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ノア・スミス「うん,専門家はたまに嘘をつくよ」(2021年3月28日)

[Noah Smith, “Yes, experts will lie to you sometimes: Econ gives us an example of when and why this happens,” Noahpinion, March 28, 2021]

いつ・どんなときに専門家が嘘をつくか,経済学者が一例を示そう.

[▲ 「真理なんておまえらの手に負えない! 真理が似つかわしくないんだよおまえらには! 真理を扱うおまえらの能力なんてお笑い草だ!]
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タイラー・コーエン 「パーソナリティーと政治意識の複雑な関係」(2016年3月8日)

●Tyler Cowen, “Does personality cause politics?”(Marginal Revolution, March 8, 2016)


まずはじめの分析では、性格特性(パーソナリティー)と政治意識(政治的態度)との間に統計的に有意な相関関係が見出された。とりわけ特筆すべき結果をまとめると、以下のようになる。アイゼンクのP〔Pというのは、「精神病的傾向」(“Psychoticism”)の頭文字を表している。いくらか複雑な尺度〕の値が高い人ほど1、(同性愛だとか中絶だとかに不寛容であり、安全保障問題でタカ派寄りという意味で)保守寄りの傾向が強い。社会的望ましさ(Social Desirability)を測る尺度の値が高い人ほど2、(同性愛だとか中絶だとかに寛容という意味で)社会問題に関してリベラル寄りの傾向が強い。神経症的な傾向を測る尺度の値が高い人ほど3、(経済的な弱者の救済を意図した公共政策に好意的という意味で)経済問題に関してリベラル寄りの傾向が強い〔ゴシック体による強調は、引用者によるもの〕。オーストラリア人を対象とした同様の研究 (Verhulst, Hatemi, and Martin 2010)でも、我々の分析と整合的な結果が得られている。

双子のデータが分析対象になっているとのこと。以下に引用する議論には、ひどく興味を引かれた。性格特性から政治意識へという因果の向きで片がつく話じゃないようだ。

本稿で得られた一連の結果は、性格特性こそが政治意識を育(はぐく)む原因であると想定しているいくつかの先行研究(例えば、Gerber et al. 2010; Mondak et al. 2010)に真っ向から異を唱える格好になっている。性格特性が原因でリベラル寄り(ないしは保守寄り)になるわけではなく、性格特性と政治意識との間にはそれとは別の二通りの関係性が成り立つ可能性があるのだ。同じ遺伝子の組が性格特性と政治意識の双方に影響を及ぼしているというのが第一の関係性だ。これはコレスキー分解と因果モデルの分析結果から示唆される関係性だが、遺伝子という先天的な要因こそが性格特性と政治意識との間の相関関係を成り立たせているというわけだ(図1の右側のパネルを参照)。さらには、因果モデルの分析結果によると、逆向きの因果――政治意識こそが性格特性を育むという第二の関係性――が成り立つ可能性も示唆されている。すなわち、政治意識の違いを生む遺伝子の組が性格特性の違いを生んでいる可能性があるのだ。これはいくつかの先行研究(例えば、Gerber et al. 2010; Mondak et al. 2010)で想定されているのとは正反対の因果関係だが、政治意識の違いを生む遺伝子が性格特性の個人差を徐々に育んでいく可能性があるわけだ。この観点からすると、政治意識というのは、行動や環境の選択を左右する生来の気質の一つということになろう――政治意識がはっきりとかたちをとる(リベラル寄りになるか、保守寄りになるかが決まる)までには、しばらく待つ必要があるとしても――。遺伝子という要因にすべてを帰すことができるのかどうか、性格特性と政治意識との間に双方向の因果関係が成り立つのかどうかという点については議論の余地があるが、いずれにせよ、性格特性こそが政治意識を育む原因であるとの広く受け入れられている想定を大きく見直す必要があるとは言えよう。

全文はこちら

  1. 訳注;アイゼンクのPの値が高いほど、頑固だったり、協調性が低かったりする傾向にある。 []
  2. 訳注;社会的望ましさを測る尺度の値が高いほど、周りからよく見られたい(自分をよく見せたい)と思う気持ちが強い傾向にある。 []
  3. 訳注;神経症的な傾向を測る尺度の値が高いほど、不安を感じやすくて悲観的な傾向にある。 []

ブランコ・ミラノヴィッチ「孤独のグルメ…超競争社会の中で」(2017年11月2日)

Dining alone…in a hyper-competitive world
Thursday, November 2, 2017
Posted by Branko Milanovic

ニューヨークでほぼ一人4年間暮らし、少なくとも400回は一人で夕食を食べてきたので、孤食について…そしてそれが私たちが住む世界について何を教えてくれるかに意見を述べる権利を私は有していると思う。 [Read more…]

