タイラー・コーエン 「投票行動の新理論 ~仲間がここにいるよ~」(2008年11月4日)

選挙でいずれかの候補者に票を投じるのは、利他的な行為という面を持っている。なぜなら、ある候補者に票を投じると、その候補者を支持している人たちに他にも同じ意見の持ち主がいるということが伝わり、その人たちの幸福度を高めることにつながるからである。
画像の出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1067215

「態度依存型の利他主義、投票率、投票行動」と題された論文で、投票行動の新理論が提示されている。論文の著者は、ジュリオ・ローテンバーグ(Julio Rotemberg)。私のお気に入りの経済学者の一人だ。アブストラクト(要旨)を引用しておこう。

本稿では、目的を持って政治に参加する有権者の行動を説明するために、人間の心理に関する二通りの想定に立脚したモデルを提示する。多くの人は、自分と同じ意見の持ち主のために尽くそうとしがちというのが一つ目の想定である。他人が自分の意見を支持してくれると、自尊心が高まって幸福度が増すというのが二つ目の想定である。選挙でいずれかの候補者に票を投じるのは、他人を思いやる利他的な行為という面を持っている。なぜなら、ある候補者に票を投じると、その候補者を支持している人たちに他にも同じ意見の持ち主がいるということが伝わり、その人たちの幸福度を高めることにつながるからである。本稿での分析結果によると、投票するのにいくらかコストがかかり、同じ意見の持ち主のために尽くそうとする気持ち(利他心)がそこまで強くなくても、均衡における投票率の値はかなりの高さになる。本稿で組み立てられたモデルを使えば、選挙が接戦であるほど投票率が高くなる現象だけでなく、当選する見込みがない泡沫候補に票が投じられる現象も難なく説明できる。モデルのパラメータの値によって、泡沫候補を支持している有権者が有力候補に票を投じる――「戦略的投票」に手を染める――こともあれば、有力候補から泡沫候補へと「票が流れる」こともあるのだ。


〔原文:“New models of voting”(Marginal Revolution, November 4, 2008)〕

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