もう何年ものあいだ,「アメリカの賃金は何十年も上がってない」というグラフや言辞やミームがあれこれと洪水のように出回っている.たとえば,バーニー・サンダースは定期的にこんなことを言っている――賃金は50年前よりも下がっているのですよ.でも,それってホントだろうか?
ちがうよ.この主張の根拠は,ただひとつのデータセットだ:民間部門の平均時間給を消費者物価指数で割った数字が,それだ.この賃金指標を見ると,たしかに1973年を2019年の賃金は下回っている.でも,かわりに PCE 物価指数を使うと――つまり,過去に消費されていたモノではなくみんなが現在消費しているモノの価格変動を見てる数字を使うと――様相は一変する:

これだけでも,アメリカ経済全体が賃金成長をもたらしているのを示すのに十分だ(もちろんもっと伸びててくれればそれに越したことはないけど).でも,賃金トレンドに関してぼくらが個人レベルでほんとに気にかけてるのは,こんな2つの問いの組み合わせだろう:
「典型的な人の賃金はその間にどれくらい上がってきた?」
「若い人たちは,親が同年齢だったときよりも稼いでる?」
経済イノベーション・グループのベン・グラスナーが,優れもののグラフをつくっている.これをひと目見れば,いまの2つの問いの答えがわかる:

サイレント世代をのぞいて,アメリカのどの世代でも,働き出してから最初の20年で所得は力強く伸びている.それに,X世代も,27歳以降にベビーブーマー世代より多く稼ぐようになっているし,ミレニアル世代は25歳ごろに X世代よりも稼ぎが増えているのが見てとれる.世代間の年齢差が離れれば離れるほど,世代間の所得の差はしだいに開いてきている.
そして,最重要なのはこれだ――いまの若者であるズーマー世代は,のっけからミレニアル世代・X世代・ブーマー世代の賃金を追い越している.Z世代は,2010年代前半から続くアメリカの堅調な賃金再加速に恩恵を得ている.
もしも,「アメリカ経済では時が過ぎても賃金が高まってきてない」なんてキミに言ってくる人がいたら,その人はただただ間違ってる.
[Noah Smith, “American wages really have gone up,” Noahpinion, July 8, 2025]