●Alex Tabarrok, “The Sharks Get Stung”(Marginal Revolution, February 15, 2016) [1]訳注;原エントリーのタイトルを訳すと、「まんまと騙されたシャークたち」という意味になる。“get … Continue reading
金曜日にテレビで『Shark Tank』 [2] … Continue readingを見ていたら、ミネソタ出身の二人の麗しい女性が「Bee Free Honee」なる商品を売り込んでいた。リンゴから作られた「はちみつ」だという。値段も安くてベジタリアンの希望にも沿うというのだから、名案じゃなかろうか? そうかもしれない・・・が、その二人のプレゼンを聞いていたら、納得しかねる発言があった。この商品のおかげでミツバチが救われる、というのだ。この商品(リンゴを原料とする「はちみつ」)のおかげで従来の「はちみつ」に対する需要が減れば、ミツバチが養蜂家によって酷使されることもなくなってミツバチの数も増える、というのだ。
「シャーク」の一人であるケヴィン・オーレアリー(Kevin O’Leary)がいつものように痛烈な調子で、その二人が語る「誤謬」をけちょんけちょんに叩くに違いないと待ち構えていた。別の「シャーク」であるマーク・キューバン(Mark Cuban)が、「常識」っぽく聞こえるその二人の言い分を一刀両断するに違いないと待ち構えていた。しかしながら、そうはならなかった。「シャーク」たちは、目の前にある「血迷った」商品にこぞって食いついたのだ。そんなわけで、私の出番というわけだ。
従来の「はちみつ」に対する需要が減れば、ミツバチに対する需要も減る。安くて高品質の代用品(リンゴを原料とする「はちみつ」)が登場した先に待っているのは、ミツバチたちが花粉を運びながら花々の間を優雅に飛び交うのどかな世界なんかではなく、「ミツバチ無き世界」(beepocalypse)なのだ。「Bee free honee」がミツバチを「救う」とすれば、内燃機関が馬を「救った」のと同じ意味で「救う」ことになるだろう。
(追記)蜂群崩壊症候群(CCD)のことが気になっている人もいるかもしれないが、誰よりも気にしているのが養蜂家たちだ。養蜂家たちはうまく立ち回っているようで、ミツバチによる「はちみつ」の生産も「送粉サービス」の提供もどうにか持ち堪(こた)えているようだ。そればかりか、全米におけるミツバチのコロニー(群)の数は、過去20年間で今が一番多いらしいのだ(最新のデータはこちら)。CCDについては完全に解決されたとは言い難いが、従来の「はちみつ」に対する需要こそが、ミツバチによる「送粉サービス」に対する需要こそが、CCDに抗(あらが)おうとする養蜂家たちの努力を支えているのだ。覚えておいてもらいたいが、従来の「はちみつ」が見向きもされなくなってしまったら、ミツバチに構ってくれるのは「私の趣味ですか? クローゼットの中でミツバチを飼うことです」と語る人間(趣味でミツバチを飼う人間)くらいしかいなくなってしまうのだ。
(追々記)「Bee Free Honee」(リンゴを原料とする「はちみつ」)を開発した二人の女性は、(デレク・パーフィットが言うところの)「いとわしき結論」(repugnant conclusion)に対する洗練された立場を表明しようと企(くわだ)てて・・・、いや、それはないだろう。
情報を寄せてくれた Max に感謝。