アレックス・タバロック「どうして女性の稼ぎは男性よりも少ないの? バスと列車の乗務員たちから得られる証拠」(2021年7月14日)

[Alex Tabarrok, “Why Do Women Earn Less Than Men? Evidence from Bus and Train Operators,” Marginal Revolution, July 14, 2021]

近く刊行される『労働経済学ジャーナル』(Journal of Labor Economics) に掲載される優れた労働経済学者 Valentin Bolotnyy & Natalia Emanuel の論文(閲覧制限なし)から抜粋:
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ノア・スミス「経済学って,政府がなにもしないことの言い訳なんでしょ?」(2021年7月6日)

[Noah Smith, “Is economics an excuse for inaction?” Noahpinion, July 6, 2021]

いや,ちがうよ.でも,みんながそう思うだけの理由はあるよ.


〔▲ 労働階級(右)が支配階級/億万長者(左)に銃をぶっ放そうとしてるところに経済学者ではなくウォールストリート・ジャーナルが身を挺してかばう,の図〕
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ブランコ・ミラノヴィッチ「格差研究の歴史」(2020年11月8日)

The history of global inequality studies
Sunday, November 8, 2020
Posted by Branko Milanovic

 私はこの間、グローバル格差研究の起源について、クリスチャン・クリスチャンセンによって書かれた非常に素晴らしい論文を読んだ。この論文はまだ発表されていないためここで引用することはしないが、興味のある読者には、これと同じテーマを扱った、彼とスティーブン・ジェンセン(編集者)による素晴らしい著書『Histories of Global Inequality(グローバル格差の歴史)』に収められた、特にイントロダクションの論文を読むことを勧める。 [Read more…]

タイラー・コーエン 「誰かといたい保守、一人でいたいリベラル」(2008年2月25日)

●Tyler Cowen, “The personality traits of liberals and conservatives”(Marginal Revolution, February 25, 2008)


まだまだ続報がありそうだ

ウィルソン(David Sloan Wilson)&ストロム(Ingrid Storm)の二人は、その他の要因(交絡要因)の影響をコントロールするために、白人のプロテスタントである10代の若者に対象を絞ることにした。実験に協力したのは、プロテスタントの二つの異なる派に属する若者たち。その二派というのは、保守寄りとして知られるペンテコステ派と、リベラル寄りとして知られる聖公会派。

実験に参加した若者たちにはポケットベルが渡された。2時間おきくらいの間隔で呼び出し、今何をしているのか、今の気分はどうかなどといった質問に答えてもらったという。

それぞれの派に属する若者の間には、意外な違いが見出されたという。例えば、聖公会派に属するリベラル派の若者は、ペンテコステ派に属する保守派の若者よりも、強いストレスを感じて日々を過ごしているのが見出されたという。それは1日のうちで時間を問わずだが、誰と一緒に過ごすかを自分で決められない場合はとりわけ強いストレスを感じる傾向にあったという。一方で、保守派の若者に関しては、誰と一緒に過ごすかを自分で決められようが決められまいが、感じるストレスの度合いに違いは見られなかったという。意外な違いは他にもある。リベラル派の若者は一人でいるのが好きなようで、自由に使える時間の4分の1を一人で過ごしている――保守派の若者は、自由に使える時間の6分の1を一人で過ごしている――。リベラル派の若者は、一人でいる場合も、誰かと一緒にいる場合も、同じくらい退屈に感じており、一人でいる時間が多いのはそのことも関係しているのかもしれない。保守派の若者は、誰かと一緒にいる方が一人でいるよりもずっと楽しく(退屈じゃなく)過ごせており、血の繋がっていない他人(友人も含む)よりは家族と一緒にいる方を好んでいる。おそらく最も興味をそそられる違いは、信仰心の篤(あつ)さと親に反論するかどうかの関係だろう。リベラル派の若者に関しては、信仰心が篤いと自認しているほど、親と意見が合わない時に反論するのも厭(いと)わない傾向にある一方で、保守派の若者に関しては、それとは逆の傾向が見られる――信仰心が篤いと自認しているほど、親と意見が合わない時に反論を控える傾向にある――らしいのだ。

ウィルソン本人による研究の要約はこちら。うまく要約されてはいるが、数ある発見の中でも「どうだかね」っていう結果――保守派の方が同調傾向が強い――が強調されているようだね。

いつかはきっとはっきりしたことがわかるようになるんだろうけど、ランダムに選ばれたわけじゃない二つの集団であっても、まったく同じパーソナリティーを備えてるってことはあり得ないだろう。適切な比較対象を選ぶにはどうすればいいんだろうね? 信心深いプロテスタント同士を比較対象に選べば、いくつかの要因はコントロールできるんだろうけど、果たして保守派とリベラル派の典型と言えるメンバーを選び出せているんだろうかね? ペンテコステ派と聖公会派を比べてるだけなんじゃないのかね?

