「我々は『無知の海』に囲まれた島の上に住んでいる。我々が住んでいる『知識の島』が大きくなるにつれて、『無知の海』と接している海岸線の長さも伸びる」
by ジョン・アーチボルト・ホイーラー(John Archibald Wheeler)
私のお気に入りのメタファー(比喩)だ。どうしてお気に入りなのかというと、まず第一に、その通りだと思うからだ。例えば、経済学についての知識が深まれば深まるほど、見込みがありそうに思える研究プロジェクトの数も増えていく。第二に、知れば知るほど知らないことが増えていくとは言っても、知らないことが増えていく度合いについて楽観的と言えるからだ。というのも、「知識の島」が円に近い形をしているとしたら、島が大きくなるにつれて、知識の量は島の直径の二乗(≒面積)に比例して増える一方で、「無知の海」と接している海岸線の長さ(=円周)は島の直径に比例して伸びる(増える)に過ぎないからだ。第三に、『科学の終焉』(by ジョン・ホーガン)とかいう類(たぐい)の言い分がいかにわかっていないかをあぶり出してくれるからだ。『科学の終焉』なんてことを口にするのは、「無知の海」と接している海岸線がどのくらいの長さなのかをはっきりと見通せるだけの知識(科学の分野における広範な知識)が備わっていないことを白状しているようなものなのだ。
〔原文:“The Expanding Shoreline of Ignorance”(Confessions of a Supply-Side Liberal,
May 01, 2021)〕