アミハイ・グレーザー(Amihai Glazer)の論文のアブストラクト(要旨)より。
有権者が選挙で誰(どの候補者)に票を投じるかをどうやって決めているかというと、自分と同じ好みの持ち主(同じ政治観の持ち主/同じ政党の支持者)を喜ばせたり、自分と違う好みの持ち主(自分とはそりが合わない政治観の持ち主/自分が支持している政党を嫌っている人たち)を怒らせたりするのが決め手になっているのかもしれない。有権者がそのような動機で票を投じているとしたら、選挙に関わるその他の現象――(各自の一票が選挙結果を左右する可能性なんてほとんどないにもかかわらず)投票率が思いのほか高いこと、自分が支持しているわけではない候補者に票を投じること(「戦略的投票」)、(中位投票者定理が説くところに反して)それぞれの候補者が掲げる公約が似通っていないこと――も無理なく説明することができる。
2008年にPublic Choice誌に掲載された論文だが、書かれたのは2008年よりも前に違いないと思う。グレーザーは、「グレーザーの法則」の生みの親でもある。すなわち、ミクロレベルの経済現象で謎に出くわしたら、「税金か詐欺のどちらかが――あるいは、どちらも!――絡んでいると思え!」という経験則の生みの親なのだ。今回の選挙期間中でも当てになる経験則になるかもしれない。
情報を寄せてくれたエリ・ドゥラード(Eli Dourado)に感謝。
〔原文:“Voting to anger and to please others”(Marginal Revolution, July 28, 2016)〕