カリフォルニア州立大学ノースリッジ校に籍を置く経済学者のグレン・ホイットマン(Glen Whitman)が目を見張るような試みに乗り出している。題して「二カ条(The Two Things)」。
数年前に、バーで見知らぬ男性と喋っていた時のことだ。私が経済学者であることを伝えると、次のような反応が返ってきた。「ほ~。そうなんですか。・・・経済学の分野における二カ条って何でしょうか?」
「はい?」と巧みに応じてみせる私。
「二カ条ですよ。二つ。どういう分野であれ、その分野について知っておく必要があることっていうのは二つくらいしかないんですよ。あとの残りは、その二つの応用にすぎないんです。その二つ以外は重要じゃないんです」。
「なるほど」と応じる私。「わかりました。経済学のエッセンスを二カ条にまとめると、こうなります。その1:インセンティブは重要なり(Incentives matter)。その2:無料の昼飯なんてものはない(There’s no such thing as a free lunch)。」
これ以上の答えを見つけるのは難しいだろうね。ところで、ホイットマンは、色んな分野の二カ条を読者から募って集めている。実に壮観だ。一部を以下に紹介しておこう。
*マーケティングにまつわる二カ条(Racehorseの案)
- 自社製品の買い手を見つけ出せ。
- 一人でも多くの買い手を見つけ出せ。
*ソフトウェア・エンジニアリングにまつわる二カ条(Mattの案)
- (ソフトウェアの)安定性、計画の完遂(フィーチャーコンプリート:主要機能の完全実装)、納期遵守。このうち二つを選べ。二つだけを選べ。
- 一人の偉大なプログラマーは、二人の優秀なプログラマーのタッグにまさる(一人の偉大なプログラマーがいない場合は別)。
*歴史教育にまつわる二カ条(Jonathan Dresnerの案)
- 学生の記憶に残るのは、よくできた物語だけ。その物語についての30分に及ぶ多角的な分析は忘れ去られる。
- 「歴史教育は答えを教える」と学生は思っているが、「歴史教育は問いを教える」というのが真相。
*美術批評にまつわる二カ条(TheLetterMの案)
- 奇抜な作品でなければ、批評家に興味を持たれない。
- 奇抜な作品であれば、批評家の他には誰にも興味を持たれない。
*ライティング(文書作成)にまつわる二カ条(Nicholas Kronosの案)
- 必要なことを書き込め。
- 必要じゃないことは削れ。
*世界征服にまつわる二カ条(Tim Leeの案)
- 分割して統治せよ。
- 冬のロシアには攻め込むな。
*スター・トレックにまつわる二カ条(Tim Leeの案)
- 赤シャツを身にまとって転送されるなかれ。
- 邪(よこしま)なコンピュータを説き伏せて自爆させるのはいつだって可能。
私もささやかながら張り合わせてもらうとしよう。
*人生にまつわる二カ条
- 勇敢たれ、懸命に働け、貯蓄せよ。できるだけ長く生きる(長期的に生き長らえる)ために。
- 長期的には、誰もが皆死ぬ [1] 訳注;ケインズの有名な言葉。。
〔原文:“The Two Things”(Marginal Revolution, April 5, 2004)〕
References
↑1 | 訳注;ケインズの有名な言葉。 |
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