タイラー・コーエン 「トランプを支持しているのはどんな層?(その2)」(2016年8月12日、10月28日)

●Tyler Cowen, “The roots of Trump support” (Marginal Revolution, August 12, 2016)


トランプを支持している当人は苦境に立たされているとは限らないが、隣人が苦境に立たされている・・・ということのようだ。

世論調査の老舗であるギャラップ社が新たに公表した分析結果は、巷(ちまた)に流布している説の不備を浮き彫りにしている。ギャラップ社が過去1年間にわたり計8万7千人を対象に行った聞き取り調査の結果によると、トランプに好意的な有権者は、トランプに嫌悪感を抱いている有権者よりも、海外との貿易や移民の流入によって生活を脅かされがちかというと、そうではないというのだ。トランプの支持者は、その他の同胞と比べて所得が低い傾向にあるわけでもないし、失業中である可能性が高いわけでもないという。

トランプを支持している当人は、経済的に比較的恵まれているかもしれないが、隣人たちはそうじゃない。何らかの苦境に立たされている。若くして命を失う白人や、貧困の連鎖からなかなか抜け出せないでいる若者たちが近くに住んでいるのだ。

ギャラップ社による調査では、誰がトランプを支持しているのかが高度な統計分析を武器にして探られている。これまでで最も包括的な調査だと言える。この調査を担当したジョナサン・ロズウェル(Jonathan Rothwell)は、聞き取り対象者がどこに住んでいるかをZIPコード(郵便番号)に照らして分類し、高度な統計分析を加えている。そして、得られた結果をその他のデータと照らし合わせてチェックしている。

マックス・エーレンフロイント(Max Ehrenfreund)&ジェフ・ギュオ(Jeff Guo)が連名で執筆している(毎度の如くあっぱれな)Wonkblogの記事からの引用だ。もう一丁、引用しておこう。

白人は他の層に比べて裕福な傾向にあり、トランプの支持者の圧倒的多数が白人だ。とは言え、このことは共和党員全般についても言えることだ。しかしながら、ロズウェルが白人の共和党員に的を絞って詳しく分析した結果によると、同じ白人でも裕福であるほど、トランプに好意的な傾向にあることが見出されている。

・・・(中略)・・・

ロズウェルの分析結果は、懐事情だけではトランプの人気を説明できないことを示唆している。トランプは、学歴がそんなに高くない男性層にも人気があるが、トランプの支持者の間には、懐事情だとか学歴だとかとは別の何らかの共通する特徴があるのだろう。

トランプに支持が集まっている理由として「海外との貿易」や「中国」の役割に重きを置く研究もあるが、そんなの大したことないというのがロズウェルの言い分なわけだ。ロズウェル本人による要約は、こちらを参照されたい。

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●Tyler Cowen, “United States fact of the day: who supports Trump?”(Marginal Revolution, October 28, 2016)


「アメリカから職が奪われている」というドナルド・トランプの訴えを何度も耳にしているうちに、トランプの支持者は海外との貿易のせいで苦汁をなめさせられている人たちなんだろうなと思ってしまっているかもしれない。ところがどっこい。ギャラップ社が明らかにした最新の分析結果によると、真実は真逆のようなのだ。

・・・(中略)・・・

「何をどう測っても一切見当たらないんです。トランプを支持しているのが、製造業部門で働いていて職を失った労働者である可能性が高いことを示す証拠というのが」。ギャラップ社のシニアエコノミストを務めるジョナサン・ロズウェルは、電話でのインタビューにそう答えた。

ロズウェルが率いた調査では、どういう有権者がトランプを支持しがちかが探られているが、製造業が核となっている地域に住んでいるようだと、その有権者がトランプを支持する確率は1%低下するという結果が得られている(人種、所得といったその他の要因の影響を除去するために、調整が加えられている)。

・・・(中略)・・・

その一方で、製造業の影が薄い地域に住んでいるようだと、その有権者がトランプを支持する確率は1%高まるという。

ガス・ルビン(Gus Lubin)が執筆しているBusiness Insiderの記事より。

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