2週間前の記事で,中国が総需要不足に苦しんでるって話をして,解決法も論じておいた(日本語版).その解決法とは,中央政府が A) 銀行と地方融資平台に救済措置をとることと,B) 財政・金融の両方で刺激策を打つことだ.
ひょっとして,習近平がぼくのブログを読んだのかもね [n.1].中国は,もっと本格的な刺激策を打ち出している:
この火曜に,中国人民銀行は,世界中に生中継するという珍しいかたちをとって記者会見を開き,市場心理に息を吹き返させるための先陣を切った.いわばこれまで温存していた武器庫を開いて,株式市場に資金を投入し,借り入れコストを引き下げるという.その翌日にも引き続き前向きなニュースを提供した.すなわち,市中銀行を対象とする1年間の融資の金利〔政策金利〕を記録的な下げ幅で引き下げつつ,政府が異例の現金給付を実施するとともに,仕事のない新卒者の一部を対象に補助金を出すことを発表した.
これに続いて,木曜には,習近平が率いる24人政治局員がさらに経済成長志向のよいニュースを提供した.財政支出を拡大し,不動産価格の「下落阻止」をはかると約束した.また,「大衆の懸念に対応をとるために必要」と述べて,新たに消費の後押しに力を注ぐことも明らかにした.(…)この一連の政策発表は,これほど長らく大規模な刺激策を拒否して自信を見せてきた習近平が中国18兆ドル経済の運営のやり方を大きく変える転換点となった.
中国の株式市場はすぐさま急上昇を見せた.
さらに心強いことに(’少なくとも,中国に成長を続けてほしいと思っているなら心強い話だ),習近平の政府は,どうやら中国の金融機関を救済するかもしれない:
中国政府は,最大1兆人民元(約1420億ドル)の資本を主要な国有銀行に注入することを検討している.その目的は,苦境にある経済を支える銀行の能力を高めることにある.(…)資金は,主に新たな特別国債の発行によって調達される見込みだ.(…)詳細はまだ決まっておらず,変更される場合もあると,関係者は語った.こうした措置がとられたなら,実に2008年グローバル金融危機いらいはじめて,北京が主要銀行に資本注入を行うこととなる.
こういう話に不慣れな人に補足すると,「資本注入」っていうのは,「銀行にお金をあげる」って意味だよ.つまり,救済措置をとるってこと.
おそらく,刺激策よりもこっちの方がいっそう重要だ.というのも,銀行に貸し出しを再び行わせることこそ,持続的な景気回復のカギだからだ.中国びいきの人たちは,ずっとこんなことを言っていた――「中国の銀行が抱えてる不良債権は問題にならない,なぜって銀行と国家は一体だからだ.」 この説を「単一国家」理論という (”unitary state” theory).この理論はおそらく間違ってる.中国の銀行にはそれぞれ独自のインセンティブがはたらいていて,失敗して処分されるのを恐れている.銀行に資本を注入すれば,再び貸し出す自信がもたらされる.資本注入のおかげで,失敗したときのクッションが生まれるからね.
このプロセスの最終段階は,中国の地方融資平台の救済だろう.地方融資平台は,中国の地域経済にとってすごく重要になっている.ただ,たんに銀行を救済して大型の財政・金融刺激策を打つだけでも,中国の景気後退を短くすませ痛手を和らげる上では大きな効果が生じるはずだ.
[n.1] わはは,まさかね.
[Noah Smith, “China wakes up to macroeconomic reality,” Noahpinion, September 30, 2024]