U2のボノがニューヨーク・タイムズ紙のインタビューを受けている。一部を引用しておこう。
・・・(略)・・・活動家として最初の一歩を踏み出した時と比べると、考えがまるっきり変わったんです。はじめのうちは、資源を再分配するだけで、どんな問題でも解決できるって思ってました。でも、今ではそうじゃないって理解してます。活動家をしていてハッと悟る面白い瞬間っていうのがあるんですよ。極度の貧困から抜け出すにはどうすればいいかというと、・・・商業に頼ればいいんですよ。起業家精神旺盛な資本主義に頼ればいいんですよ。たくさんの時間をかけてアフリカ大陸を隅から隅まで見て回ってきましたけど、彼らも僕らと変わりません。僕らがそうであるように、少しくらいグローバル化が進んだって構いやしないんですよ。
もう一丁。
Q:トマ・ピケティ(Thomas Piketty)の名前を出すのは、あなたにとって少々都合が悪いんじゃないでしょうか? 彼は、税制を通じて格差を是正しようと語っているわけですし。
A:ええ、累進課税を推してますよね。理解できますよ。でも、僕がどうしても気になってしまうのは、最底辺の10億人がどうしてるかっていう問いなんです。貧困層の中の最下層である彼らが彼らなりに必死に生きてる時に、彼らのためにプラカードを掲げて政治活動を起こすっていうんなら注意が必要です。上から目線になりやすいですからね。資本主義は野獣です。だから、飼いならす必要があります。でも、グローバリゼーションのおかげで貧困から抜け出せたっていう人の数は、あれやこれやの主義のおかげで貧困から抜け出せた人の数よりも多いんですよ。他にもっといい案があるっていうんなら、喜んで転向します。実業家が英雄になれるなんて考えに靡(なび)くわけなかったんです。でも、どこかしらの村とかのコミュニティーに仕事を持っていって、そこの人たちを手厚く扱えば、英雄になれるんです。僕はそう悟ったんです。神様のお力のおかげで作詞家が自作の歌詞を引用するのが食い止められてますが、その禁を犯すとしましょう。僕がこれまでに書いたそこそこの出来の歌詞っていうのが一つくらいあるとするなら、「敵を慎重に見極めろ。誰が敵かで君がどうなるか(どんな人間になるか)が決まってくるからだ」(“Choose your enemies carefully because they will define you”)がそれかもしれません。特権層(エスタブリッシュメント)を敵にするっていうのは、ちょっと安易な気がします。そうじゃないですか?
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〔原文:“The wisdom of Bono”(Marginal Revolution, October 27, 2022)〕