ペース大学ロー・スクールに籍を置くブリジット・クロフォード(Bridget J. Crawford)が興味深い話題を提供してくれている。論文のアブストラクト(要旨)を引用しておこう。
この小論では、「景気」と「女性の髪」の関係について考察を加える。景気が低迷して生活が不安定な最中に女性がヘアケア(髪の手入れ)のためにお金をどのように使っているかを調べると、ジェンダーの観点から経済にメスを入れる手掛かりが得られる可能性があるのだ。
景気が低迷すると、白人女性をターゲットにしたヘアケア商品(自宅で髪の手入れをするための商品)の売り上げが伸びる傾向にある。主要メディアの報道によると、250ドルかけて美容院に通っている女性も、景気が低迷すると、美容院に行く頻度を減らそうとするという。美容院に行くのをやめて、自宅で自分で髪を染める女性も出てくる。肌の色が白くて白髪の女性は、老いていて(働くのに適していない/魅力的じゃない)、盛りを過ぎている(仕事ができない/性の対象として見れない)女性というイメージを抱かれがちなのがアメリカ社会の実情だ。白人女性が白髪を染めたり、地毛とは別の色に髪色を保とうとするのは、まだまだ働けるし仕事もできるというイメージを保とうとしているのに加えて、異性(女)として見られようとしている面があるのだ。
その一方で、アフリカ系アメリカ人女性は、社会階層の違いを問わず、景気が良くても悪くてもヘアケアに対するお金の使い方をそんなに変えない――例えば、景気が悪くても、美容院に行く頻度を減らさない――ようだという。
アブストラクトの残りの部分を以下に引用するが、ガラリとトーンが変わっている。
アフリカ系アメリカ人の一部の法学者によって、黒人女性を取り巻く様々な場面――私生活、職業生活、社会生活、裁判――で「髪」が複雑な役割を果たし得る可能性について度々(たびたび)言及されてきている。女性の髪というのは、人種だとか特権だとかとの絡みで複雑なシグナルを送る役割を果たしているわけだが、一部の白人女性がその事実にぶち当たるのは景気が低迷している時だけに限られるようである。
いつ見ても素晴らしいBookforumで紹介されていて知った論文だ。「反循環的な資産」ネタはこれまでに何度も取り上げていて、シリーズ化されるまでになっている。過去の回については、こちらを参照されたい。
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「文化面における反循環的なトレンド」って何かあるだろうか? 言い換えると、景気が悪くなると、盛り上がりを見せるトレンドって何かあるだろうか? こちらの記事では、男性の髭(ひげ)がその一つに挙げられている――景気が悪くなると、男性が髭を伸ばし出すようになるという。そこまでしっかりした裏付けがあるわけではないけれど――。ジョージ・テイラー(George Taylor)が1926年に主張しているところによると、景気が良いと、女性のスカートの丈(長さ)が短くなるという。それじゃあ、反対に景気が悪いと、スカートの丈が長くなるっていう話になりそうだ。こちらの記事によると、景気が悪いと、ディストピア系のSF映画が鳴りを潜める(公開本数が減る)らしい。
どの話が一番もっともらしい(のがあるとして)と思う?
〔原文:“The countercyclical asset, a continuing series, white women’s hair products edition”(Marginal Revolution, February 28, 2011)/“Are there countercyclical cultural trends?”(Marginal Revolution, March 2, 2008)〕