アレックス・タバロック 「ゾンビ襲来の数理モデル」(2009年8月16日)・「ゾンビ経済学」(2013年3月9日)/タイラー・コーエン 「『アンデッドの経済学』」(2014年7月10日)

●Alex Tabarrok, “Mathematics of a Zombie Attack”(Marginal Revolution, August 16, 2009)


今回紹介するのは、『Infectious Disease Modelling Research Progress』に収録されている論文(pdf)だ。アブストラクトを以下に引用しておこう。

ゾンビは、ポップカルチャーやエンターテインメントの世界で人気のキャラクターの一つである。死者が何らかの原因で突如ゾンビとして蘇り、生きている人間を次々と襲っていく。そして、ゾンビに襲われた(噛まれた)人間もまたゾンビとなって新たな獲物を追い求めていく。世にある娯楽作品の中では、そのように描かれることが多い。本論文では、ポピュラー映画に登場するゾンビの特徴を踏まえた上で、「ゾンビ襲来」の数理モデルを組み立てる。まずはじめに、ゾンビ感染に関する基本となるモデルを構築し、モデルの均衡を求めると同時に、均衡の安定性を検証する。さらには、数値シミュレーションも行う。次に、基本となるモデルに修正を加え、人間がゾンビ化するまでには一定の潜伏期間を要する――ゾンビに襲われた(ゾンビウイルスに感染した)人間はすぐにゾンビになるのではなく、一定の潜伏期間を経た後にゾンビ化する――との前提を置くことにする。その上で、ゾンビ(やゾンビウイルスに感染したものの、まだゾンビになりきれていない人間)の「隔離」やゾンビウイルスに効く「治療薬」(ゾンビ化した人間が再び普通の人間に戻ることを可能とする治療薬)の効果を調べる。そして最後に、定期的に「掃討作戦」を繰り返してゾンビの殺傷を試みた場合の効果を検証し、ゾンビの根絶が可能となる条件を求める。早い段階から積極果敢な掃討作戦に打って出る以外に「世界の終焉」シナリオ――ゾンビの襲来により、生きている人間が一人残らずゾンビとなり、文明が崩壊へと向かうシナリオ――を避けられる方法はない。本論文のモデルからはそのような結論が得られることになる。

この話題はBoing BoingサイトでCory Doctorowが紹介していたのを見て知ったもの [1]訳注;この論文の内容を日本語で詳しく解説したものとしては、例えば次のブログエントリーを参照のこと。 … Continue reading。感謝する次第。
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●Alex Tabarrok, “Zombie Economics”(Marginal Revolution, March 9, 2013)


「ゾンビ経済学」とは言っても、「セイの法則」だとかを槍玉に挙げてるわけじゃない [2] 訳注;「セイの法則」だとかを槍玉に挙げている「ゾンビ経済学」はこちら。文字通り「ゾンビの経済学」――正真正銘のゾンビを対象とした経済学――だ。グレン・ホイットマン(Glen Whitman)とジェームズ・ダウ(James Dow)の二人が、「『アンデッド』(特にゾンビと吸血鬼)の経済学」をテーマとする本の編集を進めている最中らしい。ロウマン&リトルフィールド出版社から出版予定とのことだ。

経済学の発想を使って「アンデッド」に関わる問題に切り込む。「アンデッド」を題材として経済学の方法論を問い直す。本書への寄稿をお考えの方々には、そのような姿勢で筆を進めていただきたいところだ。論文のアブストラクト(要旨)にしても、本文にしても、一般の読者でも近づきやすくて興味を惹かれるようなスタイルで仕上げてもらいたい。さらには、ポップカルチャーの分野における「アンデッド」の例――例えば、『トワイライト』シリーズや『バフィー ~恋する十字架~』、アン・ライスの一連の小説、『ワールド・ウォーZ』、ジョージ・ロメロ監督の作品の数々、『トゥルーブラッド』、『ウォーキング・デッド』等々――を引き合いに出しながら論を進めていってもらいたいところだ。

考え得るトピックの例を挙げておくと、「血市場」における需要と供給、「ゾンビ労働市場」の振る舞い、「アンデッド」の脅威への対応策に絡む政治経済学的な問題、ゾンビの襲来によって荒廃した経済の復興にまつわる問題、ゾンビや吸血鬼の行動が合理的選択理論に投げかける示唆等々ということになるだろう。

論文のアブストラクトの投稿を募集している最中とのことだが、詳しい投稿規定はこちらをご覧になられたい。

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●Tyler Cowen, “*Economics of the Undead* (arrived in my pile)”(Marginal Revolution, July 10, 2014)


『アンデッドの経済学』と題する本が出版された。編者は、ジェームズ・ダウとグレン・ホイットマンの二人。副題は、「ゾンビ、吸血鬼、陰鬱な科学」だ。執筆陣には、スティーブン・ホーウィッツ(Steven Horwitz)サラ・スウワイア(Sarah Skwire)イリヤ・ソミン(Ilya Somin)ホリス・ロビンズ(Hollis Robbins)らが名を連ねている。

References

References
1 訳注;この論文の内容を日本語で詳しく解説したものとしては、例えば次のブログエントリーを参照のこと。 ●“感染症モデルに基づくゾンビ大量発生時の危機管理指針”(A Successful Failure, 2009年8月29日)
2 訳注;「セイの法則」だとかを槍玉に挙げている「ゾンビ経済学」はこちら
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