タイラー・コーエン 「サッカー、野球、レヴィット」(2004年2月24日)

スティーヴン・レヴィットによると、サッカーのPKではボールをゴールのど真ん中に蹴り込むべきで、ビリー・ビーンは革新者なんかじゃないらしい。

フィナンシャル・タイムズ紙 [1] 訳注;リンク切れ。スティーヴン・レヴィット(Steven Levitt)の研究――それも、スポーツを対象にした研究――を紹介している。簡にして要を得た一節を引用しておこう。

ヨーロッパでは、レヴィットの名は「PK(ペナルティーキック)論文」の著者の一人として轟(とどろ)いている。件の論文 [2]訳注;以下がそれ。 ●P.-A. Chiappori, S. Levitt and T. Groseclose (2002), “Testing Mixed-Strategy Equilibria When Players Are Heterogeneous: The Case of Penalty Kicks in … Continue readingはレヴィットを含めて3人での共著というかたちをとっているが、フランスとイタリアのプロサッカーリーグの459回分ものPKをビデオで隈なくチェックしたことがあるのは、おそらくこの3人くらいのものだろう。彼ら3人の論文では、ゲーム理論から導かれる複雑極まりない予測の妥当性が検証されているが、PKでボールを蹴り込むならゴールのど真ん中を狙うのが最善というのが彼らの結論だ。その理由は、ゴールキーパーはいつだってどちらか(右か左か)にダイブする(飛ぶ)からだという。しかしながら、現実はどうなっているかというと、キッカーがボールをど真ん中に蹴り込むことは滅多にない。「そうなっている(PKでボールがゴールのど真ん中に蹴り込まれることが滅多にない)のは、ど真ん中に蹴ってキーパーに止められでもしたら物凄く恥ずかしいからというのも理由の一つなんじゃないかと思いますね」とレヴィット。

レヴィットは、マイケル・ルイス(Michael Lewis)の『マネー・ボール』〔邦訳はこちら〕についてはどう思ってるんだろうか?

優れた選手を発掘するために使える統計を見つけ出したプロ野球の球団についてあちこちで喧(やかま)しく話題にされている。そのきっかけとなったマイケル・ルイスの『マネー・ボール』では、オークランド・アスレチックスの革新者と目されているGM(ゼネラルマネージャー)に焦点が当てられているが、レヴィットも『マネー・ボール』を読んだそうだ。しかし、心を動かされなかったという。「『重要だ、重要だ』と騒がれている統計データを調べてみると、アスレチックスはどれもこれも平均値でしかないんですよ! ビリー・ビーン(オークランド・アスレチックスのGM)が何かうまいことをやってのけたことを示す証拠はほとんど見つからないんです」とレヴィット。

私の記憶では、貧乏球団だったアスレチックスがお金をかけずに(安上がりで)いいチームを作り上げたというのがルイスの言い分だったはずだ。ビリー・ビーンのおかげで、アスレチックスが毎年優勝するのが当然の常勝軍団に生まれ変わった・・・なんてことまでは言われていないはずだ。用心深い研究者として知られているレヴィットのために公平を期しておくと、おそらくは文脈を無視して発言が引用されてしまったんだろう [3] … Continue reading

この記事に気付くことができたのは、J・チャールズ・ブラッドベリ(J. Charles Bradbury)のおかげだ。感謝する次第。彼のブログもチェックすべし。


〔原文:“Steve Levitt on sports”(Marginal Revolution, February 24, 2004)〕
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References

References
1 訳注;リンク切れ。
2 訳注;以下がそれ。 ●P.-A. Chiappori, S. Levitt and T. Groseclose (2002), “Testing Mixed-Strategy Equilibria When Players Are Heterogeneous: The Case of Penalty Kicks in Soccer(pdf)”(American Economic Review, vol. 92 (4), pp. 1138-1151)
3 訳注;レヴィット本人の釈明によると、アスレチックスが強くなったのは、攻撃面が改善されたおかげではなく――『マネー・ボール』で強調されているところとは違って、アスレチックスは「出塁率」が高いおかげで得点数がとりわけ多いチームというわけじゃない――、守備面が改善されたおかげ――防御率が低いおかげ――だったということが言いたかったらしい。
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