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タイラー・コーエン「モロッコに関するあれこれ」

Tyler Cowen ”Thoughts about MoroccoMarginal Revolution, December 31, 2017


1 フェズはたぶん古代末期時代との連続的つながりを世界一はっきりと感じられる場所だ。モーシェ・ベン=マイモーンやイブン・ハルドゥーンはこの街で働いたが,フェズのメディナ1 を歩けば,そうしたことが簡単に実感できる。ベン=マイモーンの家で食事をすることもできるのだ2 (おすすめ。ほとんどが野菜料理)。フェズには西暦859年から続く世界で最も古い大学があるほか,継続して運営されているものとしては世界で最も古い図書館もあり,これは1359年からのものだ。

2 モロッコは,周辺地域の他国と比べてとび抜けて安定している。周辺地域というのが,中東,MENA(中東・北アフリカ),アフリカのどれであっても,それは変わりない。しかし,この比較的な安定の本質はまだ良く分かっていない。この辺を参照

3 僕が前回20年前に来た時と比べ,社会資本は高まっている。とはいえ,あらゆる取引においてぼったくられる可能性がある3 。そして英語を話すモロッコ人が電車のキャビンに顔を突っ込んできて,自分の兄弟は町で一番素晴らしいガイドであると言い,彼の電話番号を渡してきた場合には…スパッとそれ以上の会話は一切お断りとしたほうがいい。特にそいつの顔に傷がある場合には。

4 OECによれば以下のとおり

モロッコの輸出上位は車(29.5億ドル),被覆電線(24.6億ドル),混合鉱物もしくは化学肥料(18.3億ドル),リン酸(11.4億ドル),女性向け不織衣料(10億ドル)…

事態はこれよりも悪い可能性があるが,いずれにせよ未熟な脱工業化4 の危険は現実のものとなっている。モロッコの輸出はスペインとフランスに過剰に依存していて,この二国はほかにも多くの貿易相手がいる上に成長率も比較的低い。農業がいまだに雇用の40-45%を占めている。観光業は成長を続けているが,モロッコのサービス文化は一流とは言えない。モロッコはマリファナも多く輸出している5

5 モロッコは大西洋経済圏として発展する(わずかな)可能性がある。地図を見てみよう。これはラバト/サレの海賊国家としての歴史だけを言っているわけじゃない6 。ただし,実際のモロッコの貿易は,モロッコが地中海経済圏にあることを示しており,地中海経済圏のほとんどの国はこのところあまりうまくいっていない。

6 モロッコ人はあまり敬虔ではないように見える。直感には反するものの,これが彼らがヨーロッパに住んだときに特に過激化しやすい理由であるかもしれない。彼らはすでに「信仰で満たされている」というわけではなく,アノミーを経験する。テログループはここに付け入る。おそらくこれは中国のウイグルも同じで,そういえば数千ものウイグル人がISISやその他の類似グループにリクルートされている。

7 モロッコのGDPはカサブランカとその近郊にどんどん集中してきている。カサブランカは観光地として過小評価されている有名な大モスク7 は,ヤナが指摘するとおり,大モスクのようであり,時計塔であり,オペラハウスのようであり,フランスの鉄道駅のようであり,一部の構成物は中世のカテドラルのようですらある。一部の敬虔なイスラム教徒はこれを快く思っていない。

8 最高のパスティーヤはメクネスで食べられる。メクネスのパスティーヤはほかよりもしっとりとしていて甘さが控えめだ。カサブランカでは,グランマルシェの魚の露店やいつもフライドポテト付で出てくる鶏の骨付き肉ローストだ8

  1. 訳注:旧市街。モロッコの各都市にあるが,フェズのメディナは歴史の古さ,規模,複雑さで群を抜いている。 []
  2. 訳注;本当にベン・マイモーンの家だったのかはわからないが,Chez Maimonideというレストランがある模様。メディナのメイン入口近くのレストラン密集地区の観光客向けローカル料理店といった感じっぽい。 []
  3. 訳注;個人的にはこれは言い過ぎで,コーエンが有名観光地の外国人向け土産屋しか行ってないからじゃないの?という気がする。 []
  4. 訳注;”Premature deindustrialisation”についてDani Rodrikの論文を参照 []
  5. 訳注;もちろん大麻はモロッコ国内でも犯罪だが,特に北部では大麻使用が蔓延しているのは確か。シェフシャウエンなどでは街中で気軽に誘ってくるのでご注意を。「輸出」という意味では,モロッコは南米からサハラ砂漠を通じて欧州に流れるコカインの一大経由地となっており,モロッコ側・EU側で頻繁に摘発されている。 []
  6. 訳注;モロッコの首都ラバトとその河向の都市サレはもともと海賊の拠点だった。ラバトのメディナの大通りはかつて各国の領事館が立ち並んでいたことから領事館通りと呼ばれているが,これはかつて奴隷市場に出品される自国国民の保護のためだった…らしい。 []
  7. 訳注;ハッサン2世モスク []
  8. 訳注;他人の感動にけちをつける気はないものの,観光で(特に時間が限られている中で)行くならカサブランカは素通りして他の街の方が良いというのが一般的な感覚ではないかと思われる。魚介も鶏肉も特にカサブランカが一番というわけではないので。いわゆる「観光地」であればフェズやマラケシュ,サハラ砂漠へ行った方が良いのではないかと思うが,個人的には車を借りて小さい村々を回るのをお勧めしたい。 []

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