タイラー・コーエン 「几帳面な保守、奔放なリベラル」(2007年1月11日)

●Tyler Cowen, “Does politics reflect personality?”(Marginal Revolution, January 11, 2007)


Psychology Todayの記事によると、保守派とリベラル派の間にはパーソナリティーの面で次のような違いがあるらしい。

  • リベラル派は、保守派に比べると、奔放。部屋にモノが溢れている(部屋が散らかっている)という意味でも奔放だし、内装がカラフルという意味でも奔放。一方で、保守派の部屋は、リベラル派の部屋に比べると、整理整頓が行き届いていて、明るくて(照明の明るさが強くて)、内装はありきたり。リベラル派は保守派よりも蔵書の数が多くて、蔵書のジャンルも広い。
  • 保守派は、リベラル派に比べて、曖昧さへの耐性が低い(曖昧さを嫌う)。ジョージ・W・ブッシュ(第43代米国大統領)の発言――「私の仕事は、発言に含みを持たせることではなく、何を考えているかをはっきりと伝えることだ」/「私は決定者なのだ」――がそのいい例。
  • 保守派は、リベラル派に比べて、死への恐れが強い。
  • リベラル派は、保守派よりも、開放的。知的好奇心が強いという意味でも、スリル好きという意味でも、新しいもの好きという意味でも、創造的という意味でも、刺激を追い求めがちという意味でも。
  • 保守派は、リベラル派よりも、実直。 几帳面という意味でも、ルールにきちんと従うという意味でも、義務を重んじるという意味でも、規律正しいという意味でも。
  • 保守派は、リベラル派よりも、即断即決を重んじる傾向にあり、一度決めたことは最後までやり通そうとする傾向が強い。
  • 「死」について考えるように仕向けると――心理学者が「死の顕在化」と呼ぶ心的状態に置かれると――、多くの人は保守寄りの意見に傾く。
  • 保守派は気弱な幼児だった過去を持ちがちな一方で、リベラル派は気丈な(自信のある)幼児だった過去を持ちがち。

ちなみに、私の部屋は散らかってるんだよね。保守かリベラルかに二分するんじゃなくて、もう少し細かく分類した方がいいんだろうかね。

「テッド・ノードハウスへのインタビュー:“脱成長”は気候変動への対策とならない」(2021年5月21日)

Interview: Ted Nordhaus on ecomodernism
Words by Nick Whitaker & Saloni Dattani
by Works in progress Issue 4, 20th May 2021

テクノロジーと環境は、友情関係にあるだろうか? それとも敵対してるだろうか? 本誌のニック・ウィテカーとサロニ・ダッターニが、ブレイクスルー・インスティチュートの所長であるテッド・ノードハウスと、気候政策、活動主義、環境現代主義(エコモダニスト)について幅広い議論を行った。

テッド・ノードハウスは、気候問題に対してテクノロジーによる解決を目指す環境政策シンクタンク、ブレイクスルー・インスティテュートの創設者兼エグゼクティブ・ディレクターであり、“Break Through : From the Death of Environmentalism to the Politics of Possibility(ブレークスルー:死亡した環境主義から可能性ある政治へ)”と“An Ecomodernist Manifesto(環境現代主義者によるマニフェスト)”の著書である。

――気候問題に取り組んでいる活動家達の中には、「脱経済成長」や「人口抑制」をハッキリと、あるいはそれとなく主張する人が多いように思えます。こういった活動家らは、何が正しくで、何が間違えていると思いますか? [Read more…]

ブランコ・ミラノヴィッチ「『資本主義だけ残った』 いくつかのマルクス主義的論点:ロマリック・ゴダンの書評への返答」(2020年10月4日)

Branko Milanovic “On several Marxist themes in “Capitalism, Alone”: My reply to Romaric Godin’s reviewglobalinequality, October 4, 2020

 ロマリック・ゴダン1 が “Capitalism alone” 仏語版(邦訳『資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来』〔西川美樹訳、みすず書房、2021年〕)についてとても刺激的な書評を最近書いてくれた。「資本主義に関するブランコ・ミラノビッチの不完全な考察」といういくぶん挑発的なタイトルだ。以下では、考察が不完全にとどまらざるをえない場合がある理由に加え、私の考えを更に少しだけ明確化し、可能であれば議論をさらに前に進めるために数点はっきりとさせておきたい。

書評の最初の部分にある「資本主義だけ残った」の主要点についてのゴダンの要約は素晴らしい出来で全く異論はないが、その例外として共産主義に関する私の定義について明確化したい。その上で、ロマリック・ゴダンの非常に具体的な4つの批判をおさらいした上で、それらへの回答を試みることとする。

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  1. 訳注;経済分野を主とする仏ジャーナリスト。Mediapart所属。元La Tribune紙副編集長。 []