タイラー・コーエン 「『笑顔』は何を物語っているか?」(2007年2月26日)

●Tyler Cowen, “Don’t smile too much”(Marginal Revolution, February 26, 2007)


ジョン・ティアニー(John Tierney)のブログで引用されているティモシー・ケテラー(Timothy Ketelaar)の発言 [1]訳注;以下の論文にまとめられている実験結果を踏まえた発言。 ●Timothy Ketelaar et al., “Smiles as Signals of Lower Status in Football Players and Fashion Models: … Continue readingより。

「『笑顔』というのは、その人の内なる感情(幸せな気持ち)が表(顔)に出たものと捉えられがちですが、その人のステータス(地位)についての情報を伝達する役目も果たしているようです。どういうことかと言うと、ステータスが低い人ほど、笑みを浮かべがちなようなのです。笑顔には、種類がいくつかある――幸せな感情が自然と顔に表れた「真の笑顔」(デュシェンヌ・スマイル)だったり、はにかみ笑いだったり――という事実がいくらか関係しているのかもしれません。霊長類の動物同士の間では、はにかみ笑いは、相手に対する譲歩を意味するものと受け止められる傾向にあります。よく笑顔を浮かべていた大統領といえば、ジミー・カーターですね。カーターに比べると、ジョージ・ブッシュは笑顔を浮かべることがずっと少ないですね。カーターは、温和でフレンドリーな(親しみやすい)人柄というのが世間一般の評価です。威圧的とか力強いとかいうようには受け止められていません。ブッシュは、それと逆ですね。カーターに比べると、温かみやフレンドリーさは感じられないものの、威圧感や力強さを備えた人柄だと受け止められています」 。

もう一丁

「安価なブランドの広告に起用されているモデルほど、笑顔を浮かべてポーズをとっている傾向にあります。その理由は、ブランドのステータスの低さ(近づきやすさ、親しみやすさ)を伝えようとしているためだと思われます。広告を目にした顧客にいい気持ちになってもらおうとしているわけではなく。ブランドのステータスの高さを伝えるか、(広告を目にした)顧客にいい気持ちになってもらうか。広告業者は、そのどちらか一方を選ばなければならないことが時にあります。高級ブランドの広告でモデルが笑っていないのは、そのブランドのステータスの高さ(格の高さ)を伝えようとしているからです。広告を目にした顧客を不快な気持ちにさせようとしているわけじゃないんです。エルヴィス・プレスリーがステージ上でせせら笑いを浮かべても、みんなから嫌われたりはしませんでした。やっぱり好かれていました。せせら笑いというのは、ステータスの高い人物がよくするものなのです。せせら笑いをしたりして相手を見下す人物というのは、いい印象を持たれないのが普通です。しかしながら、その人物のステータスが高いようだと、話は別です。多くの人は、ステータスの高い人物を崇めて、そばにいたいと感じるものなのです。何とも皮肉めいていますが、高級ブランドの広告は、ネガティブなシグナル――笑顔の封印――を使って、ポジティブなイメージ――ステータスの高さ――を生み出そうとしているわけですね」。

References

References
1 訳注;以下の論文にまとめられている実験結果を踏まえた発言。 ●Timothy Ketelaar et al., “Smiles as Signals of Lower Status in Football Players and Fashion Models: Evidence that Smiles are Associated with Lower Dominance and Lower Prestige(pdf)”(Evolutionary Psychology, vol. 10(3), pp. 371-397)
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