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スコット・サムナー「大不況はアメリカの出生率を低下させたか」

[Scott Sumner, “Did the Great Recession reduce the US birth rate?” Money Illusion, September 22, 2017]

2~3年前,「大不況でアメリカ人の出生率が低下した」というのは通説だった.ありえる話ではあるけど,その主張を支える証拠の乏しさには目を見張るものがあった.たしかに2007年から2010年のあいだに出生率は下がったけれど,誰もが知っているとおり,相関は因果関係の証明にならない.しかも,逆方向を指し示す証拠はたくさんある.出生率の数字として広く受け入れられているものはこんな具合だ:

さて,「大不況でアメリカ人の出生率が下がった」という主張を否定する証拠をすべて考慮するとしよう:

1. 豊かな国は,貧しい国よりも出生率が大幅に低くなる傾向がある.だから,貧しさが出生率を下げることはなさそうだ.

2. 時系列の証拠がお好みの向きならこれはどうだろう――アメリカの出生率は100年にわたって低下傾向にある.アメリカは大幅に豊かになっていったにも関わらずだ.

3. たしかに,出生率は 1930年代に下がったけれど,好景気だった1920年代にはもっと急速に低下している.とくに急激にさがったのが 1955~73年,つまり専業主婦のいる核家族がたくさんいた最良の時期にガクンと減ったわけだ.1979~83年のふるわない時期には出生率は平坦だった.この時期の失業率は 10.8% にまで急上昇し,その後1990年代の好景気で下がっていった.おやおや.

4. 2016年に,出生率はかつてない最低の数字にまで下がった.アメリカのデータでかつてないほど実質世帯所得中央値が 2年続いて大きく伸びた時期にだ:

経済が出生率に影響をもたらすにはちょっとばかり時間差があるのかもしれない.だが,もし2017年の出生率が急上昇していないとわかったなら,大不況に関する通説を見直す必要があるかもしれない.

5. 出生率低下は他のどの集団よりも十代ではるかに急激に進んでいる:

アメリカでは,十代の母がますますまれになっている.新しい政府レポートによれば,2016年に十代の出産率は前年にくらべて 9% 下がった.十代の出産の記録的な低さは,長期的な傾向が継続している.

国立健康統計センターによれば,十代少女の出産率は1991年以来 67% 下落している.同センターは,出産の大多数 (99.9%) にもとづき2016年の予備的データを提示している.

2016年に,アメリカの出産数は総計 3,941,109 となった.2015年に比べて 1% の減少となる.女性 1,000人あたり 62 という出生率は,アメリカで記録的な低率だ.

Nationwide Children’s Hospital の青年期医学科所属の内科医 Elise Berlan 博士によれば,十代の出産率は「驚異的な低下」だという.

ここで興味深い点は,十代の出産がこうして急落した時期は,十代が大人らしい行動をとるのがますます遅くなってきた時期だという点だ.交際・セックス・車の運転・飲酒・喫煙・就労などの活動をする十代は,急激に減ってきている.大不況によって十代が交際・飲酒・免許取得をしなくなったのだ,ということはなさそうだ.もっとありそうなのは,景気循環とは無関係の要因に突き動かされて,もっと長期的な文化の変化が生じているということだ.(また,十代の出産率急落は大不況とともにはじまっていまにいたるまで継続中だという点にも留意しよう.)

文化的保守で我慢ならないのは,いつも若い世代について悲観的なところだ.昔をふりかえれば,1991年に,高い十代出産率とコカイン中毒によって機能不全の子供だらけの世代が登場することになりそうだと,アメリカの文化的保守は嘆いていた.その後,十代の出産は激減したし,犯罪や離婚といったさまざまな社会的苦痛の数字も大幅に低下した.アメリカの十代はすばらしく責任感ある行動をとっている(恐れながら私見を申し上げれば,責任感があるすぎるくらいに).

じゃあ,社会的保守はこの驚嘆すべき転回を言祝いでいるんだろうか? まさか.この文化的傾向を喜ぶかわりに,彼らは心配すべき新しい物事を見つけ出している――オピオイド使用の増加だとか,シングルマザーだとか,あるいは,移民のせいでアメリカ人の遺伝子プールに IQ の低い連中が加わってしまうとか.

文化的保守には,ぜひとも元気を出してもらいたい.(あるいは,マリファナが合法などこかの州で一服楽しんで落ち着いてほしい.)


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