混乱は低所得の学生たちほど大きくなっている.その主な要因は次の点にあるように思われる.すなわち,所得が低いほど,COVID-19 に金銭面で影響を受けやすく,しかも,ウイルスによる直接的な健康リスクをより懸念しがちとなっているのだ.

タイラー・コーエン「フェイクニュースに言及するのもダメ」(2020年8月8日)

[Tyler Cowen, “Don’t mention the fake news,” Marginal Revolution, August 8, 2020]

定義不良の用語「フェイクニュース」を使ってフェイクニュースが広まっていると主張しているのを読んだり聞いたりするのですら,有害になりうる.Van Duyn & Collier (2019) の研究では,メカニカルタークの回答者を対象に実験を行い,「フェイクニュース」という単語を含むツイートに触れると,回答者たちが虚偽のニュースと事実のニュースを識別しにくくなるのを見出している.同様に,Clayton et al. (2019) の研究では,メカニカルタークで回答者たちに実験に参加してもらい,ソーシャルメディアで誤解を誘う情報が広まっているという一般的な警告を読んでもらうと,妥当なニュース源と信頼できないニュース源のどちらのヘッドラインも正確さを〔比較的に〕低く評価する傾向が出てくるのを見出している.ここから,この警告によって〔ニュース源が信頼できるところかそうでないかについて〕無差別な懐疑が引き起こされることがうかがえる.

上記の出典は,誤認がどう生まれて存続するのかについて Brendah Nyhan が調査した JEP のすぐれた論文

タイラー・コーエン「これは現代の奴隷制と戦うのにふさわしい方法ではない」(2020年8月2日)

[Tyler Cowen, “How not to fight modern-day slavery,” Marginal Revolution, August 2, 2020]

――というのが,今回『ブルームバーグ』に書いたコラムの話題だ.ちょっと抜粋しよう.
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