タイラー・コーエン 「家をきれいに保つのが難しいのはなぜ?」(2006年10月11日)

●Tyler Cowen, “Why is it so hard to keep the house clean?”(Marginal Revolution, October 11, 2006)


「汚いなあ」。「散らかり放題じゃないか」。そのようにぶつくさ言いたいだけで、実のところは、現状の散らかり具合は「最適な」状態というのが一番シンプルな仮説だ。本音では、片付けに今よりも時間をかけたいとは思っていないわけだ。

行動経済学の専門家の言い分によると、同じような過ち(あやまち)を何度も何度も繰り返すのが人間という生き物だという。それがヒューマンなのだという。ヒューマンが犯しそうな「過ち」を以下に列挙してみるとしよう。

1. ヒューマンは、あちこちに散らかった書類(論文)や本を片付けたり、あちこちに積もったホコリを払ったりするが、近いうちにまた散らかってしまう可能性に備えて予防策を講じたりしない。言い換えると、当面のストレスを解消するのに必死になって、将来のストレス(近いうちにまた家の中が散らかるせいで抱え込むことになるストレス)を途方もなく高い割引率で割り引く傾向にある――極端に近視眼的・刹那的なところがある――のがヒューマンなのだ。

2. 「ただ乗り問題」に「うやむやな所有権」が付け加わる結果として、片付けてもすぐに散らかってしまう。「片付け」というのは、片側二車線道路のどちらか一方の車線を走行している車を何台か取り除くのに似ている。車(例えば、書類の山)が何台か取り除かれて一時的に余裕が生まれたとしても、別の車(書類の山)がその隙間にすぐに割って入ってくる。複数人が同居している家での「片付け」というのは、(ロードプライシングのようなものではなく)車の流れを別の車線に移動させているだけに過ぎないのだ。

根本的な解決策としては、同居人の持ち物をランダムに破壊したり、持ち物に「課税」するという手が考えられる。そうすれば、同居人の持ち物の数を抑えることができる。(何かを買う代わりに)貯蓄すればご褒美をあげるというのもありだ。貯蓄というのは、流動性が高くて(すぐに換金できて)、富を貯蔵するのに安上がりな手段でもあるのだ。

3. ヒューマンは、「在庫」(私物)の流動性(換金可能性)を過大評価する傾向にある。あまり役に立ちそうになかったり、何の役に立ちそうになくても、とにかく手元に何でも置いておきたがる。その背後では、授かり効果(endowment effect)も一役買っているのだろう。過去3年の間に一度も手を触れずにいる私物があれば、潔く捨てるべきなのだ。

4. ヒューマンは、「取っ散らかり」に慣れてしまえる(フレーミング効果)。そうだとすると、家をきれいに保とうとする同居人こそが、真の問題児なのかもしれない。ロバート・フランクが「地位財」への課税を求めているのとまったく同じ理由で、あいつに課税すべきなのだ。きれい好きなあいつに課税すべきなのだ。

関連するエントリーとして、“Tyler Cowen, Ramist”〔拙訳はこちら〕に加えて、「テニスボール問題」を論じたこちらもあわせて参照されたい。こちらのエントリー〔拙訳はこちら〕では、我流の家の片付け方を紹介している。

Total
0
Shares

コメントを残す

Related Posts